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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十六章 『銀河大戦』2 一日目午後

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193 対策を考えよう

 突如湧いた『笑顔』至上主義とでもいうかおかしな連中からの不当な干渉を防ぐため、ボクのチームメンバーたちは態度を明確にしようということになった。


 余談だけど、一応似たような考えの人は『OAW』側にもいたらしい。

 が、サービスを行ってきた期間が圧倒的に違う、つまりプレイヤーのレベル差が大き過ぎるということもあって、裏工作にまで手を出そうとする人はいなかったのだとか。


 さて、『OAW』から参加しているミザリーさんは『笑顔』プレイヤーとの人数差に着目することで、安易に手出しができないだろう言い分を考え付いていたのでそちらに関しては一安心といったところだ。

 『OAW』出身という点ではボクも同じなのだけど、預かり知らぬところでいつの間にやらリーダーに仕立て上げられていたので干渉されようがないのだった。


 問題は『笑顔』側から参加したメンバーたち、すなわちマサカリさんと遥翔さんにリルキュアさん、そしてヤマト君の四人だ。


「はっきり言ってあいつらの「スパイみたいなことをしろ」っていう言い分がムカつく」


 真っ先にそう言って怒りの感情をあらわにしたのはヤマト君だった。リアルの友達とかお世話になった先輩が迷惑を掛けられていたことが腹に据えかねたようだ。

 ただ、スパイのような、ではなくスパイそのものだけどね。さらにそれを引き継いだのがリルキュアさんだった。


「やり口も気に入らないわね。私たちに直接言わずに周りの知り合いや関係者にばかり接触しているんだもの」


 しかもその態度は高圧的で、言葉を濁すと嫌がらせじみたことまでしてきたらしい。


「完全に通報案件じゃないですか!?よくそんな無茶なことができますね?」

「本人たちはそのつもりが全くないんだと思いますよ」


 やれやれとため息を吐きながら答えてくれる遥翔さん。


「己のやっていることは絶対的に正しいことで、それに協力するのは当たり前のことだと思い込んでいるんだろうよ」

「要するに、自分に酔っている痛い人たちということです」


 さらに吐き捨てるようにマサカリさんが説明してくれて、止めにミザリーさんが辛辣ながらも良く分かるお言葉でまとめてくれた。


「そんな連中と肩を並べて戦いたくなんてないわね」

「同感だ。……そうだな、いっそのことエキシビジョンバトルには不参加だと表明しておくか」

「ええっ!?」


 気負いも何もなく、あっさりと提案されたその内容にボクは驚きの声を上げてしまった。


「それもアリですね。大規模戦闘をやってみたいなら『レギオンバトル研究会』とか『ウォーシミュレーション』が主催しているギルドバトルに参加させてもらえばいいだけの話ですから」

「俺はまだそこまで行ったことがないんだけど、低レベル参加者にも役割を振ってくれるから、誰でも楽しめるって評判が良いんだっけか?」

「他にも後方支援っていう名目でクリエイター系のプレイヤーの参加も受け付けているわね。ギルドバトルの時専用で限られた数のアイテムをやり繰りしたりして、あれはあれで結構楽しめたわ」


 そんなボクを放置したまま会話は進んでいた。

 後で詳しく聞いたところ、『笑顔』ではいくつかのギルドが取り仕切ることで、プレイヤー同士での大規模な戦闘を気楽に体験できるようになっているのだとか。

 数十人規模なら毎日のように、百人程度でも毎週一回くらいのペースで予定が組まれているそうだ。


「最大規模の時には何人参加したんだったかな?」

「二年前の秋にやったやつよね。確か両陣営合わせて三千人を超えていたらしいわよ」

「三千人!?」


 プレイ人口から考えると十分にあり得る数ではある。しかし、運営による公式イベントとは違ってプレイヤー主体で行ったものとなると破格の動員数だと言えるのではないだろうか。


「そういうことで私ら『笑顔』プレイヤーからすると、無理に嫌な思いをしてまで明日のエキシビジョンバトルに参加する必要性がないのよ」


 むむう……。確かに今の説明からするとリルキュアさんたちが参加する意味合いというのは薄いと言わざるを得ない。


「まあ、抽選に選ばれないっていう可能性も否定できないんだけどな!」


 そう言って笑いを誘うマサカリさん。その様子から無理をしているようなところは見受けられない。それどころか、逆に面倒事を回避することができて清々しているみたいだ。


「残るは『テイマーちゃん』の情報についてですけど、これも無視してしまって構わないような気がします」

「だな。午前中の調子からすると『テイマーちゃん』なら思い付いた作戦は秘匿したりせずに全て実行に移そうとするだろうから、気になるなら本番での映像なりを好きに解析させればいいだろう」


 解析しなくちゃいけないほど大した作戦を閃くことができるとは思えないんですが。

 チームメンバーからの評価が過大なままなのは相変わらずみたい。


「それ以外の、例えば個人的なことやプライバシーにかかわることはマナー違反になるから手の出しようがないし」


 通報どころかアカウントを停止もしくは剝奪されても文句は言えないから、そちら方面に手を出してくるような危ない人はいないと思いたいところだね。


 ただ、このままだと向こうからの要求を一切受け付けずに拒否している形なのが気にかかる。

 これだけ無茶なことをしてきた連中だから、思い通りにならなければ逆恨みをするくらいのことは十分やりそうな気がするのだ。


 とはいえ、どうすれば良いのか……。

 あ、そうか!ミザリーさんの時と同じように、あちらの利になると思わせればいいんだ!


「あの、突っぱねるだけだと恨みを買ってしまうかもしれないので、こういうのはどうでしょうか。「情報を流すことはできないが、『テイマーちゃん』が積極的に策を出すように仕向ける」と返事をするんです」


 過大評価気味ではあるけど、皆が言うようにボクならば思い付いた作戦はすぐに実行しようとするだろう。つまり実質的には特に何かをする訳でもないということだったりする。

 強いて問題点を挙げるとするならば、ボクがそうそう上手く作戦を思い付いたりできるのかどうか、という不安が残るところかな。


「いずれにしても最終的にどの程度の警戒をするのかを決定するのは向こうの連中です。それで失敗したところで彼らの責任ですから、そこまで難しく考える必要はないと思います」


 というミザリーさんの意見もあり、マサカリさんたちにはボクの案が採用されることになったのだった。


 ところが、彼らの問題行動はボクたちからの報告以外にも苦情や通報という形でいくつも運営に寄せられることとなり、エキシビジョンバトルへ参加を禁止されてしまうのだった。

 この決定を聞いたボクたちチームメンバー一同は、ホッとすると同時に、あの悩んだ時間は一体何だったのかと微妙に釈然としない思いに駆られてしまったのでした。


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