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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十七章 『銀河大戦』3 二日目

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219 エキシビジョンバトルの変更点 前編

 幸いなことに集められていたプレイヤーたちは皆『OAW』に好意的だったり、実際にあちらもプレイしていたりする人ばかりだったので、変に疑われることもなく友好的に受け入れられることができた。


 余談だけど、最初に話しかけて来たあの人はボクの予想通り、ユーカリちゃんがギルドマスターを務めている『新天地放浪団』のメンバー、というか幹部の一人であったそうな。

 厳しい口調になってしまったのは、昨年ユーカリちゃんが受験のためにログインできる時間が減ってしまった際に偽者やそっくりさんが登場して、ギルド内でちょっとばかり問題になったからだそうだ。

 それを聞いたボクや『OAW』経験者は、「そんなことまで似なくてもいいのに……」とため息と共に思わず呟いてしまいましたとさ。


「ま、まあ、成りすましとかだと思われなくて良かったかな。皆が好意的で助かりました」

「それなんだけど、実は昨日運営からこんな連絡が届いていてね……」


 そう言いながら、あるプレイヤーさんが自分のスクリーンを展開して見せてくれる。

 今さらな説明にはなってしまうけれど、実は『OAW』は基本システムだけでなく、こうした様々な機能も『笑顔』のものをそっくりそのまま使用している。

 もしかすると、元々は同一のキャラクターデータで両方のゲームをプレイできるように開発していたのかもしれない。逆に将来的にそうした展望を抱いていた、という可能性もあり得るけれど。


 ちなみに、スクリーンを展開してくれたのは猫耳アンド尻尾のあるお姉さんでしたよ。虎縞模様の尻尾がとってもキュート。

 ……おっと、今はそれどころじゃなかったね。気を取り直して表示されている文を読んでいく。


 定型文な季節のご挨拶とイベント参加への感謝の言葉の後に書かれていたものを要約すると次のようになる。

 一、昨日一日で『OAW』プレイヤーに対して暴言を発する者や、眉をひそめてしまうような態度で接していた者がいたこと。

 二、規約に違反する行為を行っていた者がいたこと。

 三、以上の者に対して、アカウント停止を含めて厳正に処すことになること。特に一に該当する者は本日のイベント参加への停止もしくは、エキシビジョンバトルへの参加不可を申し渡した。

 四、人数の関係上、エキシビジョンバトルへ参加しないとしていたプレイヤーの一部に、再度参加可能かどうかの打診を行っていること。

 五、それに伴って最終的なエキシビジョンバトルのルール設定等に若干の変化が加えられること。

 こうしたことが記載されていたのだった。


「随分と思い切ったことをしたんですね」

「二番目のは多分、違法ツールを用いていたという話だと思う。どこのゲームでもそういう対策は定期的に行われているからな」

「イベントへの参加停止も、本戦に関しては影響が出ていないみたい。見逃したのか、それとも本当に準々決勝に残ったチームにそういう連中がいなかったのかは分からないけれど」


 そうすると、問題はエキシビジョンバトル参加不可扱いにされた人たちかな。元々これはお互いのゲームのプレイヤーを良く思わない人たちのガス抜きという面が強かったはずだ。それに参加できないとなると、さらなるフラストレーションが溜まってしまっているかもしれない。


 もっとも、馬鹿正直に参加不可になったとは伝えず、抽選外になったとだけ通達しているのかもしれない。

 が、今後も似たような事が起きないようにするには本人が理解できる(・・・・・)ように注意を促すか警告を与える必要があるはずで……。

 つまりは有耶無耶にはしていないと思われ、結果ペナルティを与えられて鬱憤を溜めた人たちが大量にいると予想されるのだった。


「後はどれだけ自分たちの状況を理解しているのかになるが、そこはもう運営に任せるより他ないだろうな」

「でしょうね。私たちだって所詮は一プレイヤーな訳だし、正義漢面して飛び出して行っても騒ぎが大きくなるだけだから」

「何があっても「通報しました」がベストな対応ってことか。了解だ!」


 言い方はあれだけど、実際その通りではあるんだよね……。

 結局のところは素人が下手に関与せずに、担当者や責任者だったり、その道のプロだったりに任せる方が平穏無事に治まることは多いのだ。


 特にゲーム内ではほとんどタイムラグなく通報できたり、現場へとやって来てもらったりすることができる。その上、行動ログを確認すれば全て丸分かりであるため、リアルよりも冤罪や誤認などが起こり難いと言えるのだ。


 さて、一応の結論が出たところでそろそろ話題を変えようか。

 運営に送った「どうして『笑顔』側に移動させられたのか?」の調査は……、まだ終わっていないようだね。

 それなら気になっていたもう一つの点について尋ねてみることにしましょう、そうしましょう。


「ところで、五番目のエキシビジョンバトルのルール変更について、誰か詳しく教えてもらえませんか?」


 移動してきた直後の皆の発言から、変更点についての通達は終わっていると考えたのだ。

 当然ボクにも『OAW』運営の方から同様の説明文が送られてきているのだろうけれど、せっかく会話ができるようになったのだから、彼らから話を聞く方が自然な流れではないかと考えたという訳です。

 べ、別に読むのが面倒くさいと思ったとかじゃないですからね!


「ああ、それな。一番の違いは一戦辺りの参加人数だな」

「確か、当初の予定だと全員参加状態で一度にぶつかり合うって話でしたよね?」

「そうそう。ただああいう連中が居たこともあって、三万人対三万人でやり合ったら収拾がつかなくなるという結論になったらしい」


 ルール無用のデスマッチ状態になったり、レベル差にものを言わせての蹂躙劇が起こったりしたとしても不思議ではないわよねえ。


「だからまあ、監視がしやすいように三百人一組でそれぞれ百チームごとに分けたってさ」


 それでもかなりの人数だ。本番とは違って全員に指示を出すどころか、意思の疎通ができるのかすら怪しいことになりそう。


「それに合わせてフィールドの設定とかも変えて、一マス当たりの広さを百メートル四方に変更したみたいだぞ」


 百メートル!?

 ロボットマスはともかく、スイッチマスの陣地化が面倒なことになった気がする。


 ちなみに縦横のマスの数自体は十ずつ、合計で百マスなのは変わりなしとのこと。一キロ四方のフィールドだけど、六百人が動き回るとなるとそれくらいは必要になるのかもしれない。


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