表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十章 暗い踊り

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

113/933

113 続、対策会議

 あれは、いつのことだっただろう?


「例え目立った出来事がなくても、それは十分に成功だと言えるわ。だからこそ先生たちは学校行事を無難に終わらせようとするんだと思うな」


 そうだ。

 こう里っちゃんが語ったのは、中学最後の文化祭を終えて生徒会メンバー――とボク――で打ち上げという名のお疲れパーティーをした時だった。


 ギリギリになってからの先生たちやPTAによるまさかの横槍によって一部演目の中止が絶対視される中、我が従姉妹様の機転によって何とか全てを公開できたのだった。

 と、行事自体は無事に終わらせることができたものの、邪魔をされたという事実は消えないもので……。


 特にボクたちが通っていた中学では、文化祭は新旧二つの生徒会役員が合同で仕切ることになる唯一の学校行事だったため、三年生の生徒会メンバーの意気込みは大きかった。

 それにケチを付けられた訳だから、本人や周囲の人が思っていた以上にストレスがたまることになってしまっていたようだ。打ち上げも後半になってくると、そうした不満やストレスが徐々に噴出し始めて大愚痴大会になりそうだったところに、先ほどの里っちゃんの言葉が投下されたのだった。


 学校行事の時などはともかくとして、常日頃は先生方と一緒になって元気な生徒がハジケ過ぎないようにとか、やんちゃな生徒がヤ〇チャしないようにとか目を光らせておくのが生徒会の役割となる。

 学校側(あちら)の事情が薄っすら垣間見えたことで愚痴大会は収束し、後は楽しい打ち上げパーティーとなったのだった。


 懐かしい過去――と言っても、あれからまだ一年も経っていないのだけど――に浸っている間にも会議は進んでいたようで、「いかにブラックドラゴンが帰還した直後に攻撃されるのを防ぐのか?」ということが議論の中心となっていた。

 多少のトラブルが発生したとしても最後まで進めることさえできれば、式典等の行事は成功したことになる。これまでの動きから敵は少人数だということが予想されるので、成功する確率の高い方法を取るだろうと推測したようだ。


「前回、ブラックドラゴン殿を直に見た者たちの話によると、彼の方は思い込みが激しい上にかなり好戦的であったということです。攻撃を受けた場合、直ちに反撃を行う公算が高いかと思われます」

「例え街中からであったとしても、その攻撃の手が緩まるとは言い切れないところであるのではないかと予想しております」


 衛兵隊の総長さんに続いて騎士団長さんが意見を述べると、部屋のあちこちで頭を抱えたり、唸り声を発したりする姿が見られた。

 あのブラックドラゴンさんだ、頭に血が昇ってしまえば守護竜契約を結ぼうとしている都市が壊滅しかねないとしても関係なく反撃を繰り出してきそうな気がする。


 燃え盛る街並みを背景に、あちこちから聞こえてくる悲鳴や鳴き声をBGMにして高らかに吼えるブラックドラゴンの姿が容易に想像できてしまい、背筋が寒くなってくる。


 うん。何はともあれ、一番に防がなくちゃいけないのはこれだというのは間違いないね。


 それにしてもこの場に集まっている誰一人として、アラサーおじさんの道具がブラックドラゴンに通用するとは微塵も考えていないみたいだ。

 皆、ブラックドラゴンの攻撃を誘発させる餌としてしか考えていないらしい。

 まあ、ボク自身そうなのだけど、その安定の信頼性が哀れさを誘うよ……。


 ……おんやあ?

 でもこれって成功したならば絶大な効果が発揮されるのでは?


 ああ、いや、決しておじさんの道具が効くという意味ではなく、だ。

 もしもブラックドラゴンが操られているように見せかけることができたならば、クンビーラに潜り込んでいる敵対勢力の連中を残らず炙り出すことができるのではないだろうか?


 もちろんこれには彼の協力が必要不可欠となるから、問題となっている帰還直後の攻撃を防ぐか、発生させないことが前提条件となる。


 だけどここはゲームの世界だ。つまりプレイヤーであるボクを楽しませる世界と言い換える事もできるだろう。

 そんなボクが積極的に関与して行動するならば、ある程度はその要望に沿った展開となってくれるのではないだろうか?


 甘い考え?

 ご都合主義的?


 上等だよ。とかくリアルの世界はままならないことばかりで、理不尽が幅を利かせているのだ。

 ゲームの世界くらい狙った通りの展開であってもいいと思うのだ。


「あの、ちょっといいですか?」


 突然割って入るようになったせいか、それとも良い案が浮かんでこなかったせいなのか、それまで「あーでもない、こーでもない」と続いていた議論がぴたりと止まった。

 その際、揃って全員がこちらにグリンと顔を向けてきたのがちょっとだけ怖かったです。


 ドキドキと高鳴る心臓。

 もしかしてこれが、……恋?


 などとボケる余裕もなく、ボクはさっそく思い付いた案を披露することにした。

 最初は怪訝な顔をされていたが、話が進んでいくごとに笑顔の割合が増えていく。爽やかとは到底縁のなさそうな腹黒い物ばかりだったのが難点だけど。

 効果音にするならば、『ニヤリ』とか『ニタリ』という感じ。


「くっくっく……。リュカリュカ、そなたも(わる)よのう」

「いえいえ。公主様ほどではございません」


 定番の台詞を言って笑い合うボクたちに、周囲からも含み笑いが漏れてくる。

 ミルファにネイト、バルバロイさんたち若手代理組といった一部メンバーはこの展開についていけなかったのか、呆気に取られていたけれど。

 ネイトはともかく、ミルファたちはこれくらいで驚いていてはダメだと思うけどね。多少の悪巧みは貴族の(たしな)みだと思うのですよ。

 当然ボクに迷惑が掛からないのが大前提だけど。


「いずれにせよ、ブラックドラゴン殿の帰還直後以外での対策も考えておかなくてはいけないのだ。ならば、今のリュカリュカの案を元にこちらの行動指針を立てておくのも良いだろう」


 公主様の一言で方針が決まると、あれよあれよという間に対策が練られていく。


「ブラックドラゴン殿には我々の方から作戦を伝えることにしよう。どのみち会談の日程等を決めなくてはいけないからな。一度見事にしてやられた事のあるリュカリュカからの発案と言えば、無碍(むげ)に断るようなこともしないだろう」


 それであのブラックドラゴンが大人しく言う事を聞いてくれるのであれば、いくらでも使って下さいな。

 少し心配になりながらも、説明する時にボクの名前を出すことに了承しておいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ