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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十六章 『銀河大戦』2 一日目午後

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213 テイマーちゃんの奥の手

 四回戦開始一分前。

 でかでかと空中に浮かんだカウントダウンの数字を見ながら、ボクは体をほぐしていた。この体はアバターだから、ぶっちゃけてしまうと意味のない動きではあるのだけど。

 そこはほら、気分の問題ということで。


 そんなボクを不安そうに見つめる十の瞳が。

 言わずと知れたチームの仲間たちです。


「ええと、そんなに心配しなくても……」


 振り返って苦笑いを浮かべる。


「だって……。小さな子どもを初めてのお使いに行かせるような心境になっちゃったんだもの」


 それ、見た目的にはあなたの役回りですからね、リルキュアさん。

 そんなボクの心の声が聞こえたかのように、他のメンバーたちは何とも言えないお顔となっていました。


「間もなく四回戦が始まります。プレイヤーの皆様は準備をしてください」


 どこからともなくアウラロウラさんの声での定型文が聞こえてくる。

 さあさあ、いよいよですよ!


 スタートの合図と共にボクは真っ直ぐひた走って行く。

 近くのマスは一切無視して前へ前へ。性分なのか、ロボットマスはともかくスイッチマスを放置して走り抜けることには気が引けてしまった。

 それくらいの寄り道はするべきだったかしらん?


 いやいや、今は一秒でも早く敵チームへと攻め込むことが大事なのだ。のんびりとはしていられない、はず……。

 と、微妙に後ろ髪を引かれてしまっていたボクなのでした。


 内心でそんな葛藤を繰り広げながらも足はしっかりと動いてくれていたようで、いつの間にか目的の場所である他チーム側のマスへと到着していた。

 スイッチマスだったので、とりあえずポチっとな。


 さて、これからどう動くべきか?


 遥翔さんが観察したところによると、右手側のチームは重装備で近距離戦闘職ばかりが集まってしまったようだと言っていた。

 次に正面のチームだけど前者よりは軽装が多いものの、やはり戦闘職ばかりのチーム構成になっていそうとのこと。

 戦闘には自信があるのか、どちらのチームもまずは足場固めから始めているという印象だ。ただし、これまでの対戦相手とは異なり、複数ユニットに分かれて時間短縮を図っているようだった。


 対して残る左手側のチームは、うちと同じように様々な職のプレイヤーが寄せ集まった感じだ。

 試合の進め方も似ていて、複数のユニットに分散しては足場固めと同時に防衛線を構築している。


 そうなると現状で一番勢い付かせてはいけない相手は……、左手側のチームだ!

 他の二チームのメンバーが戦闘系ばかりで守りが固そうなこともあって、ボクたちの方へと攻め込んでくる可能性も高い。

 今のうちに足を乱しておくのが肝要だろう。


 方針を決定した以上のんびりとしている理由はない。すぐに左側のマスへと走り始めると、


「あっ!『テイマーちゃん』だ!『テイマーちゃん』が攻め込んでくるぞ!」


 目ざとく発見されてしまいました。ううん、障害物となるロボットがいなかったのが痛い。

 まあ、他のチームとは違ってかなり近付いてしまっていたから、見つかるのは時間の問題だったとも言えるかな。

 そしてマスに入った途端現れたのは、二メートル超える分厚い壁、ではなく見る者に強固な印象を与えるロボットだった。


「よし、ロボットマスだ!『テイマーちゃん』は低レベルだから逃げるしかないはず!」


 むむ!?何やら失敬な台詞が聞こえてきましたよ!?

 というのはまあ、冗談でして。ボクだって相手側ならば同じ意見になると思う。だから戦うことを、ましてや直戦闘を選択するとは夢にも思っていないことだろうね。


 そういえばと思い出したように――いや、まさにその通りな訳だったんですが――、イベントが始まって以降、慌ただしくて使っていなかった〔鑑定〕技能をロボットに用いてみる。

 あ、レベルが表示された。浮かび上がってきた数字は十三。どうやらミザリーさんをベースにしていたもよう。

 これなら目標としている短時間決着も十分に狙える。自然と口角が上がっていくのを感じた。


「直接戦闘を選択!さあ、二人とも行くよ!」

「は?……なあっ!?」


 ボクの発した言葉に近くにいた敵対チームのプレイヤーが唖然とした声を上げ、その後の光景に信じられないといった調子で目を見開いたまま硬直して叫び声を上げる。

 さらにその驚きは伝播(でんぱ)し、彼のチームだけでなく、なんと敵対チームの全員へとあっという間に広がってしまった。


 一見大袈裟なようにも思える彼らの反応だけど、実は一概にそうだとも言い切れないのだよね。

 なぜならその視線の先、ハルバードを手にロボットへと突進していくボクの両隣にはテイムモンスターであるエッ君とリーヴがいたのだから。


「な?え?テイムモンスター?」

「あいえええ!?なんで!?テイムモンスターなんで!?」

「おおおお落ち着け!『テイマーちゃん』なんだから、テイムモンスターがいるのは当たり前だろう!?」

「いや、お前が落ち着けよ。というか論点ズレてるぞ。どうしてテイムモンスターがいるのかっていう話だろうが!?」


 あっはっは。いい感じで大騒ぎになっていますなあ。

 まあ、今のところどこの掲示板にも書かれていない情報だったようなので、この展開はある意味予想通りだったりします。


 もっとも、やったこと自体は至極単純だ。

 持ち込んでいた『ファーム』からエッ君とリーヴの二人を呼び出しただけ。

 練習用フィールドで普通に使えることが分かっていたことや、チームとパーティーがイコールではないこと等から、テイムモンスターの呼び出しは可能だとほぼほぼ確信を持っていたのだった。


 さて、今さらですが今は試合の真っ最中です。しかも一旦停止(タイム)などもないので状況は刻一刻と変化していた。

 当然、ボクと同じようにロボットと対戦中だったプレイヤーもいた訳で……。


「え?き、きゃああ!?」

「ぐわっぱあああ!?」


 無防備になったところに手痛い攻撃を受けてしまい、大ダメージを受けることになってしまったらしい。

 中にはスタート地点直行便に強制乗車させられた不運な人もいたのだとか。


「(うっわー……。もしかしてこれだけで試合に勝てちゃうんじゃないか?)」


 いやいや、ヤマト君、いくら何でもまだ試合が始まって間もないから、どこのチームも立て直してくると思うよ。


 それにしても概要だけでもうちのチームの皆には伝えておいて正解だった。

 奥の手を使ったら味方が壊滅しただなんて、笑い話にもならない事態が発生するところだったよ。


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