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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十四章 公式イベントに向けて

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160 異次元都市案内

 メイションの街の形を分かり易く説明すると、三つの通りで南北二つの広場を結んでいる、ということになる。


 まず先ほどまでボクたちがいた前広場――地図上では南側の広場となります――だけど、ど真ん中に噴水が建てられていることもあって『噴水広場』と呼ばれているようだ。

 ただ単に『広場』と言われると、もう一つの街の奥にある広場を指すことの方が多いのだとか。


 『噴水広場』はログイン時の出現ポイントにも設定できるため、待ち合わせによく利用されている。

 その性質上いわゆるリア充な人たちに遭遇する機会も多くて、「爆発しろ!」とか「もげてしまえ!」という雄叫びを上げる人が名物となっている、らしい。

 うん、嫌な名物だよね。ボクもそう思うよ……。


 対して奥にある『広場』にはアップデート情報などが書かれた掲示板が据えられていて、運営からの公式の話題を提供する場となっているようだ。

 ちなみにこちらの方が広く設定されており、アウラロウラさんによると「ライブでイベント情報の告知なども行うようにしたい、という狙いもある」という話だった。

 言い換えれば、現状ではそこまで利用できていないということでして。運営側の今後の課題だね。


 さて、街の説明に戻ろう。三つの大通りの内、真ん中にあるのが通称『屋台通り』だ。読んで字のごとく生産系の人たちを中心に、プレイヤーが作った様々な物が売られている。

 ここまでで気が付いた人もいるだろうけれど、今ボクたちが歩いているのもこの『屋台通り』だったりします。


 屋台というお店の形態のためなのか、値引き交渉が行われるのが当たり前という風潮なのも特徴の一つだ。

 が、そういうことが苦手な人のために、屋台には各商品のこれまでの平均価格などを掲げなくてはいけないようにもなっている。

 店を構える側としては、とりあえず変に気負わずに気楽に覗いてみて欲しいという雰囲気であるらしい。


 素材の売買も可能であり、プレイヤー間でクエストの真似事のような事も行えたりする。馴染みの相手を見つけては素材を提供し、安く装備品やアイテム類を作ってもらうのもメイションでの楽しみの一つとなっているようだ。


 だが、しかし!


 メイションでの一番の楽しみと言えば、食なのです。

 これを除いて他にはない。


 なんとメイションを訪れる理由を問うたアンケートにおいて、運営によって行われた公式のものだけでなく、個々のプレイヤーが勝手に行った非公式のものでも堂々の一位を獲得しているほどだ。


「カロリーも脂肪も気にしないで好きなだけ食べられるんだから、食に貪欲になっても仕方ないよな!」


 というのが大半の意見です。これにはボクも賛成の一票を入れざるを得ないね。


 そして、そんな食べ門関係のお店が集まっているのが東の大通り、通称『食道楽』だ。

 こちらはちゃんとした店舗形態の店が多いのも特徴の一つ。一部屋台も出ているけれど、彼らも最終的にはお店持ちを目指しているのだとか。

 逆に店舗にこだわらない人たちは『噴水広場』や『屋台通り』で出店しているそうだ。


 それと、先ほどは量についてばかり言及していたけれど、逆にだからこそと質にこだわった所も多い。

 メイションでは本編で確保できる食材以外にも、リアルの食材のほとんど全てをゲーム内通貨(デナー)で購入することができるようになっていた。

 そうなれば当然、多種多様な料理が出回るようになる訳で。


 さらにプレイヤーの中にはリアルで料理人をしているという人もそれなりにいるらしく、あちらでは食べる機会の少ないようなオサレな高級料理を廉価で食べることができるお店もあるのだとか。

 要予約だけどついでに基礎的なマナー指導まで行ってくれる所もあって、そのお店は連日大繁盛しているそうな。


「おすすめの料理って何かあります?」


 ワクワクしながら尋ねると、猫さんの目がキランと光ったような気がした。

 そしてその直後に、それが気のせいではなかったことを思い知ることになる。


「そうですね……。色々ありますが、最近は『カツうどん』が人気でしょうか」

「か、カツうどん、ですか……?」

「はい。『テイマーちゃんの冒険日記』で登場したこともあって、あちこちの店で提供されるようになっていますよ」


 おおう、まぢですか。マジみたいですね。アウラロウラさんの目を見れば分かるよ……。

 いたずら成功でしてやった感満載のドヤ顔がちょっぴり腹立たしいね! いつか驚かせ返してやろうと心に誓うボクなのでした。


 余談だけど、ゲーム内通貨とはいえ有料なので、破産やたかり防止のためのチェック機構なども完備されているという話だ。


「ワタクシたちとしてはあまり嬉しくない話ですが、メイション内での態度からいじめ等が発覚したこともあります」


 ある意味こちらはリアルよりも監視体制が厳しいために起きていることで、一種の社会現象とも言えるのかもしれない。

 アウラロウラさんは言葉を濁していたけれど、実はVRでの行動が元で詐欺などの犯罪が発覚したという事例は少なくなかったりする。

 特に不特定多数と接触できて、なおかつ経験の少ない若年層が多く利用しているMMORPGではその傾向が強いのだ、と以前どこかのニュースで目にしたことがあった。


 まあ、ある意味夢を売る職業な訳だから、いくら社会貢献に寄与しているとはいっても、それが犯罪摘発のきっかけとなると素直には喜べないものがあるのかもしれない。

 揚げ足取り的にイメージが悪くなったりもする可能性もあるだろうしね。


 おっと、すっかり話が横道にそれてしまった。大通りである『屋台通り』を歩いているはずなのに、横道を進むとはこれいかに。


 ……コホン。

 えー、残る西の大通りですが、こちらはプレイヤーたちのお住まいが立ち並ぶ一角となります。通称はそのまんまな『居住区』。

 ゲーム本編側だけじゃなくこちらにも拠点が欲しいと考える人は結構多いみたい。ボクの場合は『猟犬のあくび亭』があるし、メイションに知り合いもいないので当面は必要がなさそうな気がするね。


「さて、見えてきましたね」


 アウラロウラさんの言葉に従って道の先を覗いてみると、一塊になった人だかりと、なぜだかぶらんと吊るされたミノムシがいたのだった。


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