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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十七章 『銀河大戦』3 二日目

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235 余計な一言

 その後も大変だった。二人を一緒にテイムするにはレベルが足りずに慌ててレベルアップに励むことになったり、あれだけ注意をされたにもかかわらず何の相談もなしに『魂分けの魔水晶』を使用する形となってしまったことで「危機感が足りない」とゾイさんたちから代わる代わる叱られたりしたのだ。


 しかもそれ以外にも本来の用事であった『ファーム』の買い付けだとか、アウラロウラさんからお願いされた『異次元都市』で顔を売るという行為もあり……。

 この一週間は本当に慌ただしく過ごすことになってしまったのだった。


 ちなみに、魔水晶を使用したのはミルファとネイトの二人だというボクの切実なる訴えは、「元凶となったのはリュカリュカだろう」と逆に痛いところを突かれてしまい、あえなく却下となってしまったのだった。


「突然遠い目をし始めたけど……。大丈夫なの?」


 二人の紹介を終えたところでついつい過去を振り返ってぼんやりしていたところに、訝しさ半分心配半分といった声音でユーカリちゃんが尋ねてくる。


「ああ、うん。多分大丈夫」


 返事をしながらも多少上の空といった雰囲気になってしまったのは許して欲しい。それくらいあの頃はヘロッヘロになってしまっていたのだ。


「名前から察するに、あなたのパーティーメンバーと関わりがありそうよね」


 お、おおー。ユーカリちゃん、ミルファとネイトのことまで知っているんだ。


「……どうしたの?」

「いやあ、本当に『冒険日記』を読んでいてくれていたんだな、と思って」


 改めて実感したことで、なんだか気恥ずかしくなりました……。


「ただの宿題のつもりで書いた作文がいつの間にか学校代表に選ばれていて、その上知らない間に親に読まれていた、みたいな気分だよ」

「分かり易いのか分かり難いのか判断がつけ辛い例えね……。というかそれ、小学校の時にあった話じゃなかった?」

「残念ながらあの時は代表に選ばれそうになっただけ。転入直後で提出が遅れていた子の作文が代表になりました。まあ、結局PTA向けの広報に掲載したとかどうとかで、うちの親には見られちゃったけど」


 黒歴史とまではいかないけど、気持ち的にはグレーゾーン真っ只中――ついでに個人情報的にも――なのでこの話題はもうやめようか。


「それで、肝心のテイムの仕方だけど……」

「ルール違反だとか、運営にお願いして横紙破りをするような真似はしてないよ」

「そこは心配していないわよ。でも、わざわざ念押ししてきたということは、その気になれば誰にでもできる方法ということかしら」

「多分、そうだと思う。詳しくは頑張って検証するなり、運営からヒントを貰うなりしてね」

「あら?教えてくれないの?……なんてね。せっかく見つけた秘密だもの。そう簡単に教え――」


 教えるような真似はできなくて当然。後から聞いた話だと彼女はそう続けようとしていたのだそうだ。

 どうして後からなのかというと、この時はボクの不用意な発言によってそれどころではない騒ぎになってしまったからだ。


「うーん……。それじゃあ『コアラちゃん』がこの後の勝負に勝てたら教えてあげるということで」

「な、なんだってー!!!?」

用心棒の先生(『コアラちゃん』)!!何がなんでも勝利して、世界の神秘を聞き出してください―!!」

「チームメンバーの『テイマーちゃん』には申し訳ないが、やっぱり『笑顔』プレイヤーとしては、ここは『コアラちゃん』を応援しなくてはいけない場面だろうな!!」

「まさかの四面楚歌!?」


 これほどまでの食いつきの良さを見せるとは思ってもみなかったよ!?

 しかも申し訳ないとか言いながらも『笑顔』チームの皆さん、めっちゃ良い笑顔なんですが!?まあ、それを言ったら『OAW』チームの人たちは本気過ぎて怖くなるほどの顔になっていたけどさ……。


「言葉の選択を間違ったー……」

「いやいや、言葉どうこうの問題じゃないから。それより、なし崩し的に教えることになったけれど本当に良かったの?」

「秘密にする理由がないから、そっちは別に問題なし。……あ、でもボク一人ではできなかったことだから、その人からも許可を貰わなくちゃいけないのかな?」


 二人の体になっている人形も、『魂分けの魔水晶』もケイミーさんから購入――魔水晶は押し付けられたようなものだけど――した物だ。筋を通すということならば、それこそ彼女の許可を頂く必要があるのではないだろうか。


「そうなの?……って、ああ。その人形とか、明らかに<クリエイター>系のプレイヤーでなければ作ることができなさそうだものね」


 まあ、技能の習得さえできれば可能不可能で言えば可能なのだろうけれど、餅は餅屋ということで専門職の誰かにお任せする方が話は早いと思う。


「そうなると、そのプレイヤーがどれだけの情報を持っていたのかによって違ってくるから、一概にこうだとは言い辛いかなあ。……ただ、今回は事後承諾で許して貰うしかないかもね」


 ほら、とユーカリちゃんが示した方を見てみると、まるでこの世の終わりが来たかのような表情で硬直してしまっている人たちが山盛り存在していた。


「ちょっとこれ、おかしな方向に期待値が上がり過ぎてない?<テイマー>じゃないと意味のない情報だよ!?」

「甘いわね。今は意味がなくともこの先ずっとそうだとは限らないものなのよ」


 アップデートによって改善――時に改悪?――されるのは、多数のプレイヤー同士が交流できるネットゲームにおいてはありがちなことなのだそうだ。


「……仕方ない。元はと言えばボクの不用意な一言のせいなんだから、もしも公開するようなことになってしまった時には、素直にゴメンナサイすることにするよ」

「……まるでそうはならないと言っているように聞こえたのだけど?」

「うん。だってボクが負けなければ条件を満たさない訳だから、勝てば何の問題もないよね」


 チーミルとリーネイという最後の切り札の投入で、動揺したところを押しきれなかったのは痛いが、こちらの手札が増えていることには変わりはない。


「ここからが本番ということで!」

「何度でも返り討ちにしてあげる!」


 周りにいるプレイヤーたちが見守る中、ボクとテイムモンスターたち対ユーカリちゃんの戦いの第二ラウンドが始まった。


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