表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十四章 公式イベントに向けて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

163/933

163 情報の認識

「(そっちの方はこれで良いとして……。あっちはそうとも言っていられないんですよね?)」


 チラッと見た先には相変わらずミノムシさんが空中にぶら下がっていた。


「くっ!このような辱めを受けるくらいならば、いっそ一思いに殺せ!」


 そしてこれは近付いてみたことで始めて分かったのだけど、何やら寸劇のような事を行っていますよ。


「(……思っていた以上に余裕がありそう?)」

「(一応、説明しておきますと、ああやってプレイヤーの方々のネタになるのも罰の一部ということになっています)」


 ノリノリでやっているように見えるんですが?本当に罰になっているのだろうか。

 しかもミノムシさんの言葉を聞いたプレイヤーの内、何人かは大ダメージを受けたように地面に膝を突いていたり、がっくりと項垂れていたり、おーあーるぜっとな体勢になっていたりしていた。


「ぐはっ!?や、やめろー。くっころは可憐な美少女だから絵になるんだ!」

「何を言う!勝ち気で強気な美女こそがベストマッチング!」

「涙目ようじ――」

「あ、消された。規約に引っ掛かりそうだったんだな」


 一部が趣向暴露大会となり、不適切発言を行おうとしたと判断されたプレイヤーが強制ログアウトされたりという事態まで巻き起こっている始末だ。


「何にしても無精ひげ満載で野太い声のおっさんには用がないんだよー!!」


 最終的にはミノムシさん全否定となっております。

 まあ、間違いなくネタ提供にはなっているようである。


「ぬう……。だが俺がいなくなったとしても、第二、第三の――」

「いや、運営側の人間が何度もルール違反をしちゃいかんだろ」

「あ、はい。そうでした。ごめんなさい」


 そして続いて別のネタ台詞を口走ろうとしたのだけれど、見ていたプレイヤーの一人から指摘を受けて素直に止めて謝っている。

 細かい内容はともかく、どうしてこんなことになっているのかという経緯についてはプレイヤーたちにも分かるようにしてあるようだ。


「(あのように、反省はしているのですよ)」

「(そう、みたいですねえ)」


 と、曖昧な言い方しかできないのは、未だにミノムシさんが何をやらかしたのかを聞いていないためだ。さすがにそれを知らずに判断することはできない。


「(と言う訳で、あのミノムシさん関連のことも教えてください)」

「(分かりました。ではまず、先ほども話題に上がった公式イベントへの『テイマーちゃん』参加の件からお話ししていきましょうか)」


 『銀河大戦』。

 記念すべき『OAW』における公式イベント第一回はプレイヤー同士で協力して行う陣取り合戦となる予定だ。実は『OAW』の元となったMMORPGとの合同イベントなのだけど、これについては当日ギリギリまで秘密にされる予定だとか。


 肝心の陣取りの方法についてはまだ公開されていないけれど、レベル差で何もできないということがないようにじゃんけんやサイコロ転がし(ダイスロール)のような運の要素が絡むものになるのではないかと予想されていた。

 圧倒的にゲームとしての歴史が長い『笑顔』のプレイヤーと入り混じってということになるのだから、この予想は恐らく的中ということになりそうだね。


 さて、前記したようにプレイヤー同士による協力が不可欠なシステムとなるためか、なんと『OAW』側のプレイヤーには参加資格が設けられていた。それが、


「(『異次元都市メイション』に移動可能なプレイヤーであること、なのです)」


 選別方法としては単純で、今ボクたちがいるメイションの『広場』から『銀河大戦』用の特設フィールドへと転送するようになっているのだそうだ。


「(は、初耳だったんですけど……)」

「(公式イベント情報には注意事項として記載していましたよ。まあ、かなりのプレイヤーが見落としているようではありますが)」


 それでも、これまでは特に大きな問題とはならなかった。

 それというのも、体験談などの鮮度の良い情報を入手できたり、プレイヤーメイドのアイテムを購入できたり、美味しい物を思う存分食べ歩きできたりするということで、新規プレイヤーのほとんどが『異次元都市メイション』へとやって来ることを第一目標としているからだ。


 逆に言えばそうではない人たちの場合、他のプレイヤーとの交流にそれほど価値を見出してはいないということになるので、今度の公式イベントのようなものにはそもそも参加をしないのではないかと考えられていたのだった。


「(そうした配慮もあって注意事項として記載するに止めていたのです。元々メイションの扱い自体が各プレイヤーのワールドとは直接かかわりのない追加コンテンツ的な立ち位置でしたから)」


 ところが、だ。ボクの場合はそうも言ってはいられない。

 なにせ運営の方から参加を要請していたのだ。条件を満たしていないから参加できないとする訳にもいかないのではないかと、会議では大揉めになってしまったそうだ。


「(あ、ちなみにこれが公式イベント情報を記したページのコピーとなります)」


 アウラロウラさんがどこからともなくぺらりと取り出した一枚の紙を受け取って、中を見てみると……。

 うわあ。中盤あたりにデカデカとしかも派手な色合いと字体で『注意事項!!』が書かれておりますよ。


「(これを見落としていたとは……。迂闊(うかつ)だとか注意力散漫くらいでは言い訳にもならなさそう……)」


 これを見ておきながら「知らなかった」と言い張ったとしても、意図的に無視したと断定されてしまうのがオチだと思えるほどだよ。

 はっきり言ってボク自身、どうして気が付かなかったのかと頭を抱えたくなってしまった。


「(情報の認識については人体システムにも関連してくることなので、この点をこれ以上掘り下げるつもりはありません。ワタクシたち運営側の対策としましては、週明け早々に各プレイヤー宛に再度この公式イベント情報を送る予定となっています)」


 細かく言うと、ボクの参加について告知することのついでに、公式イベントの情報に目を通してもらえるように仕向けることになりそうだという話だった。


「(ご、ご迷惑をおかけしました……)」

「(いいえ。最終的にリュカリュカさんを特別扱いせずに、自力でメイションにやって来るのを待つと決定したのはワタクシたちの方ですので、あまり気に病まれませんように)」


 そう言ってフォローしてくれたけれど、AIであるアウラロウラさんですらあの失言をしてしまったくらいなのだから、他の運営の人たちも相当心配に思っていたことだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ