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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十七章 『銀河大戦』3 二日目

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223 参戦決定

 事情を説明しに来てくれたアウラロウラさんから、本来の『OAW』側とは異なるものの、今いる『笑顔』側のチームでエキシビジョンバトルに参加できることを教えられた。

 そして昨日の開会式での一件で話題になっていることもあってか、運営としても参加して欲しいという流れになっているようだ。


 実のところを言うと、嫌がられているならともかく期待されているのなら出場することは吝かではなかったりする。あえて反対のチームから出場したと思わせることで、今回のトラブルを運営も巻き込んだボクたち二人の計画的な犯行として誤魔化すことができるかもしれないものね。

 もちろん景気よく勝負を挑んだ手前、なかったことにはできないという部分もありますよ。


 等々に頭を巡らせている内、ふと気になることが浮かび上がってくる。


「あれ?ボクたちは良いとしても、一緒に参加することになるプレイヤーの皆さんの気持ちはどうなの?」

「ですから、プレイヤーの方々もお二人の対戦には高い関心を示されていますよ」

「それはプレイヤー全体としての話ですよね。そうじゃなくて、一緒に出場することになる二つのチームの六百人の人たちは、この事にちゃんと納得してくれていますか?ってことです」


 ぐるりと周囲を見回すと、近くの人同士で話し合っているのはごく一部で、大半はキョトンとした顔をしていた。

 いやいや、だからあなたたちの事なんですってば!

 ……これはもしや、ボクがなぜこんなことを言い出したのかが分かっておられない?


「あのですね、一緒に出場するとなると形式的なものだけかもしれませんけど、ボクがリーダーとなるということなんですが、なんとも思わないんですか?」


 こう言っては何だが、ボクなんてVRゲーム歴自体がほんの数か月であり、精々が初心者に毛が生えた程度の腕前でしかない。

 ゲーム内の強さもそれ相応で、レベルなんてようやく二桁の大台に乗ったばかりだ。まあ、NPCたちに鍛えてもらっていたお陰で、熟練度の方は少しは高い技能もあるけれど。


 ともかく、そんなヘッポコがリーダーになるというのだ。例え形だけのものだとしても嫌悪感を覚える人がいてもおかしくはないはずだ。

 と、そう思っていたのだけど、


「『テイマーちゃん』?俺たち、リーダーなんて誰がなっても気にしないぞ」

「ほえ?」

「だって、別にリーダーが負けたからって余計なペナルティが発生する訳でもないもの」


 まあ、いくら『OAW』側でも、ボクよりも低いレベルのプレイヤーはそうはいないだろう。よって獲得できるのは一ポイントだけになると思われる。


「えーと……、でもでもボクじゃ皆の指示とかできないし!ほら、最初ボクのことを『コアラちゃん』だと思って喜んでたのはそういうことでしょ!?」

「いやいや、『テイマーちゃん』落ち着け!それは完っ全に勘違いだから!」


 ボクの台詞を聞いて慌てて止めに入ってきたのは、『新天地放浪団』のメンバーでもある大剣持ちの彼だった。


「そもそもギルマス、というかうちのギルド自体ほとんど他所のギルドと関わりを持っていないんだ。活動も新しいフィールドが追加されていないか探しに行ったりだとか、面白い景色の場所を見つけたりだとかばっかりだから、ギルドバトルみたいな大人数での集団戦はそれほど経験がないはずだ」

「それでも、これまでにあった『笑顔』の公式イベントとかには参加しているんですよね?その分だけでも大違いだと思います」


 昨日試合の合間などでのマサカリさんたちとの雑談の中には、過去の公式イベントのことも含まれていた。それによると迫り来る魔物の群れを参加していたプレイヤー総出で退ける防衛戦や、逆にNPCが守りを固める城に攻め込んで行く攻城戦などもあったということだった。

 彼女ならばそれらの機会を生かして、しっかりと大人数を統べる技術を会得していたとしてもおかしくない。


「それがあの人、そういうイベントの時は決まって先頭に立って切り込んでいくんだよ」

「はあ!?ユ、じゃなくて『コアラちゃん』が!?」


 驚き過ぎて危うくキャラクターネームを口走るところだった。

 他の人も繰り返し頷いているところを見ると、適当な嘘で誤魔化そうとしている訳ではないようだ。


「しかも毎度無茶苦茶に戦果を挙げてくるから、止めろとも言えない。……いや、一度だけやり過ぎて他のプレイヤーの仕事がなくなるから下がって大人しくしてもらったことがあったか……」


 と、微妙に遠い目をしている大剣使いさんです。

 それにしても他のプレイヤーの仕事がなくなるほどとは、どれだけ暴れ回ったのだろう。しかし、あの子ならそのくらいはできても不思議じゃないと思えるところが彼女たる所以(ゆえん)か。


「そんな訳で『コアラちゃん』に対しては指示を出して戦場を操るようなリーダーとして期待したことはないから」


 喜んだのはあくまで自分たちが特別チームだったためだとか。その点ではボクでも同じなので全くもって問題ないとのこと。


「それじゃあ『テイマーちゃん』が参加してくれることに賛成の人!」


 バッと音がしそうな勢いで集まってプレイヤーさんたちの手が一斉に上がる。こらこら、誰ですか両手を上げているのは……。

 こうしてボクの参戦は満場一致で決定したのだった。


「決まったようですね。方々へ連絡しなくてはいけないのでワタクシはこれで失礼いたします。それでは皆さん、開始五分前には必ずログインしておいてください」


 別れの挨拶のついでにしっかりと注意点を告げると、やって来た時と同じように魔方陣を展開してアウラロウラさんは去っていったのだった。凝った演出なのはこんな時でも変わりがないようで。


「『テイマーちゃん』は『コアラちゃん』と直接対戦するつもりなんでしょう?頑張って彼女の突撃を止めてちょうだいね!」


 側にいたお姉さんがそう言いながら励ますように軽く肩を叩いてくれる。

 あれ?いつの間にかボクが『コアラちゃん』担当にされちゃってる?まあ、元から立候補するつもりだったから構わないけどさ。


 過去のイベントで他のプレイヤーの仕事を奪ってしまいそうになったというくらいだから、その強さはかなりなものなのだろう。

 鎧袖一触でスタート地点へ逆戻りさせられないためにも、今からでも何か手を考えておくべきだね。


 ちなみに、『コアラちゃん』と『OAW』チームの方だけど、彼女のような強力な助っ人が参戦するのは大歓迎だと、一瞬で参加が決定していたのだとか。


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― 新着の感想 ―
[一言] 周りからの期待やら何やらでストレス溜まってるのでしょうね... たまには暴れたい時もある
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