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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十三章 ここはどこだ?

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154 目指すべきもの

「だから俺としては一極集中ではなく、手札を増やすような方向で考えるべきだという方に一票だな」

「手札を増やすかあ……。でも、器用貧乏になって決定力を欠くことにならない?それに何より、おじいちゃんみたいにあれやこれやの武器に手を伸ばせるほどの余裕はボクにはないと思う」


 様々な場面に対応できることが大切だというのは理解できるけれど、その結果戦力にならないようでは意味がない。

 逆に言えば、それを両立できているからこそおじいちゃんは<オールレンジ>としてこのアンクゥワー大陸全土に名を馳せているのだ。


「……どうやらリュカリュカは勘違いをしているようじゃぞい」

「え!?ボクが勘違い!?」

「パーティーの全員が同じように戦果を上げる必要はないんだぞい」


 ゾイさんの一言にドキリと心臓が跳ね上がったように感じた。


「前衛には前衛の役割があって、後衛には後衛の役割があるんだぞい」


 ……ああ、そうか。

 ボクは戦闘面でミルファやネイト、それにエッ君やリーヴに置いて行かれそうだと思っていたのか。だからこんなにも焦っていたんだ。

 どこか居座りが悪くて落ち着かなかった感情が、すとんと腑に落ちたように感じられた。


「ふむ。ゾイの爺の言い分に乗っかるなら、お前だって重要な役割を果たしているんだぞ」

「ボクが?」

「おう。パーティー内のお前の立ち位置というのはな、要するに指揮官として仲間を動かす場所なんだよ。戦場を把握して味方に指示を出す大切な役回りだ」


 ええと……、そんなことをしていたつもりは全くないのだけれど……?


「どうやら無自覚だったみたいだぞい。恐らくはテイマーとして常日頃やっていることだったからだと思うぞい」


 言われてみれば、エッ君やミルファに注意したり、リーヴにお願いしたりというのは日常的にやっていることではあるね。

 ……ん?うちの子たちの話のはずなのに、なんだか一人紛れていたような?


「だが、そういうことならやはりリュカリュカは切れる手札を増やしておく方面に進むべきだと思うぞ」

「必要なところに手助けに入れるように、ということだぞいな」

「ああ。リュカリュカのテイムモンスターもそうだが、『エッグヘルム』の嬢ちゃんたちは筋が良い。今のところ自分の判断に加えてリュカリュカの指示で動いただけで敵を倒すことができている。だが今後、強い魔物と接敵した時にはそれだけでは通用しないかもしれない」


 例えばリーヴの防御が押し込まれてしまうとか、エッ君やミルファの遊撃を易々といなされてしまうとか、向こうの攻撃がネイトの〔回復魔法〕や〔補助魔法〕の効果を上回ってくる等々、考えられる要素はいくつもあるとのことだった。


「常に万全な状態で敵と相対することが理想であり、そうできるように努めていくべきではあるが、実際のところそう上手くはいかないものだからな。次善の策、さらにその次の手を用意しておくことは必要だぜ」

「それが、ボクの役割で、手札を増やす理由ってことなんだね」

「そういうことだぞい。一人では負けてしまう状況を、リュカリュカが加勢することで引っ繰り返すということだぞい」


 その分「パーティーの要となるボクに負担が集中することになる」とおじいちゃんたちは付け加えていたけれど、まあ、そのくらいは何とかなるのではないかと思っている。

 それというのも、うちの子たちを筆頭になんだかんだ言ってボクの仲間たちは皆負けず嫌いだからだ。

 ボク一人が活躍するのを指をくわえて見ているだけのはずがない。すぐに追いつき追い越そうとしてくるだろうから、結果的に負担が集中する期間というのは短くなると思うのだ。


 今だっておじいちゃんたちの言葉に触発され、エッ君は「負けないもん!」という態度を隠そうとはしていないし、リーヴだって物静かにしていながらも気炎を上げていた。

 いや、ホントこれ、置いて行かれないようにするのが大変そうだわ。


 さて、成長させるべき方向性が見えたところで何なのだけど、実はまだ肝心な問題が残されたままだったりする。


「でも、おじいちゃん。さっきも言ったけど今から新しい武器に手を出す余裕なんてないよ」


 二つの属性魔法はともかく、物理攻撃の方は〔槍技〕一つだけでも満足のいく状況とはなっていないのだ。


 ちなみに、使用しないままになっていた技能ポイントを二つ使ってなお熟練度は六十一。

 一番高い〔風属性魔法〕の七十六に比べると十五も劣っていたりする。


 これで新しく別の武器の技能に手を出したところで、持て余してしまうのが目に見えていた。それ以前に、技能の習得ができるかすら怪しいところでもあります……。いくら有用だとしても、そのために大量の時間を注ぎ込むことはできないもの。


「そこは今ある技能で対応できるように考えていくしかないだろうな。そもそも近接系の武器というのは扱い方次第では化けることもあるもんだ。例えば盾代わりに剣の腹側で矢を弾いてみたり、鈍器代わりにぶん殴って気絶させたりという具合だな。……まあ、下手な使い方をすれば即破損することになるんだが」


 武器も道具の一種である以上、意図していない扱い方をすれば壊れてしまうのは当然ということのようだ。おじいちゃんのお話は続く。


「だが、逆に考えればだ。それらを本来の機能として組み込んでしまえば、問題ないということになる」


 さっきの例でいうと、剣の刀身の中心部分をわざと肉厚にして頑丈にするという感じだろうか?

 ……重くなるという欠点はあるけれど、有りといえば有りなのかも。


「ほうほう。つまりディランはあらかじめ多彩な機能を有した武器を用いればいいと考えている訳だぞいな」

「でも、そんな都合の良い物がありますか?」

「ある。長柄の武器ということで、ハルバードなんかはどうだ?」

「ハルバード?」


 聞き覚えはあるけれど、いまいちはっきりした形が思い浮かばなかったのでゲーム内用語辞典で検索してみることに。

 あっという間に表示されたイラストによると……、


「えっと……、もしかして長柄の武器で先に槍とか斧とかが付いているやつですか?」

「ちゃんと知っていたようだな」

「一応、クンビーラのお城とかで見たことがあったから」


 これは本当の話で、城門とかの警備に当たっている騎士さんたちが担いでいたのだ。

 見栄え重視の細かな装飾が施されていたので、本来は実戦用というよりは儀礼用だとか式典用として作られたものだったのかもしれない。

 まあ、それはともかくとして。


「確かに多機能そうだけど、すっごく扱い辛そう……」


 槍の『突く』に斧の『斬る』以外にも、斧の反対側に突起とかが付いていることも多いようなので、それを使って色々とできる、らしい。


 これはまた、とんでもないものが飛び出してきたのかもしれない。


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