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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十三章 ここはどこだ?

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150/933

150 圧倒的強者

 イベント『大地からの刺客』は生息している(ポップする)魔物が極端に少なくなる事をトリガーとして発生するものの一種だ。

 類似イベントが『森からの刺客』『山からの刺客』『荒野からの刺客』『河からの刺客』『海からの刺客』『街!?からの刺客』と複数あるため、プレイヤーからは『刺客シリーズ』などとも呼び表されることもある。


 また、シリーズのうちのどれが選ばれるかはある程度偶発的に決まるという設定から、「実はランダムイベントなのではないか?」とも言われたりもしているのだが、「イベント発生のインフォメーションが流れるから通常イベントだ」という反論もあり、掲示板等で定期的に論争が繰り広げられる題材の一つともなっていた。


 と、この辺のどうでもいい事情はさておきまして。この『刺客シリーズ』のイベントには、他にはないある特徴が備わっていた。

 それが「プレイヤーを含め同行しているメンバーの内で最もレベルが高い者に合わせた敵が出現する」というものだった。つまり、リザードモールのレベルが異様に高かったのは、おじいちゃんやゾイさんのレベルに合わせた結果だったのです!


 もしも、いつもの『エッグヘルム』のメンバーであれば、恐らくはレベル十前後の敵が登場することになったはずだ。

 それならボクたちでもお荷物にならず、戦闘に参加することもできただろうに……。


 まあ、これらのことを知ったのは全てが終わってからのログアウト後のことなので、後の祭りというかどうしようもなかったのだけれどね。

 それに、仮にそのことが分かっていたとしても行く先がヴァジュラに決まっていたから、やはりミルファたちは連れては来られなかったように思うし。


 ちなみに『刺客』という名称ながら、闇討ちしてくるような魔物はおらず、精々が今回ボクたちが受けた奇襲くらいなものだそうだ。

 いずれにしてもあらかじめ近くに魔物がいるということは感知できるようになっているという話だった。


 馬と馬車を守るようにその前に立ち、リザードモールと向き合う。どちらも借り物なので、壊されるのは元より傷つけられるのもアウトなのだ。


 そして、先手を取ったのは数多の属性を習得して使いこなす魔法攻撃のスペシャリスト、ゾイさん!……ではなく、なんと魔物側だった。


「ガアア!」


 と叫ぶと同時に鋭い岩の塊が生み出され、一直線にこちらへと向かってくる。土属性魔法の【アースドリル】だ。


「予想の範疇だぞい。【ウィンドニードル】!」


 が、それは後の先を狙ったゾイさんの読み通りだったらしい。相克属性であり、なおかつ相克形態でもある無数の風の針が岩塊を粉みじんにした上で、リザードモールの硬い体に細かな傷を付けていった。

 まさか押し負けるだけでなく被害を受けるとは思ってもみなかったのだろう。「グルルル……!」という魔物の唸り声には苛立たしさが加わったように感じられた。


「まだまだいくぞい。【ライトニードル】!【ライトボール】!【ライトドリル】!」


 相手の虚を突いて動きを止めたことで攻め時だと判断したのか、複数の魔法陣を煌かせてゾイさんが弱点である光属性の魔法で追撃を行う。

 しかも単に一斉に撃つだけではなく、逃げた先に追撃するように少しずつ着弾のタイミングをずらしているという念の入れようだ。見る見るうちにHPのゲージが減少していく。


「こりゃまた高等技術の大盤振る舞いじゃねえか」

「うわあ……」


 呆れたように呟くおじいちゃんに、間の抜けた相槌を打つのが精一杯なボク。一方でうちの子たちは真剣な雰囲気でその光景を見守っていた。

 どうしよう、うちの子たちなら本当にそのうち再現してしまいそうだ。ご主人様(テイムマスター)として見捨てられないように、ボクもしっかりと訓練しないといけないかも。


「ギョギャア!」

「逃げた!?」


 距離が開いたままではいずれ押し負けると思ったのか、リザードモールは大きく一声を張り上げると、その能力を用いて地面の下へと潜っていく。


「ふむ。確かに土の中であれば魔法攻撃の的にはできんぞい。なかなか冷静で的確な判断だぞい」

「ゾイさん、感心してる場合じゃないですってば!?」

「安心しろ。例え土の中だろうと今度は〔警戒〕技能で居場所を把握できている」


 おじいちゃんに言われて〔警戒〕に集中してみると、確かにそれらしい反応があるのが分かる。


「でも、攻撃できないことに変わりないのでは?それに〔警戒〕にばかり気を取られていたら、身動きができなくなるよ」


 初撃での地面爆散のようなことをされたら、逃げるに逃げられないのではないだろうか。


「ほっほ。この距離であれば時折片手間に意識を向けるだけで十分だぞい」

「ゾイの爺の言う通りだな。それに地面に潜ったくらいで逆転されるほど俺たちは柔じゃなければ、手も足も出せないほど無能って訳でもない」


 ニヤリと獰猛に口角を上げる。その横顔に、獲物を捕らえる直前の狩りの成功を確信した猛獣の姿が重なって見えた気がした。

 そしておじいちゃんはべらぼうに巨大な金属製の棍棒を取り出した。


「ほっほっほ。大槌(モール)モグラ(モール)を退治するとは洒落が効いているぞい」

「ははっ!確かにな!」


 分かり合っている二人に対して、置いてけぼりのボクたちです。一体何がどうなるというの?


「リュカリュカよ、よく見ておくことだぞい。どうしてディランが<オールレンジ>などという特別な職に就いているのか、これからその一端が分かるはずだぞい」


 そんな疑問を感じ取ってくれたのか、ゾイさんがそう教えてくれる。……けど、やっぱり何のことだかさっぱりなんですが?

 勉強するといった手前、しっかりと観察はさせてもらうけどさ……。


「さあて……、地面に潜った程度で耐えられるか試してやろうか!」


 言うや否や巨大な金棒を持ち上げるおじいちゃん。その瞬間、彼の体から膨大な力が迸り始めた。

 おじいちゃんを中心に渦を巻くようにしていたそれは、やがて金棒へと吸い込まれるようにして収縮していく。

 同時に、不穏な気配を感じ取ったのかリザードモールが泡を食ったようにしてこちらへと近付いて来ているのが感じられた。


「おじいちゃん!」

「今さら慌てたって遅いんだよ!そおら、食らいやがれ!【クラッシュ】!!」


 ドゴン!


 鈍い音を立てて金棒が大地へと叩き付けられた。

 『OAW』内での話だけれど、こういう場合は普通水面に波紋が広がるように衝撃波が広がっていくものだ。

 が、今回に限ってはそのようなことにはならず、叩き付けられた力はそのまま地面の中へと侵入すると、一直線にリザードモールへと殺到していく。


 やがて、ズン!と重苦しい音と共に軽い振動が起きたかと思うと、余すことなく衝撃をその身に受けたリザードモールがぷかりと浮かび上がってきたのだった。


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