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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十五章 『銀河大戦』1 一日目午前

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184 練習してみた

 話し込んでしまったことで思っていた以上に時間が過ぎてしまい、気が付くと時計の針は十一時を指していた。

 本番開始まで残り時間は少ない。イベントの流れや細かな仕様を掴むためにも、ボクたちは練習用フィールドに一回目の挑戦をしてみることにしたのだった。


 その結果がこちら。


「ロボットマスかスイッチマスかは誰かがそのマスに入った瞬間に判明して、全員に共有されるようになっていましたね」

「交互に配置されていたものが、それぞれ十二マスずつランダムに配置されるというのが本番との違いというところか」

「攻略ルートを固定されないためにも、ランダム配置は妥当なところでしょうね」


 リルキュアさんの総括に頷くボクたち。練習のように固定化されていると必勝パターンが作られてしまうからね。


「本番のマスの配置に関しては、十マス掛ける十マスというよりも、練習用フィールドと同じ五マス掛ける五マスが四つ隣接し合っていると考えた方が分かり易いかもしれないですね」


 ミザリーさんが指摘した点は、例えばAのチームのスタート地点の近くにばかりロボットマスが集まってしまう、というような極端な配置がなされる事態を防ぐための手なのだろう。


「スイッチマスは楽勝だとして、問題はロボットマスだよな」


 ヤマト君の台詞にこれまた一斉に頷くボクたち。

 まあ、対戦相手のプレイヤーたちと追いかけっこ状態になってしまうとまた話は変わってくるのだろうけれど、危険がない分やり易いことには変わりはないのだ。


「ロボット、結構大きかったですよね」


 人型で全体的に太く丸いフォルムをしていた。


「頭までの高さが二メートル半、一番広い肩幅で二メートルくらいだったか。戦ってみた感想としては全体的に鈍重な感じだったな」


 形状や動きから、攻撃用というよりは防御用の機体という印象を受けた。

 そしてマサカリさんからすれば、一番強いものでも自身の半分のレベルとなるのだからさもありなん。


「自分たちも『じゃんけん勝負』なら負けることはなさそうです」

「ただ、十秒もそのマスに足止めされるというのは予想外だったわ」


 何気なく過ごしている時の十秒はあっという間なのに、いざ待つとなるととても長く感じてしまったのだ。

 本番では他のチームとの競争になる分、練習の時以上に目まぐるしく状況が変わっていくだろうから、もっと長く感じてしまうことになるかもしれない。

 焦燥感から普段ならしないようなミスをしてしまうことも考えられるのだった。


「ミザリーさんの援護があれば、俺でもマサカリさんベースのロボットを倒せたぞ」


 <ファイター>のヤマト君と<マジシャン>のミザリーさんは相性が良かったのか、協力することでサクッとロボットを倒すことができていた。

 二人を一つのユニットとして別行動させる、なんて真似もできるようになるのでこれは嬉しい発見だった。


「『テイマーちゃん』は……、一人で戦うのは止めた方が無難そうでしたね」


 だけど一番レベルの低いボクの場合、ボクかせいぜいヤマト君のレベルをベースとしたロボット以外は『じゃんけん勝負』ですら勝つのは難しいという有り様だった。


「役立たずで申し訳ないです」

「何を言っているのよ。私や遥翔君が他のチームのプレイヤーに狙われた時の対策方法を考えてくれたんだから十分貢献しているわよ」


 そう言ってもらえるのはありがたい。だけどやっぱりもう少しは活躍、……は無理でもせめてお荷物状態からは脱却したいところだ。


 その方法は後から考えるとしまして、とりあえず今は反省会の続きを優先しよう。


「後は……、ロボット邪魔よね」


 身も蓋もない言い方だが、実際そうだったのだから仕方がない。一度出現したロボットは倒しても消えることがないため、視界を遮る障害物となってしまうのだ。

 表示されるミニマップには同じチームメンバーの位置と自陣となっているマスの状態のみが表示されるため、使い方次第ではこちらの様子を探らせないための壁にもできるかもしれない。

 ただ現段階では要検討というところだろう。


「練習で気になったのはこのくらいか?」

「そうですね。対戦相手がいない状態ではこれ以上は何とも言えません」


 マサカリさんの言葉にミザリーさんが答えながら小さくため息を吐く。決められた範囲の中で決められた行動しかとる事のできないロボットとは異なり、プレイヤーたちは奇想天外な行動をとる可能性があるからだ。

 とはいえ、積極的に他のチームのスタート地点近くまで攻めていくのか、それとも手堅く近くのマスから自陣にしてポイントを稼いでいくのか。

 この二通りの動きが基本的な戦術となってくるのではないだろうか。


「そして恐らくですけれど、チームを二つに分けてその両方を一度に行おうとするところが多いような気がします」

「え?そうなのか?」

「だって、運営による強制的な急造のチームですよ。レベルだってバラバラな訳だし、そうそう上手くまとまることなんて無理じゃないかと思いませんか」


 なので、高レベルで積極的に攻勢に出る人たちと、低レベルで近くのマスから自陣地にしていく二つのグループに分かれるのではないかと予想したのだ。


「あくまでもボクの勝手な考えなので、見当はずれかもしれませんけど」

「……いや。『笑顔』ではギルド同士で対抗しているやつらもいるし、同じチームになったからといって俺たちのように自分の手札を見せ合っているとは限らない。ギルドバトルでの経験から、同じように攻め手と守り手に分かれるというのも十分にあり得る話だ」


 マサカリさんがそう言うと、他の『笑顔』プレイヤーたちも頷くことで賛意を示してくる。

 全くの見当外れのことを考えている訳じゃないと分かって良かった。これなら基本方針は変更しないで済みそうだね。


「それと本番は四チームが入り混じることになるので、他のチームの狙いを見極めることが大切になってきそうです」


 幸いボクたちはチームを複数のユニットに分けることが可能だと判明している。他チームの狙いに適したユニットで対応することができれば、大きく行動を制限させることもできるはずだ。


「『テイマーちゃん』がその辺の指示を出してくれるんなら、上位入賞もできるんじゃないか!?」


 いやいや、ヤマト君。いくらなんでもそう簡単にはいかないと思うよ。

 まあ、やれと言われたらできる限りは尽くすつもりだけどさ。


補足です。


〇練習用フィールド


Sスロスロ

スロスロス

ロスロスロ

スロスロス

ロスロスロ


S…スタートマス

ス…スイッチマス

ロ…ロボットマス


スイッチマス(12個)とロボットマス(12個)が交互に配置されている。



〇練習用フィールドと本番用フィールドの違い

スイッチマスとロボットマスの配置がランダム。総数は同じで48マスずつ。

ただし、そのマスに侵入してみなければどちらか分からないようになっている。

極端な偏りがないように、配置に関しては5×5マスの四ブロックに分けられている。



(例1)           (例2)

Sススロス スロススS    Sロスロス スロスロS

ロスロスス ススロスロ    ロロロスス ススロロロ

ロロロスス ススロロロ    ロロロスロ ロスロロロ

スロスロス スロスロス    ススススロ ロスススス

ロロロスロ ロスロロロ    スロスロス スロスロス


ロロロスロ ロスロロロ    スロスロス スロスロス

スロスロス スロスロス    ススススロ ロスススス

ロロロスス ススロロロ    ロロロスロ ロスロロロ

ロスロスス ススロスロ    ロロロスス ススロロロ

Sススロス スロススS    Sロスロス スロスロS


※スタートマスから見ると同じ配置になっている。

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