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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十八章 砦跡の調査

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248 砦跡のおかしな現象

 砦跡周辺の警戒と調査を進めている最中に、異様に魔物の出現率が低いことに気が付いたボクたち。

 とりあえず分かっていることだけでもまとめてみようと、魔物が現れ戦闘になった時の状況を思い出していた。


「出てきた魔物に妙なところはなかったよね?強いて言うならロンリーコヨーテから魔石が砕けずに取れたことくらいかな。微小サイズだけど」

「それは珍しいことではありますが、変なことではないですね」


 ネイトが言ったようにロンリーコヨーテはレアドロップアイテムとして微小サイズの魔石が取れることがある。

 高値で売れたりアイテム作りに必要だったりと最序盤で手にできるレアアイテムの中でも特に有用性が高いので、プレイヤーの中にはレベルアップついでにロンリーコヨーテばかりを狩っている人もいるくらいだ。

 ボクたちも回数こそ少ないけれどこれまでに何度か目にしたことがある。

 しかしそうなると魔物の方に特筆するような点はなし、ということになりそうだ。


「魔物の側に問題がないとすると、この現象の原因はボクたちの方にあるということになる?」

「となれば、共通している点から考えてみるといいかもしれません」

「共通している点……。砦跡から離れていたことくらいしか思い浮かびませんわね」


 薬草採取のために蝶々を追いかけてと、理由は違えども確かにあの時ボクたちは砦跡から距離を取るような形となっていた。


「ふむふむ。……ねえ、それってつまり砦跡の魔物避けの効果範囲から外れちゃったということじゃないの?」

「あ……」

「……言われてみればそのようなものかもしれませんわね」


 なんてこったい!

 結局のところは難しく考え過ぎていた、ということのようだ。


「まあ、それだけ強力な魔物避けを張るほどの何かがある、という裏付けにはなったのかな」


 こじつけ?無理矢理?……分かってます。

 でも、そうとでも考えていないとやっていられないのだ。


「一旦エルのところに戻って、この後どうするかを決め直そうか」

「そうですわね。もしかすると彼女が既に何かを発見しているかもしれませんもの」

「異議なしです」


 さすがにボクたちが探すまでもなく決定的な何かが見つかっていた、などというご都合主義的な展開はなく、エルは最初の場所から少し離れた地点で地道な調査を続けていた。


「ここにいる限りは魔物に襲われるという心配はしなくて済みそうだよ」

「最低でも『三国戦争』のあった百年以上も前から動き続けている魔道具とか嘘やろ……」


 唖然とした顔でエルが言うのも無理のない話で、いくら魔法が使われているとはいっても道具は道具。どうやったところで使用回数や連続使用可能時間という壁が存在するのだ。

 もちろん物自体は良くて、丁寧な管理や補修によって長く使い続けられているような物も存在している。その点はリアルと何ら変わりがないと言えるだろうね。


 ただし、魔道具というのはいわば電気製品なのだ。どうしても燃料となる魔力が必要になってくる。

 その燃料となっているのが魔石を加工して作ることのできる蓄魔石なるアイテムである。蓄魔石を一言で説明するなら充電式の乾電池だ。しかしながらどんな魔石でも蓄魔石に加工できるという訳ではなく、その上こちらも道具という性質上、魔力を充電できる回数に限りがあるという欠点が存在している。


 つまり、「百年以上もずっと動き続けている魔道具など常識外れもいいところ!」ということになるのだった。


「大陸統一国家時代には、現在の常識では計ることのできない桁違いに強力な魔道具が存在していたと言われていますが……」

「それだってほとんどお伽噺の話ですわよ。それらしいアイテムが発見されたという話など聞いたことがありませんもの」


 つまり大陸統一国家時代かもしくはさらに高度な文明期の遺産らしきものが隠されているんですね、分かります。


 うーん……。クンビーラとその他『風卿エリア』に点在する都市国家同士が関連するような比較的大きめのストーリーイベントを予想していたのだけど、これはもしかすると大陸全土を巻き込むような壮大なお話に発展してしまうかもしれない。

 公式イベントで目立ってしまったから、しばらくはまったりと過ごしていたかったんだけどなあ……。ミルファたちに気が付かれないように、こっそりとため息を吐くボクなのでした。


「ところで、エルは宰相さんからどの程度の話をされているの?」


 気を取り直して調査を再開したエルに、雑談半分世間話半分で尋ねてみる。あ、砦跡にいる限りは魔物の心配はなさそうなので、今度はボクたちも調査を手伝っているよ。

 ボクは片っ端から〔鑑定〕技能で怪しい所がないかを探しまくり、ネイトはセリアンスロープの種族的な勘の鋭さを頼りにあちらこちらを見て回っていた。残るミルファにエッ君とリーヴのうちの子たちコンビの計三名は伸び放題になっている草刈りに励んでおります。


「あんたらが聞かされた内容は全部聞いてる。何代か前の公主様のお墓探しやとばっかり思うてたから、こんなとんでもない代物が飛び出してきて正直混乱してる」

「いや、まだ飛び出してないから。魔道具の話もボクたちの推測に過ぎないから」

「ここまで完全に魔物が寄って来んとなると、魔道具による仕掛けがあるとしか考えられんわ。というかむしろないと困る」


 エルの話によれば、有名な戦場となった場所ではアンデッド払いも兼ねて土地を清浄化する儀式が行われることがあるそうだ。この儀式は普通の魔物にも影響を与えるため、一般的には儀式が行われた土地は魔物が近寄り難くなる傾向があるそうだ。


「てっきりここもそういう場所の一つなんやとばっかり思とったわ」


 そういえばこの場所に目星をつけた理由、『三国戦争』よりも前から魔物が近寄らない場所だったということについては、冒険者協会のデュラン支部長とボクとネイトの三人で会話をしていた時に思い付いたことだったっけ。

 しかもその後の『毒蝮』からの襲撃とかによって、すっかり報告をするのを忘れていたような気がする。


「ごめん。ボクの中ではエルのこともすっかり仲間認定していたから、色々なことをもう説明し終わっている気になっていたよ」

「は?……な、仲間?」

「やだなあ、そんなに照れなくてもいいんだよ」

「照れとるんと違うわ!嫌がっとるんや!」

「あっはっは。エルは恥ずかしがり屋さんだね」

「人の話を聞けー!!」


 突然の大声に驚いたミルファたちの視線を受けて、エルが真っ赤になって俯くことになるのはこの直後の事だった。


〇砦跡についての補足

単に魔物避け、魔物が入って来られないというものではなく、ゲーム的には街や村などと同じく安全地帯という扱い。

中に人がいても魔物に感知されたり発見されたりはしない。

また、魔物に追いかけられた人が逃げ込んだ場合は、魔物はその人を見失う、いわゆるヘイト値がなくなるため、すぐにどこかへ行ってしまうことになる。


当初はリュカリュカたちにそうした違いなどを検証するという作業をやらせようかと考えていたのですが、蛇足になりそうなので止めました。

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