5-01 家族のアルバム
大変長らくお待たせ致しました。第5部「家族のアルバム」を開始致しました。
本日は午前中の投稿になりましたが、次回からは夕方になると思います。
【思い出メーカー☆移うつるんです】
以前、このスキルを利用してアルバムを一冊作っている(参照:4-07 本日はお日柄もよくーーその前に)。
今それが目の前にある。
去年からこの世界で暮らし始めた俺には、当然のことながら、日記帳とプロフィール以外の「過去」がない。
でもそれじゃ困ることも出てくる。それをこのスキルが補ってくれるらしい。
「思い出メーカー」というだけあって、アルバム以外にも様々な「思い出の品」を作れるらしい。それも以前の俺の人生を参考にして。
面白そうだから、暇な時にでもやってみようかななんて思っていたのに、忙しかったせいですっかり忘れていた。
でも今は緊急事態。
ろくに中を見ないで本棚行きになったこのアルバムを、急遽確認しなければならなくなった。
なぜかって? それはさっき母さんから、こう告げられたからだ。
「近いうちに、日本に帰ってくるそうよ」
「帰ってくる? 誰が?」
「それはもちろん、降星さんよ」
えっと。コウセイ? 誰だっけそれ?
「やだ。何年も会ってないからって忘れちゃったの? あなたたちの父親じゃない」
父親!? ……確かにプロフィールには、その存在が記載がある。あるけど、父親のことなんてすっかり忘れていた。
いや。母親や妹がいるんだから、父親がいてもおかしくない。おかしくはないけど、この一年間、まるっきり何の音沙汰もなかったから、架空の存在のような気がしていた。
「そんなバツが悪い顔をしなくても大丈夫よ。なにしろ、十年近くも海外にいたんだもの」
ほぅ。そういう設定なんだ?
「お父さんって、どんな顔をしてたっけ?」
結衣も記憶が曖昧なのか首を傾げている。
「そうよね。いい加減、顔も忘れちゃうわよね。でも会えばすぐに分かるわ」
「なんで?」
「ふふっ。それは再会した時のお楽しみ」
なんて言われたけど、結衣はともかく、俺の年齢だったら顔くらいは覚えていないとおかしいよね? どうしようかと焦った時に、このアルバムの存在を思い出したってわけ。
じゃあ、早速見てみよう!
明るいクリーム色のアルバムは、結構な厚みがある。まずは表紙をパタンとめくってみた。
「赤ん坊だ。……これって俺?」
最初のページには、レースをあしらった可愛らしいベビードレスを着た赤ん坊の写真が並べてあった。合計五枚。隅っこに「結星誕生」という手書きのシールが貼ってある。
生まれたばかりなのか、ほにゃっとした顔をして、目を閉じて寝ているものが多い。ちっちゃな手で誰かの指(たぶん母さんの)をニギニギと握っているのもある。
顔は全然違うはずだけど、これは再現なんだ。つまり、かつて本当にあった風景で。そう思うと、胸がじんわりと温かくなった。
ページを捲る。
次のページには、見開きいっぱいに、少し成長した赤ん坊の姿があった。既に顔立ちがくっきりしていて、目がやたら大きく、ベビーモデルみたいに見える。
母さんと一緒に映っている写真もある。若い。母さんがめっちゃ若い。化粧っ気はなくて「幸せ」を形にしたら、きっとこんな風だという表情で笑っている。
そして次のページ。
おっと。いきなり成長してるじゃん。今の俺? ……いや違う。凄く良く似ているけど、もっと歳上というか、大人だ。歳上設定の俺のアバターに激似かも。
ってことは、これが父さん?
なるほど。「会えばすぐに分かる」と、母さんが言うわけだ。この人が俺に似ているのか、俺がこの人に似ているのか。
そこは謎だけど、会えば分かるのかな?
徐々に成長する子供時代の俺と、まだ若い両親。通い婚のせいか、父さんの写真は少ない。だけど、結衣が産まれ、俺が小学校に入学した頃までは父さんが時々写っている。
本来は、その後の成長のシーンにも父親の姿があったのかもしれない。でも、この世界のシナリオに合わせたのだろう。真新しいランドセルを背負った結衣を囲む家族写真。それを最後に、父さんの写真がなくなっていた。
十年近くも海外にいたって言ってたよね。
去年、俺がこの世界に来たばかりの時は、母さんも海外にいたから、そこで二人は会っていたのかもしれない。
でもそれにしても自由過ぎない? 仕事が大変なのかな? この世界の男性が?
いったいどんな人なんだろう? 俺と結衣の父さんって。写真では常に笑ってた。とても幸せそうに。でもその笑顔はたぶん、前の世界の本当の父親のもので。
まあ会えば分かるか。あの母さんが好きになった人なんだから、きっと悪い人じゃない。そんな気がした。
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