表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十八章 砦跡の調査

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

247/933

247 魔物が出、ない?

「うー……っん!」


 名前の通り単体で出現したロンリーコヨーテを倒して、解体(アイテム化)したところで大きく伸びをする。珍しく毛皮だけでなく爪や微小サイズの魔石まで取れたのでニンマリです。


「リュカリュカもハルバードの扱いに慣れてきたようですわね」


 微妙に上から目線なミルファの台詞だが、武器の扱いや戦闘に関してはゲームの世界(こちら)の住人である彼女たちの方が上手なので、ある意味当たり前な物言いだったりする。


 ちなみに公式イベントの時のことだけど、テイムモンスター(うちの子)たちは全員夢の中での不思議な出来事という形でぽんやりとした記憶となっているそうだ。

 リアルでの携帯端末への呼び出しと同じ扱いだね。


 そしてチーミルやリーネイと感覚を共有しているミルファたちはというと、より一層記憶に(もや)がかかったようになっており、本格的に夢の中の出来事という形で処理されているらしい。

 一方で二人が楽しみにしている『異次元都市メイション』での活動については、もう少し鮮明に記憶に残るようになっているそうだ。これはアウラロウラさんからの情報なので、まずもって間違いはないはず。


 そんな訳でそのうち二人を連れて行かなくちゃいけないとは思っているのだけど……。

 どうにも色々と話題を提供してしまったことで有名人化が確定してしまっているらしく、今顔を出すと目立つどころか大勢のプレイヤーに囲まれて身動きが取れなくなってしまう可能性が高いのだそうだ。

 既にその余波的なものも現れていて、昨日の今日なのにハルバードを売ってもらった鍛冶師のプレイヤーさんや、チーミルたちの製作者であるケイミーさんなどには注文が殺到してしまっているのだとか。


 結局、アウラロウラさんともお話して状況が落ち着くまでは訪問は控えた方が良いだろうということになっており、ただ今様子見の真っ最中ということになっているのだった。


「まあ、ボクの華麗なハルバードさばきは一旦置いておくとしてだね」

「そこまでは誉めていませんわよ!?」


 枕的なボクのボケに即座に反応するミルファ。そんなボクたちを見てネイトが小さく笑っている。普段通りなやり取りに気安さと同時に安心感を覚えてしまう。

 ついついさらにボケ倒してしまいたくなるが、話が進まなくなりそうなので我慢がまん。


「さっきのロンリーコヨーテも近付いて来なかったところを見ると、魔物避けの効果は今でも続いていると考えても良さそう?」


 てくてくと砦跡の方へと戻りながら、ふと思いついたことを口に出す。


「まだ二体の魔物としか遭遇していないのですから、決めつけるのは早計ではないかしら」

「二体としか会っていないというのもおかしな話ですよ。クンビーラの街から近い街道沿いだとしても、この遭遇率の低さは異常です」

「ブラックドラゴン様が守護竜となって街の側にいてくれるため、近辺の魔物が恐れをなして逃げ出しただけなのではなくて?」


 要はブラックドラゴンの縄張りになったから魔物が逃げ出していなくなった。そうミルファは考えているようだ。


「確かにブラックドラゴン様の影響はあるでしょう。が、それだけではないと思います」


 このネイトの指摘は正しく、クンビーラの騎士団と冒険者協会が合同で行った周辺調査によると、魔物の数は減少傾向にあるけれど、その割合は顕著な地点でも三割に届くがどうかという程度だったのだそうだ。

 そのため既に砦跡の周囲の警戒を開始してから三十分ほどになるにもかかわらず、二体の魔物しか現れていないというのは、先にも彼女が指摘した通り異常な状況だと言えた。

 もっとも、件のデータが公表されるのは数日後のこととなるので、この時点では明確な根拠とはならなかったのだった。


 余談だけど、砦跡までの約一時間道中では街道を通ってきたこともあって一度も魔物とは出くわしてはいない。

 しかし全く存在していなかったわけではなく、ボクは四回でネイトは七回、そしてエルは少なくとも十回は〔警戒〕技能で魔物の存在を感知していた。

 こちらは移動を優先していたこと、魔物側も気が付かないもしくは遠目に様子を伺っているだけだったので戦端が開かれることはなかったというだけのことだったのだ。


 ふみゅ……。

 そういえば調査開始以降の〔警戒〕技能による反応はどうだったのだろうか?


「ネイト、調査を開始してからこれまでに魔物の存在を感知したのは何回?」


 ちなみにボクは戦いになった二回こっきりだったりします。


「……先ほどリュカリュカが倒したロンリーコヨーテと、その前にエッ君が瞬殺したブレードラビットの二回だけですね」

「これっておかしいよね」


 熟練度に差があるため、ボクとネイトでは同じ〔警戒〕技能でも察知できる範囲や精度が大きく異なっている。それなのに同じだけの魔物しか発見できていなかったというのは、とてつもなく怪しい事態だと言えるのだ。


「ええ。ですが具体的に何がおかしいのかと問われると、答えられる自信はありません」

「そこが問題なんだよね……。とりあえず、魔物が出現した時のことを思い出してみようか」


 何らかの糸口が見つかるかもしれないし、せめて分かっているところだけでも明確にしておくべきだろう。


「……一回目のブレードラビットの時は、リュカリュカが薬の材料になる薬草を砦跡から少し離れた場所にあるのを発見したのがきっかけだったかしら。採取している間に近付いてきていて、姿が見えた瞬間にエッ君に倒されていたのでしたわよね」


 あれは本当にあっという間の出来事だった。

 ちなみにドロップアイテムはお肉と毛皮。


「二回目は蝶に気を取られたエッ君を追いかけている内に砦跡から離れてしまい、お説教していたところにロンリーコヨーテが近寄ってきていたのでしたね」


 蝶といってもエフェクト扱いで捕まえたりすることはできない類のものだった。「より世界を美しく演出する」という名目で開発が進められていたのだが、ようやく完成して先日の公式イベント後のアップデートで実装に至ったのだそうだ。


 そんな訳でNPCであるミルファたちには以前から存在していたものとして認識されていたのだが、テイムモンスターでありなおかつ生まれたばかりのエッ君にとっては始めて見る好奇心を刺激される対象となってしまった。

 マスターであるボクの制止すらも聞かずに追いかけ始めてしまったのだ。


「まあ、あの通り反省しているようだから、これ以上は叱ったりはしないけどね」


 久しぶりに本気で叱られたとあって、エッ君はリーヴに抱きかかえられるようにしてしょげきっていた。

 里っちゃんいわく「叱りっぱなしは良くないよ。嫌われていると思いこんじゃうから。ちゃんと見ているよ、気にかけているんだよっていうことも伝えてあげないとダメ」ということらしいので、後でフォローを入れておかないといけないね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ