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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十三章 ここはどこだ?

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152 才能と努力

PV30万人突破! ……できていたら嬉しいな(笑)。

この前書きを書いている時(3月30日)には29万9300人を超えていました。さて結末やいかに!?


あ!ブックマークの方は500人を超えている!?(減っていなければ)

ありがとうございます!


そろそろ「いいかげんにしろ!」と怒られそうなので本編の方へどうぞ!

「防御力を無効できるとなると、上手く使えばボクでも大ダメージが期待できるかも」


 リザードモールを撃退して、再び東の町へと向かって進む馬車の荷台の上でボクは期待に身を震わせていた。

 ちなみに正座は早々に解除しています。硬い木の板と振動に耐え切れなかったので……。


「ふうむ。リュカリュカは魔力値が高いから、一般的なファイターとは違ってこの技を主力にして戦うことができるかもしれないぞい」


 ゾイさんによると、物理攻撃主体のファイターやシューターだとMPに余裕がないため切り札的な使い方しかできないのだそうだ。


「それなら『エッグヘルム』の他の嬢ちゃんたちだって同じじゃないか?」


 確かにおじいちゃんの指摘の通り、ネイトは回復や補助系中心な魔法型の完全後衛タイプだし、ミルファだって光と雷の二属性持ちだから魔法戦士という枠に入れることだってできる。物理一辺倒の人たち比べれば、魔力値は高くMPに余裕があると言えるだろう。


「その分MP残量の管理には気を遣う必要が出てくるけど、高威力の物理攻撃手段が手に入れば戦術的にも戦略的にも取れる幅が広がりそう」

「まあ、あえて言うなら、かなり熟練度を上げないと習得できないのがネックだな」

「……なんですと?」

「【マルチアタック】や【マルチヒット】の一歩手前の闘技という位置付けなんだから、習得が難しくて当然だろう。人によってはマスター直前になってようやく習得できたという話もざらにあるくらいだぞ」

「おーう……」


 〔剣技〕をマスターしているミルファはともかく、ボクやネイトにはなかなかに遠い道のりであるようだ。ショックのあまり荷台にぱたりと倒れ伏すと、慌ててエッ君とリーヴが介抱しようとしてくれる。

 なんていい子なんでしょう!うちの子たちマジ天使!


 それに比べておじいちゃんたちときたら、「何をやっているんだ」と言わんばかりの呆れた視線で見ているだけとか、冷たいにもほどがあると思うよね。


「突っ込まれるのが前提のわざとらしい倒れ方をしたくせに、何を言ってやがる」


 あら?心の中で呟いただけのつもりが声に出てしまっていたみたいだ。おじいちゃんの一言にバツが悪くなってしまい、思わず「おほほほほ……」とこれまた舞台じみた誤魔化し笑いをしてしまうボクなのでした。


「それはともかくとしてですよ。おじいちゃんが使用した闘技については分かったけれど、だからといって地面を通して狙った相手にだけ攻撃するなんて離れ業ができるようになるものなの?」


 むくりと起き上がり、新たに浮かんできた疑問について尋ねる。

 決して分が悪くなったので急いで話題を変えようとした訳ではありませんヨ?


「あんな無茶苦茶な技が誰にでも使えてたまるものかい」


 疲労感たっぷりな口調でそう答えてくれたのはゾイさんだった。いつもの口癖を付ける余裕すらないといった雰囲気から察するに、あれは相当に規格外なものだということになりそうだ。


「そもそも【クラッシュ】というのは鎧や盾を通して相手の体に直接衝撃を与えるというものだ」


 つまり、あの時のおじいちゃんは地面をリザードモールの鎧として見立てていた、ということらしい。


「その発想自体はそれほど奇抜というものでもない。成功したかはともかく城壁を鎧に見立てたという話も残っているくらいじゃ。だがな、本来衝撃を通せる距離なんてものはたかが知れているものなのだ」


 熟練の技能持ちの人ですら分厚い鎧や盾を一枚通すのが精一杯なのだという。


「それをこいつは平然と何メートルも衝撃を通してみせやがるんじゃ」


 <オールレンジ>という職業は、近・中・遠の全ての武器を使いこなせるだけで成れるものではなかったということのようだ。

 つまりは、どんな場所にいようとも全て射程内(オールレンジ)であり、致命打を与えることができるがゆえの特別なものだった。


「別に平然としてる訳じゃねえぞ。距離が遠くなるだけMPだって余分に使うし、長時間集中する必要もある」


 おじいちゃんに言わせると「相応の対価を支払っている」ということになるのだろう。が、


「普通は対価を支払ったとしてもできるものじゃないということですね」

「その通りだぞい。リュカリュカは理解が早くて助かるぞい」


 ごくごく身近に天才気質の人がいたものですから。そうした持たざる者の気持ちというのは理解できてしまうというのが本当のところだ。

 それにしても、努力だけでは越えることのできない『才能の壁』とでもいうべきものはこちらの世界にも変わらずに存在しているらしい。


「あのなあ、言っておくが俺だってここまでできるようになるために血のにじむような修練を積み重ねてきたんだからな」

「おじいちゃんが留まることなく常に努力してきたってことは良く分かってるよ」


 努力だけでは決して越えられない『才能の壁』だけど、反対に才能だけで越えられるほど甘いものでもない。

 才能とそれを高めるためのたゆまぬ努力。両方が揃って初めて乗り越えるための足掛かりが見えてくるものなのだ。


 よく天賦の才能を宝石の原石に例えたりするけれど、あれは言い得て妙だと思う。どんなに優れていたとしても磨いて、手を加えてやらなければ相応しい輝きを得ることはできないし、放置してしまうとすぐにくすんで輝きを失ってしまう。


「大体、才能の上に胡坐をかいているような人が一等級冒険者になって名を轟かすことができますかって話だよ。冒険者はそこまでお気楽にやれるものじゃないでしょ」


 駆け出し向けの街中でのものを除けば命がけの依頼ばかりとなる。生半可な覚悟では――存在自体が――淘汰されてしまうはずだ。


「……すまなかったの。年を取ると考え方が悲観的になっていかんぞい」

「いえいえ。愚痴りたくなる気持ちの方も良く分かりますから」


 頭を悩ませたり体を酷使したりと散々苦労してようやくこじ開けた扉を、後から来て軽々と開ける様を見せつけられてしまうようなものだ。

 どんなに頭では理解していようとも感情が追いつかないことだってある。つい恨み言が口を吐いてしまうという時だってあるだろう。


 ふと脳裏に幼い頃の記憶が浮かんでは消える。

 それはとてもとても苦くて。泣いて涙と共に流してしまえればどんなに楽だろうかとすら思える。でも、だからこそ捨てる訳にはいかない。


 ボクの内心を感じ取ったのか、エッ君が不安そうにすり寄って来ていた。見ればリーヴも「心配だ……」と体中で表現している。

 そんなうちの子たちの仕草に心の奥から温かな気持ちになってくる。


「それに、後々になってから才能を開花させることだってできるはずだから」


 ニカッとおじいちゃんとゾイさんの二人に笑いかける。

 そう。ないなら生み出してやれば良いのですよ。


〇防御力無効の闘技についての補足(蛇足?)

ミルファは〔剣技〕をマスターしているので【ブレイク】を使用することができますが、騎士たちに混じって訓練を行っていたので切り札的な使い方のイメージが固着してしまっています。

また、〔細剣技〕の熟練度が上がることで、後々には刺突系の【ペネトレイト】も習得することができるようになる、予定です。


ネイトの所持している〔杖棒技〕は打撃系統の武器となるので、習得できる闘技は【クラッシュ】となります。


それと、本文未登場ですが弓矢などの遠距離物理攻撃にも同様な技は存在する、という設定となっています。


ちなみに、エッ君とリーヴの所持している技能の中にも防御力無効の闘技は存在しています。

リーヴは熟練度がまだ目標値に到達していないため未収得ですが、エッ君は対エメラルドサーペント戦で繰り出した【流星脚】がこれに該当します。

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