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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十七章 『銀河大戦』3 二日目

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217 開始前の空気

 翌日の日曜日の朝、今日も今日とて公式イベントは続く。ということでサクサクと準備してログインしましょう。

 平日としては少し遅いくらいの時間でも休日のボクとしては十分に早起きとなる。そのためかリビングにいた両親が訝しげな顔をしていた。


 まあ、二人の気持ちも分からないではないけれど。

 なにせ昨晩、


「明日も朝からゲームをしているけど、里っちゃんも一緒だから絶対に邪魔しないでね!」


 と伝えていたから。

 しかもその直後に里っちゃんからお電話があり、ボクの言葉を裏付けることになったのだ。ボクよりも彼女の信頼が高いうちの両親だからそこで一旦は納得したものの、普段とは異なる行動を取っていることで不信感を覚えたもよう。


 ボクの親世代は子ども時代がテレビゲームやビデオゲームと呼ばれたデジタル系ゲームの黎明期から全盛期と重なっている。

 そのためかゲームに対して忌避感はないけれど、その分中毒性や依存性も嫌というほどよく知っている。のめり込んでしまい勉強を始めとしたリアルの生活に支障をきたさないか心配であるらしい。


 そして、これについてはなんと里っちゃんの親御さんも同じだったりする。

 さすがにゲーム中に無断で部屋に入ってくるようなことはしないけれど、一日のログイン時間を制限される等それなりに細かい約束事がいくつもあるのだそうだ。そんなことしなくても里っちゃんなら自分でしっかり管理できると思うんだけどね。


 大体、彼女以上にゲーム好きの一也兄さんだってテストの順位は毎度トップ争い状態で、県外の大学へと進学した今も学内の成績優秀者になっているくらいなのだ。

 そうしたある意味先例もいるのだから心配する必要もないと思うのだが、どうにも親の目からすると厳しめというか、辛口の評価になってしまうようだ。


 そんな里っちゃんのご両親だけど、なぜだかボクへの信頼度は高い。それこそうちの親が里っちゃんを信頼しているのに比肩するくらいだ。

 以前「優ちゃんが男の子なら里香をお嫁にやれるのに」と言われた時には本気でどう答えれば良いのか分からず困ってしまった。


 ちなみに、それを聞いて「ちょっと、お母さん!何を言ってるのよ!?」と怒りながらも真っ赤になっていた里っちゃんは殺人的な可愛さで、思わず「嫁に下さい!」と叫んでしまいそうになるほどでした、まる。


 そんな事情もあって、昨晩里っちゃんから電話があった直後には、ボクから彼女のご両親に本日の予定についての連絡を入れさせてもらっている。

 その時も「優ちゃんが一緒なら安心ね」という謎の太鼓判を押してくれた。

 相変わらずの信用度の高さに頬が引きつるのを感じながらも、無事に説得?できて良かったと思ったのだった。


 そんなこんなあってログインしたボクは、『異次元都市メイション』の『噴水広場』へと降り立っていた。

 時刻は午前八時半。抜けるような青空の下、リアルとは違って爽やかな気候具合だ。

 この不快指数の違いたるや。これだけでもこちらに来る甲斐があるというものだよねえ。まあ、その分だけリアルに置いてある体の調子には気を配っておく必要があるのだけれど。


 さて、今日のイベント開始は午前九時だから時間はもう少しだけある。とはいえ、のんびりしていられるほどの余裕がないのも確かだ。

 さっそくイベント会場への転移するための装置のある『広場』へと向かうとしますか。


「あれ、『テイマーちゃん』か?」

「お?おお!本物だ!」


 中央の『屋台通り』に入るとすぐに、ボクだと気が付いたプレイヤーさんたちの声が聞こえてくる。

 たった一日の事なのにすっかり顔と名前が売れてしまったものだ。


「おはようございます」


 声のした方へと向けて、ニッコリ笑顔付きの挨拶をする。円滑な人間関係は挨拶から始まるのです。

 まさか挨拶が返ってくるとは思ってもいなかったのか、はたまた自分たちの言葉を聞かれているとは思わなかったのか、すっかり硬直してしまった男性二人の横を抜けて先へと進む。


「あら?『テイマーちゃん』じゃない!直接会場には向かわなかったの?」

「せっかくのお祭りですから、始まる前の空気も楽しんでおこうと思って。この何とも言えないワクワク感が結構好きなんです」


 今の女性プレイヤーが言ったように、実はイベント会場に直接ログインすることもできる。ほら、昨日のお昼休憩の後は直接会場へと戻っていたでしょう。要はあれだ。

 それにもかかわらず、なぜ『異次元都市メイション』を経由しているのかと言えば、さっきの答えの通りだ。


 中学時代には里っちゃんたち生徒会の手伝いをしていたためか、こういう行事とかイベント事とかが始まる前の緊張感と期待感が入り混じった独特の感覚がすっかり好きになってしまっていたのだ。

 まあ、それもこれも責任の伴わない員数外だったから言えることだけど。

 実際、あの里っちゃんですら行事が終わるごとに「もう二度とやりたくない……」とぼやいていたほどだ。


「『テイマーちゃん』。おはよう!」

「おはようございます。今日は頑張りましょうね」

「俺は参加できないけど応援してるぜ!」

「はーい。せめてワンサイドゲームにはならないように努力しますです」


 てくてくと『広場』へと向かう足は止めずに、次々と声をかけてくれる人たちに返事をしていく。

 何だかんだで昨日は『笑顔』プレイヤーたちとの力量の差というかレベルの差に圧倒させられることが多かったのだけど、そのことに気圧されて意気消沈している様子は今のところなさそうだ。

 多くのプレイヤーがお祭りとしてそういう部分も含めて楽しんでいるのであれば、公式イベントとしては成功と言えるのかもしれないね。


「エッ君とリーヴを撫でさせてくれない?」

「それはまた今度機会があればということで」

「なあ、他にもまだ隠し玉があるのか?」

「おおっと、そいつはロックな話だぜブラザー」

「ロック!?ブラザー!?」

「あはは。秘密ってことー」


 エキシビジョンバトルが始まる前に、時間があるならうちの子たちのお披露目くらいはしてもいいかも?

 あ、でも、収拾がつかなくなる可能性が大?

 作戦タイムがうちの子たち、もしくは『テイムモンスターとサモンモンスターを愛でる会』になるのは問題だよね。


 そんなことを考えている間に『広場』へと到着し、転移装置を使ってイベント会場へと移動したのだった。


『ロックな話』の小ネタ解説です。


ひ(1)み(3)つ(2)、で合計六、つまりロック。

後、錠前のロックとも絡めてあったり。

もっとも、単に思いついたから書いただけというのが一番のところだったり。

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