228 フレンドたちの活躍
スクリーン内で展開される巨大ロボとの戦いは佳境に入り、そしてマサカリさんの独壇場となっていた。
しかし、遠距離攻撃部隊の弾切れとなってしまう。隠しボスは巨大なだけあって誰も彼も的を外すようなことはなかったのだが、巨大なだけあって頑丈で屈強だったのだ。
倒しきるには至らず、<マジシャン>系統のプレイヤーは魔力が、<シューター>系統のプレイヤーは残弾が尽きてしまったのだった。
それによって接近攻撃を行っていたプレイヤーたちの危険度が一気に増すことになってしまう。遠距離攻撃は単にダメージを与えるだけのものではなく、巨大ロボの動きをキャンセルしたり、ノックバックを発生させたりすることで安全に攻撃できる機会をも作り出していたのだ。
それがなくなったことにより、接近戦組は常に隠しボスからの反撃の危険に晒されることになってしまったのだった。
それでも戦列が崩れてしまわなかったのは、マサカリさんの力が大きい。一人足下に陣取り止まることなく攻撃を繰り出し続けていたのだ。
しかも時折敵の動きをキャンセルさせていた。
じっくりと観察していて分かったことだが、巨大ロボの動きを止めるには数人から十数人の攻撃を短い時間の間に命中させる必要がある。
ところが、マサカリさんはなんとそれをたった一人でやってしまっていたのだ。
意味が分からない?
大丈夫。ボクも同じ気持ちだから。
ただ、彼は本番の時にもロボットを一撃で粉砕するという人間離れしたことを何度もやってのけていた。
なので、もしかするとロボット系に対して、彼の持つ斧という武器は相性が良いという隠し設定でもあったのかもしれない。
マサカリさん以外の事例を知らないので検証のしようがなく、その上運営が何も言わないので、結局のところ真相は深い深い闇に包まれたまま終わってしまうことになるのだが。
その後もマサカリさんの猛攻は続き、他の人たちの協力もあって試合終了まで十五分近くの時間を残して巨大ロボの撃破に成功したのだった。
が、さすがに両陣営ともそこで力尽き、残り五分になるまで休戦することにしたようだ。
そこまで確認した後、ボクは別の試合へとチャンネルを変更することにした。探すのはもちろん本番の時のチームメンバーたちだ。
しかし、闇雲に探していてはとてもじゃないが時間が足りない。
何か便利な機能はないものかと探していると、『フレンド検索』なる文字を発見。これなら見つけられるかもしれない。昨日一日一緒に過ごしたことで、それぞれの性格などなどを掴むことができていたこともあって、別れ際に全員揃ってフレンドになっておいたのだ。
まあ、ミザリーさん以外は『OAW』をプレイしていないので、明日以降はたまにメールのやり取りをするだけという関係になりそうだけど。
話を戻しましてと。とりあえず『フレンド検索』の項目をぽちっとな。
すると何となんと、ミザリーさんも含めて全員が現在試合中とのこと。これは見ておかなくてはなるまい!という訳でさっそく順番に試合を観戦していくことにした。
遥翔さんの試合では巨大ロボを無視する方針だったのか、その巨体が勝手気ままにフィールド上を縦横無尽に歩き回っているようだった。
正確に言えば『OAW』チームは何とかしたいようだったのだけど、自分たちだけでは力量差があり過ぎてどうにもならないと判断したようだ。遠距離攻撃手段のあるプレイヤーが時折攻撃してはチマチマとポイントを稼ぐだけに留まっていた。
そして肝心の遥翔さんはというと、本番の時と同じように走っていた。
巨大ロボが移動することで両チームとも少なくない被害を受けていて、さらにその隙を突いてマスが奪われるということが起きていたのだ。
特に完全に隠しボスを無視して相手陣営へと攻め込むことを最優先としていた『笑顔』チームの被害は大きかった。
その事に気が付いた遥翔さんは、単身陣地を取り戻すために走り回っていたという訳だ。
チームメイトの贔屓目を抜きにしても、この試合で『笑顔』チームが勝利することができたなら、その陰の立役者は間違いなく遥翔さんだと思う。
この後の展開も気にあるところではあるけれど、他の試合が見られなくなるので後ろ髪を引かれつつもチャンネルを変更する。
そして次に映し出されたのはリルキュアさんだった。彼女たちの試合はというと、積極的に巨大ロボを倒しに行くというものだったようだ。
マサカリさんたちの試合と同じように大勢が巨大ロボを取り囲んで攻撃を仕掛けていた。
が、主立っているのは『笑顔』チームの人たちばかりのようで、『OAW』側はそれに乗じてマスを奪おうとしているようだ。
リルキュアさんは数名の仲間と一緒に自陣となったマスに侵入しようとする相手プレイヤーたちを止めようとしていた。
こちらも本番の時と同じようにロボットマスに陣取っては、対戦相手を次々に返り討ちにしていたのだ。
それにしても見た目幼女な彼女がロボットに指示を出しながら戦っている様子はまるでアニメか何かのようで、ある意味エッ君やリーヴ以上に現実感がないです……。
コホン。気を取り直して次にいこうか。
あれ?どうしてヤマト君とミザリーさんが一緒に戦っているの?二人は『笑顔』と『OAW』に分かれているから同じチームにはなれないはず……。
ああ、対戦相手だったのね!
それはそれで凄い確率だわ……。
そんな二人は相変わらず息の合った動きで、巨大ロボを翻弄していた。もちろん他の人たちもいるのだけど、別の試合に比べるとその数は断然少ない。
倒すことよりも十数人が囮になることで行動範囲を制御して、全体の被害を抑えようとしているのかもしれない。
それにしても本当に惚れ惚れするようなコンビネーションだ。昨日よりもさらに精度が上がっているのではないだろうか。
ミザリーさんは確実に巨大ロボの顔付近に攻撃を命中させては動作を阻害しているし、ヤマト君もミザリーさんに標的が移りそうになった瞬間を狙って足下に飛び込んでは攻撃を加えてターゲットを自分たち近接戦闘プレイヤーの方へと戻している。
そうやってお互いにフォローし合うことで適度な休息時間が生まれ、結果的に長時間戦闘を続けることができるようになっていたのだった。
それにしても、本番の時の経験が役に立っているようでなんだか嬉しくなってしまう。これはボクも負けてはいられない。
皆の奮闘を見て改めて気合いを入れ直すことができたよ。




