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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十六章 『銀河大戦』2 一日目午後

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203/933

203 対抗方法

『じゃんけん勝負』の設定について少し変更しました。

詳しくは活動報告の『訂正のご報告』もしくは188話をご確認ください。

お手数ですが、よろしくお願いします。

 ゲーム開始から一週間も経たない間に、公式裏技的な過剰積み込み(オーバーロード)を教わっていたという超展開な事実に『笑顔』側のチームメンバーたちが唖然としている一方で、ミザリーさんは複数のスクリーンを表示させて何やらすごい勢いで調べものをしていた。


「……ありました。武器の扱い方や魔法の訓練を教わった時のことですね」


 どうやら『冒険日記』のバックナンバーを読み返していたもようです。

 あれ?そんなにたくさんのスクリーンは要らなくない?……深く考えると泥沼にはまり込みそうな予感がするから、気にしないようにしようっと。


 他のメンバーたちと一緒にミザリーさんの手元を覗き込むと、ゾイさんやサイティーさん、それにエッ君が模擬戦で名前も知らない冒険者の誰かに勝利しているスクショが添付されていた。


「うわあ、懐かしい。と言ってもリアルでもまだ二カ月とちょっと、ゲーム内の時間だと一月くらい前のことでしかないんだっけ」


 撮影者がアウラロウラさんになっていることについては完全に無視しておいて、とりあえず思い浮かんだままの感想を口にする。

 後、またもや皆がギョッと目を見開いていたようだけど、そちらについても気にしないことにする。


 実際のところテスト勉強のためにプレイできない期間があったから、特にゲーム内ではそれほど時間が進行していないのだよね。

 ログインする際に一気に時間を進めてしまうことも可能ではあるのだけれど、それはそれで浦島太郎状態になってしまいそうでして……。


 それに時間の経過が鍵になるイベントを進めている訳でもなければ、農業などの育成に長い時間がかかることに挑戦している訳でもない。

 なので、のんびりとしたペースで楽しめれば良いかなと思っているのだった。


「確かに以前から、この頃の『冒険日記』には前後の文脈がおかしな所があるという噂が上がっていました。ですが、まさか本当に運営の添削で、しかも重要な案件が削除されていたとは思ってもみませんでしたね」


 実はこの頃はゲームに慣れる、というかクンビーラでの生活に慣れることに夢中で、『冒険日記』でもついつい『帰還の首飾り』について話題にしてしまうなど、二回に一回くらいの割合で運営からの訂正が入っていたりする。


 加えて、ボクからすれば目新しいことばかりだったこれらの日々も、ゲームに慣れたプレイヤーからすれば代わり映えのしない単調な繰り返しに見えていたらしい。

 そのため読み物としてよりも、文脈のおかしな部分などに目が向きがちになっていたのだそうだ。

 それでも基本的には添削した際の文章の推敲ミス程度にしか思われていなかったようだけど。


「さて、と。ボクのことはこれくらいにして、過剰積み込み(オーバーロード)への対策方法をお話しますよー」


 このままだと『冒険日記』を読みふけりそうな雰囲気になりそうだったので、パンパンと手を叩いて強引に皆の意識をこちらに向けさせる。

 自分の書いた文章を目の前で読まれるのが恥ずかしかったということは否定しない。


「いかんいかん。ある意味そこが一番肝心なところだった」


 と、すぐに頭を切り替えていたのはマサカリさんです。さすがはトップレベルの戦闘職プレイヤーだ。

 そして彼に釣られるように残りの面々も気持ちを切り替えていた。


「まあ、対策と言っても大したことができる訳じゃないんですけどね」


 苦笑いでそうぶっちゃけると、想定外だったのか皆の肩がかくっと落ちる。

 このままだと文句が噴出しそうなので、さっさと続きを話すことにしようか。


「要は火力型の魔法使いを相手にしていると考えればいいんです。過剰積み込み(オーバーロード)という行為が入りますけど、最終的にやっていることは一緒ですから」


 なので取れる対策というものも当然同じようなものとなる。


「火力型の魔法使い対策というと……、より遠距離からの攻撃かしら?」

「防御自体はあってないようなものですから、気付かれずに懐に潜り込むのも有効ですよ」

「最悪、一人を囮にしてそいつに対して魔法を使わせて、その間に接近して倒すというやり方もできなくはないぞ」


 おー、さすがはサービスを開始してから長いだけのことはあるね。こうした面のノウハウも蓄積されているのか、熟練の『笑顔』プレイヤー三人からはポンポンと案が飛び出てきていた。

 ただ、どれも今のボクたちには選択することができないのが難点かな。

 それというのも、


「俺たちに魔法以上の遠距離からの攻撃手段はないから、リルキュアさんの案は無理だよな。そもそも同じマスに入らないと戦闘にならないし。遥翔さんの案だと隠れる場所が必須だろ?初期状態だと障害物も何もないから厳しいと思う。後、マサカリさんのは本当に最後の手段っぽいから、できればやりたくないぜ」


 ヤマト君の指摘に対して、本人たちもその通りだと思っていたのか特に反論もなく受け入れていた。


「ですが、全くの的外れということでもないのでは。重要なのは相手に魔法を発動させないことではないでしょうか」


 そう、大切なのは相手に魔法を撃たせないこと、つまり先手を取ることなのだ。

 それにしてもミザリーさん、皆からのヒントがあったとはいえ独力でボクが教わった答えに辿り着いてきたよ。本職(マジシャン)であることと、彼女自身の洞察力の高さが上手く相乗効果となったということなのかも。


「通常の魔法の発動までよりもさらに長い時間が過剰積み込み(オーバーロード)には必要になります。ボクが教わったやり方はその隙に相手の集中を乱すということでした」


 初めての挑戦の時にセルフジェットコースター状態になってしまったように、オーバーロードマジックはちょっとしたことで失敗して、さらには予想外の事態を引き起こす。

 上手くすれば自爆を誘発させることもできるかもしれない。


「それらしい兆候が見えたら先手必勝のつもりで攻撃を仕掛けてください。魔法なら初級のボールで十分ですし、何か物を投げつけるのも有効だと思います」


 まあ、問題は投げつけるための物がないということか。

 紛失防止機能が付いている初心者用ナイフも、戦闘中には自動帰還効果は発揮されないようになっているから何度も使えるものではない。

 こんなことならなくなってしまっても損にはならない『兜卵印の液状薬』をもっとたくさん持ち込んでおくのだったよ。


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