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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十一章 お城での一夜

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125 仲間と一緒に2(雑談回)

 酒場『休肝日』に集ったプレイヤーたちの雑談は続く。



「話を『英傑召喚システム』に戻すけど、俺としては登録料がリアル課金じゃなくてゲーム内通貨(デナー)になっていたことが驚きだったな」


「一部のやつらが『傭兵登録料』と『傭兵雇い料』とか言ってた」


「言い得て妙?」


「分かりやすいし、通称として使われそうだな」


「その内公式用語になるかもね」


「だからといって何か貰える訳でもないんだが」


「それを言ってやるなよ。まあ、そういうことに褒賞を付け始めるときりがないからな。成りすましも出てくるだろうし、それを口実に運営にアイテム寄越せとせびるやつが出てきかねない」


「どこにでも品性のないやつは湧いてくるからなあ……」


「まあ、それはそれとして、だ。金額はどのぐらいになると予想されているんだ?」


「まず『傭兵登録料』の方は、指名されるようにできるかどうかで異なってくるみたいだ。プレイヤー相手に傭兵プレイみたいなことがしたいのなら、余分に金を払えということらしい」


「レベルとかいくつかのキャラクターの情報も出さなくちゃいけなくなるから、その保護のために必要な経費という扱いみたいだね」


「ロールプレイ用の設定か?」


「んー、そういう面もあるけど、それだけじゃないってところかな。手伝う側が一方的に搾取されないようにする保険の意味合いもありそう」


「ゲーム内通貨だけど一応金を払っているんだから、運営しっかりやれ!って文句を言えるようにしているってこと?」


「ん?んー……。まあ、そういうイメージで良いんじゃない」


「適当だな、おい!?」


「だって、私たちが勝手にしている予想だもの。本当は全然違う可能性だってあるのよ」


「あー……。納得」


「で、結局いくらになるんだ?」


「一番多い予想が普通の登録で千デナー。指名アリの場合で一万デナーだな」


「『雇い料』の方はそれこそピンからキリまでバラバラになりそうだと言われてる。知り合い価格で受けられるようにするかもしれないから、それこそ最低は百デナーくらいになるんじゃないかって話だぜ」


「雇われる方のプレイヤーによっては自分のいる地域以外の場所に行けるかもしれないから、意外と人気が出るシステムになるかもしれない。ただ、自分の行けない地域でもホストプレイヤー準拠になっているから、特別レア度が高いアイテムは取れなくなっているらしい」


「そりゃそうだわな。向こうだってファーストエリアな訳だから、いきなりレアアイテムが取れるはずがないか」


「特産品レベルのものは入手できるかもしれないけど、それなら『異次元都市メイション』で事足りるという訳か」


「今以上の貴重品が欲しければ、さっさと次のエリアに行ける方法を見つけろっていう運営からのありがたいメッセージだな」


「あ、ありがたくねえ……」


「というか、本当にどうやったら別の地域に行けるようになるのかしら?最近、掲示板めぐりが日課になりつつあるわ」


「みーとぅー。あと公式の関連サイトな。……あ、『テイマーちゃん』の日記が最新号がアップされてる」


「まじで?そういえばテイマーちゃん、NPCを仲間にしたんだったよな?クンビーラの貴族だっけ?」


「公主の従姉妹に当たるミルファシア嬢だな。宰相の娘でもあるらしい。金髪縦巻ロールの美人さんだぞ。ほれ」


「お、おおー!めっちゃ美人だな!」


「でも彼女、既に婚約者がいるみたいだけどねー」


「なん、だと……」


「クンビーラ配下貴族の筆頭、コムステア侯爵家の嫡男だって。こっちはこっちで東欧系と中東系が入り混じったハンサムだわ」


「くっ!まさか『OAW』でも「※ただしイケメンに限る」を眼にすることになるとは!」


「その使い方はどうなんだ?」


「違うと思う」


「用語は用法を守って正しくお使いください」


「細けえことはいいんだよ」


「お前、実はそれが言いたいだけじゃね?」


「はいはい。いつまでもバカなことを言っていないで」


「ば、バカっていう方が……、いえ、何でもありません」


「敗北宣言するの早いな!?」


「女性陣に口で勝てる訳ないじゃん……」


「うっ……。忘れ去りたい過去が蘇ってくる!あれは小学生の時……」


「おい、飛び火してるぞ!?」


「しかも何か語りだしたし……」


「もう、放置で良いんじゃない」


「そうだな」


「賛成」


「ちょっと待って!ねえ、もう少しは気にかけようよ!?」



 これ以上は碌な話が聞けそうにないと、フローレンスは次に耳を傾けるテーブルを探し始めたのだった。



「変な顔をしてどうした?何か考え事か?」


「こういう時は難しい顔とか言え。というか変な顔じゃねえよ!」


「そうだな。頑張って美形のアバターにしたもんな」


「バラしてやるなよ。でもリアルそのままのやつなんていないだろ。キャラメイクの時にも身バレ防止のために多少は変更してくれって言われるくらいだし」


「まあな。それで何の話だったっけ?」


「こいつが変な顔――」


「ループ罠止めろ。で、考え事していたようだけど?」


「色々言いたいことはあるが、今は止めといてやる……。ところでお前ら、テイマーちゃんの最新号は読んだか?」


「読んだぞ。NPCのパーティーメンバーが増えていたな」


「ミルファちゃんとネイトちゃんだったか。二人とも美人だよな。撮影者が例の猫妖精になっているのが、まあ、あれだけど……」


「しかもミルファちゃんってレベル十なのに、〔剣技〕をマスターしているんだろ。とんでもない強さだぞ、それ。騎士相手に戦えるっているのも本当なのかもしれない。テイムモンスターの二体と合わせて前衛が整ったな」


「ネイトちゃんの方はヒーラーだろ。テイマーちゃんが〔調薬〕技能持ちだし、回復面でも盤石になった感じだぜ」


「そのネイトなんだけどな。俺のワールドでは他のセリアンスロープの仲間と『白狼の誉れ』っていうパーティーを組んでいたはずなんだよ」


「おおう。なかなかカッコいいパーティー名ではないかね。封印したはずの左手が疼いてきそうだぜ」


「それは封印したままにしておけ」


「お、俺も封印していた額の第三の目が――」


「それは元々ないから」


「アホ二人は放っておくとしてだな。それは単にプレイヤーごとの行動でワールドに変化が出ているだけじゃないのか?『全てのイベントを熟せる』っていうのも、初期段階では可能ってだけの話だし」


「『OAW』内でも時間経過の概念はあるからな。それが理解できずに、発生させていないのにイベントが起きているって騒いでいたやつもいたけど」


「あー、あれな……。確かに運営の説明不足ではあったけど、一度のプレイで全部のイベントを発生させられるはずがないって普通は分かるだろ。VR以前のゲームからしてそうだったんだから」


「まあ、世の中にはとんでもないバカもいれば、凄まじい天才もいるものだから」


「バランスが取れているってことだな」


「微妙に嫌な仕組みだな、それ」



 さて、自分のワールドではどうなっているのか?

 ふと気になるフローレンスなのであった。


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