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遊び人が賢者になるって本当か?連載版  作者: 花黒子


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3/3

不死系の魔物ってのはなんだ?

 昼頃に起き出して、冒険者ギルドに買い取ってもらった魔石と毛皮、それから報酬をもらう。

 正直、昨日も思ったが、すごい利益率だ。アイテムは余っているのに、またしてもひと月分の宿泊費くらい稼いでしまっている。


「冒険者ってやめられないのでは?」

「いや、毎日、こんなに仕事をする冒険者はほとんどいません。そもそも危険ですから」

 冒険者ギルドの職員はどうしてこんなにリスクを犯すようなことをするのかという目で見てきた。


「危ないことはやっていないつもりなんだけど」

「でも、たまにいるんですよ。ひと月くらい、ものすごく働いて、後は休んでいるという冒険者が」

「遊び人か?」

「そうですね。だいたい競馬場にいます」

 先輩たちがいたか。


「その一派です。でも、馬に賭ける方じゃなくて、競馬自体をどうやったらできるか考える方ですけど」

「どういうことですか?」

「いい仕事だから、続ける方法を考えたいって話さ」

「なら、よかった。見つかったらギルドにも教えて下さい」


 ギルドとしても冒険者がいなくなるのは困るのだろう。

 俺は有り金を持って、金物屋に行き、使えそうなものは取りあえず全部買う。薬屋にもよって、毒草と毒消し草をセットで買った。リスクマネジメントは大事だ。


「そんなに買ってどうするの? 誰か殺すつもり?」

 薬屋の店主が恐る恐る聞いてきた。

「魔物をね」

「ああ、魔物ね。なんだ……、剣もぶら下げてない冒険者なんて久しぶりだから。魔法使いでもないでしょ?」

「ああ、遊び人ってことにしておいてくれ」

「なるほど……。そんな職業はないだろ?」

 前世のゲーマーたちに聞かせてやりたい。

「どんな道でもプロはいるのさ」

「そうかい? まぁ頑張って魔物を倒したら、また来な」

「よろしく」


 町外れで、クリエと合流。すっかり装備を揃えてきたらしい。


「どうしたんだ?」

「お金が入ったから。教会は行った?」

「行ってない。レベルが上っているのか?」

「上がっていると思うよ。スキル、また取っちゃった」


 幻惑魔法の中級スキルを取ったのだとか。これで、レベルの低い魔物を追い返したり、呼び寄せたり、混乱させたりできるという。


「じゃあ、森に入って、呼び寄せよう。とにかく、どうやったら魔物を倒せるかを試したいんだ」

「そんなの、人間を倒すのと変わらないでしょ?」

「わからないぞ。例えば毒が効くのか効かないのかとかも含めて、実験していこう。ちなみに骸骨剣士に回復薬は効くのか?」

「溶けるんじゃない?」

「面白いこと言うなよ」


 古戦場跡で、相変わらず落とし穴に嵌まっている骸骨剣士に回復薬をかけるとちょっと動きにくそうにしていた。ただ溶けるというか、関節の腱が不十分に再生して挟まっていただけだった。


「溶けないんだ! 文献では溶けるって書いてあったのに」

「濃度とかにもよるのかもな。でも、知識とは違うことが出てくるだろ? これが他の冒険者との差になってくる」

「差をつけてどうするの?」

「遊び人と呼べなくなるほど差をつけたら、賢者になれるんじゃないかと思って」

「無理じゃない?」

「やってみないとわからないことは多い」


 今日は錆びた剣も回収する。サビを取って使えるなら、買うより安いだろう。何本もあるので、どれか使えるんじゃないかと思っている。


 森でクリエにレベルの低い魔物を読んでもらった。ネズミやらリスの魔物がたくさん集まってきたので、さっくり倒して、魔石を回収。内職をしているような気分になった。

 毒団子を作って置いておいたら、どんどん魔物が死んでいく。ネズミやリスだけでなく鳥まで死ぬ。やはり臭いがいいから口に入れたくなるのだろう。取っていてよかった無駄スキル。


 クリエのレベルが上がっているからかイタチのような中型サイズの魔物まで呼んでいた。錆びた剣を投げたり、スコップで殴ったりしている内に、いつの間にか倒せていた。


「私の幻惑魔法が効いたのよ」

「そうかもな」

「いや、ロザンの投げた錆びた剣が良かったんだと思うよ。手柄の横取りをしたのに、気にしないの?」

「手柄はどうでもいい。それより、どうやって倒して、どんな経験を積んだのかだろ? 意外と、俺達も強くなってきているのかもな」

 そう思っていた矢先、熊が現れた。


 金物屋で買った杭を投げていたら、熊の目や鼻に突き刺さり、こちらに向かってくる途中でドシンと倒れた。


「ありゃあ、これ、もしや遊び人ってレベル上がりやすいんじゃないか?」

 中級クラスの魔物であれば倒せるようになっているかも知れない。中級がどれくらいなのかわかっていないけれど。


「積極的に冒険者ギルドで依頼を請けてもいいのかもね」

「そうかもしれないな。でも、依頼より、実験だ」


 日が暮れると、骸骨たちが地中から這い出てくる。ひたすら、錆びた剣を投げて討伐。クリエも取ったばかりのスキルを使えるのが嬉しいのか、ずっと幻惑魔法を使っていた。


「キリがないと思っていたけど、魔物が出てくるまでにタイムラグがあると暇だね」

「でも、ほら、昨日倒した黒狼が骨狼になって襲ってきているぞ」

「あ、本当だ! 魔物の二毛作ね」


 骨狼は動きも機敏で、投擲スキルでも当てられなかったが、金物屋で買った網を投げつけたら、あっさり捕獲できた。あとは、薬や毒で実験してみる。


「ちょっと肉があると、それが再生していくんだな」

「でも、やっぱり動きにくそうだよ」

「もうちょっと強くなってくれ」


 そう言って、頭骨を胴体から切り離した。それでも、案外動くかと思ったが、やはり頭と繋がっていないと、動かなくなる。骨狼は討伐完了だ。


「もしかして、これ、古戦場跡に魔物の骨を埋めていたら、明日骨の魔物として復活するんじゃない?」

「たぶんな。しかも、腐肉食の虫が多いから骨になるまでが速い。いや、これ、虫も魔物なんじゃないか?」

「わっ、そうかも」

 腐肉食の虫の中に、時々、大きな虫が混じっている。中に魔石を含んでいて、攻撃してきた。

 虫は簡単だ。接着剤を水で薄めたものを水鉄砲で噴射して、固めてから潰すだけ。


「よくそんなこと思い付くね」

「そんなことしか思いつかないんだよ」

 はっきり言えば、金物店の勝利と言える。

 今夜はビーズみたいな小さい魔石がたくさん取れる。


「こういうのは買取価格が安いのか?」

「そうだよ」

「じゃあ、魔法陣のお札でも買って自分で試すか」

「よく、そんな……!? え? 魔法陣のお札なんてあるの?」

「ないの? なかったら、図書館の魔法書を写させてもらおう」

「いや、まぁ、写すだけならいいと思うけど……。ちなみにどんな魔法を?」

「死霊術がないんだろ? だったら、召喚術かな?」

「召喚術は禁書じゃない?」

「じゃあ、魔物が飛び出してくるような魔法はないのか?」

「そんなに簡単じゃないよ。ダンジョンじゃないんだから」

「あ、ダンジョンにはあるのか!」


 ダンジョンの町までちょっと遠いな。


「廃ダンジョンとか、ないかな?」

「廃ダンジョン記があるよ」

「召喚術の魔法陣とかも描いてある?」

「それは禁止だよ。でも、作者が作った塔があったはず……」

「どこに? 近く?」

「西の森の向こう」

「作者は死んでるの?」

「とっくの昔に」

「行ってみるか」

「夜だよ」

「でも、魔力探知してみて。魔物はいなくないか?」

 臭覚向上でも森の香りしかいない。

「確かにね……」

「行こう。昼も夜も変わらない」


 夜の森を通り過ぎて、塔に行ってみた。フクロウが鳴き、マンドラゴラが眠る地面を踏みしめ、夜の花が咲く。不思議なことに、塔の周りは多様性が保たれ、いろんな匂いがしている。


「廃ダンジョン記を書いた人はいろんなところに行ったんだろうな」

「それはそう。世界中に行ったみたいだね。あぁ、でも……」

「崩れているな……」


 塔は崩れていた。朽ちるに任せて石材が崩れ、瓦礫の下から力強く草が生えていた。


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更新ありがとうございます。 廃ダンジョン記>山屋さんの本?
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