3-10 より繊細かつ豪華
会議室で机を囲みながら、中央にある大型モニターを見つめる面々。
「やっぱ、この子いいね。うん、いいよ」
「清涼感があるのに華やか。それも甘いイメージか。カメラ映りもいいし、商品のイメージにはぴったりですね」
「全くの素人ってことで、写真撮影のときは最初は少し緊張していたようですけど、わりとすぐにいい笑顔が出るようになっていました」
「だったらすぐに撮影に入っても問題なさそうね」
「クライアントの意向もあるし、この子で決まりでいい?」
◇
「合格? 俺がですか?」
〈うんそう。ついさっき事務所に連絡があって、正式に決定ですって。おめでとう。忙しくなるわよ〜。CM撮影の日まで、もうあまり時間がないから、とにかく体調にだけは気をつけて。あとくれぐれも、髪型や髪の色は変えないでね〉
「はい。わかりました」
〈じゃあ、うちの事務所との契約も本契約に進めちゃうけどいい? CM契約の話も含めて、保護者の方にも連絡を入れておくわね〉
「はい。仕事のこととか全然分からないので、これからよろしくお願いします」
〈任せて。私が正式に結星くんの担当になったから、気になることがあったら何でも聞いて。じゃあ、また近いうちに連絡を入れます〉
潤さんとの電話を終え、スマホを置く。
《ポーン!》
《プリンクエスト「極上六角プリンを宣伝しちゃおう」その②「ドキドキオーディション!」をクリアしました。引き続き、その③「ワクワクCM撮影」が始まります》
いつの間にか手元に現れていた日記帳から、そんな声が響いた。声はしょっちゅう聞いていたけど、こうやって本体を見るのは久々かも。
ん?
「なあ、以前より模様が派手になってない?」
卵色の布地に金の箔押し。そこは以前と変わらないが、箔押しの模様がより繊細かつ豪華になった気がする。
《おかげさまで、以前よりバージョンアップしています》
「そうなんだ?」
バージョンアップと聞いて、なんとなくパラリとページを開く。
◆プロフィール◆
武田 結星
誕生日 8月30日 17歳
身長 181cm 体重 ?
私立 栄華秀英学園高校 3年生
家族構成:
父 武田 降星 39歳 会社員
母 武田 結子 41歳 会社員
妹 武田 結衣 15歳 高校1年生
両親は別居。父親は海外に滞在中。
▶︎
あっ。やっぱりちょっと背が伸びてる。結衣がちょっと小さくなった気がしたから、そうじゃないかなって思ってた。
父親は海外滞在中か。一度も会ったことがないのは通い婚のせいかと思ってたけど、今海外にいるわけね。そのうち、機会があったら一度会ってみたい。
ポチッと。
▼
保有スキル(日記帳所有者特典)
【青雲秋月】平常心を保つ
→NEW!【行雲流水】いつでも空行く雲や流れる水のような自然体を保つ
【暖衣飽食】暖かい服を着て、食べ物に困らない満ち足りた生活を送ること
【眉目秀麗】容貌が優れて美しいこと
【天資英邁】生まれつき才知が非常に優れていること
◆現在の作戦
【可惜身命】身体や命を大事にする
◆加護
【プリン神の加護】→NEW!【プリン神の祝福】
◆主人公補正インストール
【学校体操の王子様「華麗なマット運動」】
【視覚能力「スロー再生」】
【マリン王子「海遊び」】
【描画技術「恋の絵日記」】(日記帳)
【フィールド王子「魅せるサッカー」】
【シチュエーション王子「壁ドン!」】
【主人公読本「恋の指南書」】(日記帳)
【ゲレンデ王子「スキー滑走インストラクション・上級者コース」】
【ゲレンデ王子「スノボ滑走インストラクション・上級者コース」】
あれ? なんかいろいろ変わってるじゃん。
《先日のオーディションで経験値が貯まり、保有スキルが上位スキルに進化またはグレードアップしています》
「この【プリン神の祝福】っていうのは?」
《プリン普及への貢献度が上昇したため、加護から祝福に変化しました。これでよりプリン神のエネルギーをより多く使用することが可能になります》
「そのエネルギーって、なんに使うの?」
《一言で言えば願望成就のためです。主人公補正のインストールや余所からの過剰な干渉を防ぐためなどにも使用されます》
ふぅん。主人公インストールは、これを見れば分かるけど。
「過剰な干渉って?」
《今いるこの世界は、多数の願望が集い重なり合った場所です。個々の願いが干渉し合いながらも均衡を保つことで存在していると言ってもいいでしょう》
えっ? それ初耳なんだけど。
「ここってそんな世界だったの?」
宿願の日記帳が連れてきてくれた不思議な世界。〈この世界を写し込んだ似て非なる隣の世界〉って、日記帳には書いてあった。
でも今の話だと、俺の願いだけじゃなくて、いろんな人の願いを折り合いをつけながら叶えてくれている世界だってことかな?
《そうです。しかし、ときにその均衡を崩すような、自己中心的でかつ人一倍強い願望を有する者が現れることがあります》
「その場合どうなるの?」
《世界の理においては、この世界の維持・均衡を保つことが最優先されます。ですから、この世界に属する神々は、そういった者による過度の干渉に対して、局地的な段階で適正レベルまで抑制する方向に働きかけます。そのために集めたエネルギーを使用します》
なんか。ファンタジックでよく分からないけど、この世界を安定させて守り維持するためには、神様系のエネルギーが必要になるってことなのかな。
《効率よくエネルギーを集めるために、今後もプリンクエストへのご協力をよろしくお願い致します》
「プリンクエストを猛プッシュしていたのは、そういう理由? なら、最初からそう言えばいいのに。分かった。協力するよ。俺たちのいるこの世界を守るためならやるよ」
《ありがとうございます。以前は認可範囲を逸脱し、保守要綱に抵触していたため、申し上げることができませんでした》
「じゃあ今は?」
《【プリン神の加護】が【プリン神の祝福】へグレードアップしたことにより、認可範囲が拡張されています。先ほど申し上げた内容であれば、話題にしても問題はありません》
「そっか。なんだかんだでいつも助けてもらってるし、俺にできることはする。だからと言って、全部引き受けられるわけじゃないけど。話せるようなら、なるべくその理由を教えて欲しい。納得すれば協力するから」
《はい。承知致しました。今後はそのように心がけます》




