220 エキシビジョンバトルの変更点 後編
エキシビジョンバトルの特別設定に――主にフィールドの広さ的な面で――驚きまくっていたボクだけど、一番の驚くべき変更ポイントはこの後にこそあった。
「ふえっ!?対戦相手を倒してもポイントが入るんですか!?」
「ああ。本戦よりもより戦闘をメインに据えたようだ。まあ、「大人数で派手にぶつかり合って日頃のストレスを発散しよう」っていうコンセプトは変えたくなかったというところじゃないか」
確かにこれなら戦闘をせざるを得なくなるだろうけれど……。
「でも、それだとレベル平均値の高い『笑顔』が圧倒的有利になるんじゃないですか?それに、勝っている時は良いですけど、負けが続きだすと余計にストレスが溜まってしまうような……」
「完全に同条件にできない以上、そういう意見はどうしても出てくるか。個人的には強い相手を数頼みで押しまくるっていうのは、祭りっぽくて面白いと思うんだがな」
「そこもプレイヤー同士で協力して戦うことに慣れているかどうかが絡んでくると思いますよ。後、お祭りとかに限ってなら、そういうノリと勢いだけで突き進むっていう雰囲気は嫌いじゃないです」
負けて当然、むしろ負ける方が美味しいなんて特異な状況はそう簡単には発生しないからね。楽しまなくては損だと思うのですよ。
ニッコリ笑いながら付け足すと、周りにいた人たちが一斉にざわつき始めた。
「やっぱりこの子『コアラちゃん』の双子だけあるわ……。ちょっと肝が据わり過ぎの気もするけど」
「ある意味敵のど真ん中に現れたのに平然としていたんだから、今さらでしょう」
それほど落ち着いていた訳じゃないんだけどね。ただ、『竜の卵』以降いつの間にかイベントが発生していたということ何度もあったし、前情報もなしに『異次元都市メイション』に移動したこともあったので、ある程度は不測の事態というものに対して耐性ができていたのかもしれない。
そう説明すると、
「可哀想に。苦労したんだな!」
目頭を押さえながら同情されてしまった。『OAW』をプレイしている人たちから、イベント『竜の卵』の極悪さはこちらにもしっかりと伝わっていたもようです。
「話をエキシビジョンバトルのことに戻すとだな、レベル差に関してはいくつか対策が取られているみたいだ」
対策の一つ目は、マスの陣地化の際に入るポイントの引き上げだ。何と一マス当たり百もの莫大なポイントが加算されるようになっているのだとか。
敵チームのプレイヤーを倒した時に入るポイントは一が基本だという点と比べると、いかにマスの陣地化によるポイントが大きいのかを理解してもらえると思う。
さて、基本は一、ということは条件を満たせばそれ以外となるということでもある。対策の二つ目がこれに関連することだった。
簡単に言ってしまうと、低レベルプレイヤーが高レベルプレイヤーに勝った場合にボーナスが加算されるようになっているのだ。
これは相手とのレベル差が大きいほどにボーナスで獲得できるポイントも大きくなるようになっていて、例えばレベル十のボクの場合、トップクラスのレベル五十オーバーの人に勝つことができれば三十二ポイントも一気に稼ぐことができたりします。
当然『じゃんけん勝負』であっても有効なので、積極的に大物食いを狙う人も多いのではないかと予想できる。
「ふむふむ。『じゃんけん勝負』なら直接戦闘よりは怖い思いをしなくて済むだろうし、なかなか良い調整じゃないですかね。でも、一対多の時はどうするんでしょうか?」
「その時は人数とレベル差に応じた数値に変更して全員分が加算されていくそうよ。詳しい計算式は秘密らしいけれど」
バランスが破綻しないように頑張って考えているのだろう、ということにしておこうか。
「ルールの変更点についてはこのくらいですかね?」
直接戦闘や『じゃんけん勝負』自体のルールは変わっていないようだ。
「『テイマーちゃん』、最後の一文が残っているわよ」
「あ、ホントだ。えーと……、隠しボス扱いの超強力なロボットがランダムで配置されているので頑張って倒してください?これはまた面倒な……」
しかもこの隠しボス、通常ロボットマスに出現するロボットとは異なっていて、直接攻撃でしか戦えないようになっていて、最初に出現したマスから自由に移動することができる等かなり自由度が高い設定となっているようだ。
もちろん敵味方関係なしに攻撃を仕掛けてくるし、撃破することができれば戦闘での貢献度に応じて参加した人にポイントが割り振られるようになっているとのこと。
「ボスを発見できた時は人手を優先的にそちらに回した方がいいかもしれませんね」
「お、『テイマーちゃん』もそう考えるか?」
「強さがはっきりしませんから確かな事は言えませんけど、ポイントが分配される設定になっていることを考えると、ボスが持っているポイント総数はかなり多いんじゃないかと思います」
恐らくだけど、低くても数百ポイントくらいにはなるのではないだろうか。
「でも、対戦チームがボスに掛かりきりになっている隙に、他のマスを陣地に変えるというのも一つの手ですけどね」
あくまで予想だが、そうした動きがあるのも含めてボスの保有ポイントは高く設定されているのではないだろうか。
まとめると、エキシビジョンバトルではポイントの獲得方法として、三つの手段が存在することになる。
まずは従来通りのマスを自陣地化する方法。
獲得ポイントも多い上に対処法も出回っていることから、ある程度安定したポイント稼ぎができると言えそうだ。
次に対戦相手のプレイヤーを撃破すること。
高レベルに有利ではあるが、格上相手に勝利できればボーナスポイントが手に入る。加えて低レベルだと負けたところで失うものはリスタートまでの時間と移動の手間くらいなものとなる。
以上のことから博打的な楽しみ方ができると捉えられないこともないかもしれない。ということで案外積極的に狙うプレイヤーは多いと予想されます。
そして最後の三つ目、隠しボスを発見して倒すという手。
ただし、現状ではどのくらいの保有ポイントを持つのか正確なことが分かっていないため、過度の期待は禁物というところかな。
結局は遭遇してみてのお楽しみ、ということになりそう。
〇ジャイアントキリング成功時のボーナスポイント
レベル差が10未満……2ポイント
レベル差が10以上20未満……4ポイント
レベル差が20以上30未満……8ポイント
レベル差が30以上40未満……16ポイント
レベル差が40以上50未満……32ポイント
レベル差が50以上……64ポイント




