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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十八章 砦跡の調査

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246 砦跡の調査開始

 エルフちゃんことエルを加えたボクたち一行は、さっそく墳墓の最有力候補である砦跡へと向かった。

 六人というパーティーの人数制限の関係から、テイムモンスターはエッ君とリーヴの二人となっております。とはいえ、いざという時のために備えてチーミルとリーネイもクンビーラでお留守番ではなく『ファーム』の中で待機(おやすみ)してもらっているけれど。


「はい!という訳で到着しました砦跡です!」

「今日のリュカリュカは何だかご機嫌ですね。エルさんがいるからでしょうか?」


 目ざとくボクのテンションが高いことに勘付いたのは、いつものごとくネイトだった。

 そしてエルさんや、そこで嫌そうな顔をするのは失礼だと思いますですよ。


「それもあるけれど、久しぶりにネイトやミルファと冒険すると思うと、なんだか楽しくなってきちゃって」


 具体的には数カ月ぶりくらい。

 おや?数カ月ぶり???


 ……まあ、いいか。


「楽しむなとは言いませんけれど、浮かれ過ぎていては思わぬ所で足を取られてしまいますわよ」


 ボクの感情が伝播したのか、エッ君やさらにはリーヴまでが浮足立っている様子に珍しくミルファからも注意を受けてしまった。確かにハイテンション過ぎて自爆したなんてことになったら、主にカッコ悪い黒歴史的な意味で目も当てられないことになりそう。


「う……。ごめん。用心するよ」


 みんな揃って「すー、はー……」と深呼吸。

 え?エッ君とリーヴは深呼吸ができるのかって?……こ、こういうのは気分の問題だから!


 ふう。とにかく、気を取り直しまして。


「エル、これからどうすればいいのかな?」

「着いて早々、いきなり丸投げなん!?」

「ここは専門家にお任せする方が良いのかな、とね」


 実は以前、ミルファとパーティーを組んだ直後に砦跡の場所の確認をしに来たついでに軽く見回ってみたのだけど、入口を始めまったくもってそれらしいものを発見することはできなかったという経緯があったのだ。


「そういう大事なことは先に言うといて欲しかったわ」

「ごめんごめん。誘った時に話していたつもりになっていたよ」


 正確には宰相さんにお願いしてエルに同行してもらうことになったため、そちら経由でこれまでの情報が伝わっているものだとばかり思っていたのだった。


「そういうことなら、うちは一通り怪しい所がないか探してみることにするわ」

「ボクたちは?」

「まずは周囲の警戒からやね。『百年戦争』の時はまだ効果があったらしいっちゅう魔物避けも、今ではただのガラクタになっとるかも分からんから」


 言われてみれば確かに。以前の時もすぐ近くでロンリーコヨーテに遭遇しているものね。


「了解。それじゃあ見回りをしながら、ついでに何かないか探してみるよ」

「…………まあ、そのくらいならええやろ」


 今の間はなに?


「それと、気になるもんを見つけたからいうて、くれぐれも何でもかんでも触ったりせんようにしてや!」


 それでは出発、と歩き出そうとしたボクたちの背中に向けて、慌てた声音でそんな台詞が投げつけられる。

 あのねえ、いくらこの世界の常識に疎くて、なおかつ駆け出し冒険者をギリギリで卒業したばかりのボクでもそんな迂闊なことはしないよ。

 あ、でもエッ君という好奇心の塊やナチュラルお嬢様(世間知らず)なミルファとかがいるから、やっぱり気を付けておいた方がいいのかもしれない。


「何か見つけたら、すぐにエルを呼ぶようにするね!ということで、エッ君もミルファも不用意に手を出したりしないようにね」

「そんなことはしませんわよ!『軽率な行動を慎むべし』と『冒険者三訓』にも書かれておりますもの」


 ミルファの言う『冒険者三訓』とは、冒険者の基本的な心構えについて書かれたものだ。


『一つ、冒険者たる者、依頼内容はよく吟味するべし。

 一つ、冒険者たる者、己と敵の力量を見極めるべし。

 一つ、冒険者たる者、軽率な行動は慎むべし。』


 という微妙にどこかで聞いたことのあるような三文なんだよね。

 ちなみに、『冒険者協会』には他にも『戦闘心得十カ条』なるものがあるのだが、こちらはどれもこれも精神論や根性論ばかりで、年配のおじいちゃんやゾイさんですら「時代遅れのカビの生えた代物」と言い切る始末だったりする。


 とにもかくにも、さっそく砦跡を探検、もとい周囲の警戒任務に当たるとしましょう。

 その広さはおおよそで三十メートル四方といったところ。現在でもぐるりと周囲を取り囲むように残されている恐らく壁の跡であろう石材が、当時の様子を物語っているようであり実はそうでもなかったり。

 また、街道からは少し外れているためか、ほとんどが草の海に飲み込まれてしまっているので、意識的に探そうとしなければ見つけるのは難しそうだ。


「砦としては使い物にならなくなっていたこともあって、『三国戦争』終結以降の(クンビーラ)の復興のための資材として利用されたのだそうですわ」

「ああ、だからこれほど何も残っていないんだね」


 ミルファの解説によって殺風景な理由も判明です。だって、内部の建物があったと思われる場所――今はエルが調査中――などは基礎らしきものが残されていただけだったのだ。


「凄惨な戦場となった場所の割に不浄な気配がほとんど感じられないのも、それが要因となっていそうです」


 ネイトによると、多くの人が犠牲となった戦場跡地では死者の念とでもいうべきものが残り易く、アンデッド系の魔物が発生しやすい傾向にあるのだそうだ。


「しかし復興の資材として利用されたことによって、悪い念が浄化されていったものと考えられます」


 生き残った人たちの未来に向かって踏み出す心が、負の想念を消し去ることに繋がったということらしい。


 アンデッド系の魔物というとスケルトンやゾンビにゴーストなどが代表格だ。しかもゲームによっては死んでいるので弱点がなくて異様にタフだったり、特別な武器や魔法でしか倒せなかったりと厄介な仕様なこともままあるのだとか。


「優ちゃん、リュカリュカちゃんがエンカウントする可能性のあるレベルなら、他の魔物に比べてちょっとHPが多いくらいのはずだから、それほど心配しなくても大丈夫だよ」


 と里っちゃんからは聞いていたが、いかんせんアレな見た目なことも多いのでできる事なら出会いたくはないというのが本音のところです。

 なので、不浄な気配がないというネイトからの報告は地味に嬉しいものだった。


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