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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十五章 『銀河大戦』1 一日目午前

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180 姉妹喧嘩とチーム分け

 嘘情報を織り交ぜたボクたちの紹介が済み、改めてユーカリちゃんと向き直る。うーむ、このそっくり具合は何度見ても驚きのそっくりさだ。

 例えるならばピーナッツと落花生くらいにそっくり……、って、あれは呼び方が違うだけだったっけ?


 いけないいけない。このまま考え込んでいては頭がグルグルして混乱してきそうだ。さっさと課された役目を終わらせてしまおう。


「負けないからね」


 おやおや?

 握手をして互いの健闘を祈るはずが、どうしてボクは宣戦布告の真似事のような事をしているのでしょうか?

 全く予定になかった展開にアウラロウラさんも運営氏も唖然としてしまっている。会場の方もしんと静まり返ってしまっていて、今さら「うっそでーす!」とも「もちろん冗談だけどね」などと言って誤魔化せる雰囲気ではなくなってしまっていた。


 そんな中、一早く立ち直ったのが正面にいたユーカリちゃんだった。


「ふふん。それじゃあ、初めて姉妹喧嘩だね!」


 ボクの手を取ってぎゅっと握る彼女は何故だかとっても楽しそうだった。

 ……あー、もしかすると『姉妹喧嘩』というところが彼女の心に響いたのかもしれない。


 従姉妹同士だけど親同士の中も良かった上に同い年ということで幼い頃はそれこそ本当の姉妹のようにして育ってきた、訳なのだけど、小さな頃からその高性能さを存分に発揮していた里っちゃんに一般ぴーぷる代表のボクが太刀打ちできるはずもなく。


 ある程度の歳になると彼女の手助けと言うかサポートすることが面白くなってきてしまったから余計にそういうことができる関係ではなくなってしまったというのもある。

 今から思えば、いわゆる「あの子の見ている景色と同じものが見たい」という気持ちだったのだろうね。そんなこんなで、ボクたちはこれまで喧嘩らしい喧嘩などをしたこともなく過ごしてきたのだった。


 それと、里っちゃんには一也兄さんという兄弟がいたのだけれど、あの人も何というかマイペースかつ独特な空気感を持つ人だからねえ。

 異性ということも加わって、ボク以上に喧嘩なんてできる間柄ではなかったみたいだ。


 そうした理由から姉妹喧嘩に妙な憧れを抱いていたのではないかと考えられます。

 というか、キラッキラしたその瞳が全てを物語っておりましたよ、ええ。こんな顔をされたら絶対に撤回なんてできないよね。


 何より、先に引鉄を引いてしまったのはこちらの方だ。知らず知らずのうちにあんな言葉が口をついてしまったということは、ボクの中にもそうした場を求める気持ちがくすぶっていたということなのかもしれない。

 変に鬱屈(うっくつ)して爆発しなかっただけでも良かったとポジティブに考えるとしましょうか。


「やるからには負けないから」

「それはこちらの台詞」


 こうなったらとことんまでやってやろうと、お互いの手をぎゅうぎゅうと全力で握りしめ合いながら相手を睨みつけるボクたち。

 あ、バチバチと火花が散る演出とかは要らないですから。雰囲気を盛り上げたいのかもしれないけれど、逆にコミカルな印象になってしまいやる気が抜けていきそうだよ。


 ちなみに二人とも笑顔のままです。

 別に嫌い合っているとかではないので。


「乗り気になってくれてありがたいはずなのに、この寒々しい怖気(おぞけ)は一体何なんだ……」

「まさかこんな形で意趣返しをしてくるなんて、お二人とも侮れませんね……」


 すぐ近くにいた二人からは失礼な評価をされているようだけど、あえて無視。


「くっくっくっく」

「うふふふふふふ」


 まあ、ボクもユーカリちゃんも相手を牽制するのでそれどこではなかったという部分もあったのだけど。


 こうして、なんだか色々と盛りだくさんとなってしまったイベントの直前説明と開会式は、無事に終わりを迎えたのだった。


「いやいやいや!全く!全然無事じゃないからな!?」

「開始早々でこれとなると、明日のことを考えると頭が痛いです……」


 一部の人たちを除いて。




「えーと、ご存知だと思いますけど『テイマーちゃん』ことリュカリュカです。名前呼びでもいいんですけど、諸事情がありまして『テイマーちゃん』の方で呼んでもらえたらありがたいです」


 時間も押してきているということでさっそく行われたチーム分けで一緒になったメンバーの人たちに自己紹介を行う。チームごとに用意された個別の空間なので名前を告げても他の人に聞かれる心配はない。

 余談だけど、ゲーム内での時間圧縮については研究が続けられているそうらしいが、脳への負担が大きいということで未だ実用に至ってはいなかったりします。


「いやー、まさか自分が有名プレイヤーと一緒のチームになるとは思わなかったですねー」

「それは同意だが、今は時間がないから余計な感想は後回しにしろ」


 糸目なお兄さんの台詞を一蹴して、見るからにパワーファイターという格好のおじさんがボクに続きを促す。


「職業は<テイマー>でレベルは十。攻撃系の技能としては〔槍技〕に〔水属性魔法〕と〔風属性魔法〕を持っています」

「まあ、その呼ばれ方で<テイマー>以外の職業だったりしたらびっくりだわな」


 ちょっとちょっと。自分で言っておいて変な突っ込みを入れないでよ。


「その場合は『テイマーちゃん(偽)』とかになるのかしら?」

「実は『テイマーちゃん』に成りすまそうとしていた人の中に<ファイター>や<クリエイター>の人がいまして。あ、私は違いますからね!?」

「マジでそんなおバカなやつがいたのか!『OAW』のプレイヤーも侮れないぜ……」


 案の定他の人たちが話題に乗ってしまって、別方向へと進んでしまう。というか最後の人、感心するポイントがおかしくない?


「自分に注意しておいて、それでいて速攻で破るとか酷くないっすか?」


 あ、糸目お兄さんがいじけてるよ。

 蹲って地面にのの字を書く後姿が哀愁を誘ってます。


「す、すまん。悪かったからそう落ち込まないでくれ!」

「ああ、あれは日頃から部下のフォローに翻弄されているタイプね」

「そういえばVRで屈強な体や堅甲な姿を好む人は、実は繊細な心の人が多いっていう話を聞いたことがあります」


 慌ててなだめに入るファイターおじさんと、それを見て人物評を下している女性陣の二人。


「お前ら……。そういう話は本人に聞こえないところでやってくれよ」


 どっと疲れた声でおじさんが呟くと、二人は極まりが悪そうに明後日の方を向いていた。

 そんなメンバーたちの様子を見て「あっはっはっは!『テイマーちゃん』以外にも濃い面子が揃ってるな!」と大爆笑しているボクと同年代くらいの男の子。


 うちのチーム、これで本当にやっていけるのかしら?


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