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アルス・ゲーティア~無能と呼ばれた少年は、72の悪魔を使役して無双する~  作者: 北川ニキタ
第二部

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73/89

―73― お着替え中

 セーレを退去させてから、僕は早速、クローセルとフォカロルの召喚にとりかかっていた。

 まぁ、セーレから空間魔術を習っていた間、どちらかは召喚できたわけだが、普通に新しい魔術を習うことに夢中になっていて、忘れていた。

 いや……本当のこと言うと、忘れてはいなかったけど、どっちを召喚すべきなのかわかんなかったから、忘れたフリをした、というのが正しいんだけど。

 とはいえ、こんなこと本人たちには言えないな。


 ともかく、クローセルとフォカロルの召喚に取り掛かる。

 二体同時召喚だ。


「あっ」

「え……?」


 そこには、なんというべきか……クローセルの裸があった。

 裸、つまり、色々見えてはいけないものが見えてしまっているというわけだ。

 特に、胸があらわになっていた。

 大きいという感想が自然とこみ上げてくる。なにが大きいかというと、それは当然胸のことだ。

 胸、言い換えるとおっぱいだ。

 揺れる2つのおっぱいが、視界に入る。いや、流石に見ちゃ悪いと思って、なんとか視界から逸らそうとする。

 けれど、逸らしたところで、視界の端に映ってしまう。

 それだけ、大きかったのだ。

 どうやら着替え中に召喚してしまったようだった。


「ご、ごめん!」


 慌てて目を逸らす。

 けれど、一度目に焼き付いたのは離れない。


「わ、私の方こそ、ごめんなさいっ!」


 クローセルの方も慌てだす。

 うっ、お互いめちゃくちゃ気まずいな、これ。


「堕天使風情が、なにご主人様に汚いもの見せているんですか」

「いたっ! なにをするんですかーっ!」

「いいから、早く服を着なさい、この堕天使」


 フォカロルとクローセルで一体なにしてんだろうか。直接、この目で見てないためわからない。


「うぅっ、お目汚し失礼しました……」

「まったくです」


 見ると、服を着たクローセルといつもどおりのフォカロルがいた。


「僕のほうこそ、変なタイミングで召喚してごめん」

「事故みたいなものですから、仕方ないですよ」

「いえ、我々はいかなるときも召喚される準備を心得ていないといけません。それを怠った、この堕天使が悪いんですよ」

「そんなぁ……」


 いやいや、お互いどういう状況か把握できない以上、それは無理があると思う。


「魔界の状況を把握できる方法があればいいんだけど」


 普段、召喚されていない悪魔は魔界に住んでいる。

 その魔界というのは、この世界にいると認知することさえできないものだ。


「そう言われましても……」

「申し訳ありませんが、私にもその方法に心当たりないですね」


 と言って、二人とも首を傾げる。

 二人にもわからないってことは、そんな便利なものは存在しないんだろう。

 にしても、魔界ってどういうとこなのか気にはなる。想像すら、つかないや。


「それにしても、ノーマン様と会えたの久しぶりな気がします。ずっと、寂しかったんですよー!」

「私もずっと召喚されなかったので、ご主人様に嫌われたのかと思いました」

「いや、大げさでしょ。会ってないといっても、たかが一週間ぐらいでしょ」

「一週間は長いですよ!」


 そうか、一週間は長いのか……。

 今度から、もっとコンスタントに召喚するよう気をつけないとな。


「ですが、ご主人様はまた新しい悪魔を召喚されますので、堕天使はすぐ退去されることになるかと」

「えぇ! いや、次、退去するのは順番的にフォカロルのほうでは!?」

「なにを言っているんですか。前回は私が譲ったので、次はあなたの番ですよ」

「いや、前回は結局、私も退去したので次もフォカロルの番ですって」

「随分、図々しいですね。この堕天使は」

「いや、私の言っていることのほうが真っ当ですよ! ノーマン様もそう思いますよね!」


 僕に同意をもとめられてもな……。

 正直、次はどっちが退去すべきか、僕でもよくわかんないし。


「えっと、とりあえず今すぐに新しい悪魔の召喚はしないかな……」

「えっ、本当ですかっ!?」


 クローセルが嬉しそうな表情を見せる。

 フォカロルも声には出さなかったものの少し頬が緩んだように見えた。

 この表情を見てしまうと、なんというか新しい悪魔を召喚しにくくなるな。

 ホントは4体同時召喚ができればいいんだろうけど。

 こっそり練習でもすれば、できるようになるのかな。


「それで、ご主人様、なぜ新しい悪魔の召喚をなさらないのか、お聞きしてもよろしいですか?」

「それは、そろそろ学校に行かないとマズいんだよね」


 そう言うと、二人は「あー、そういえばそんなのありましたねー」みたいな顔をする。

 思い返せば、随分長いこと学校に行っていなかった。

 学校なんか行くより悪魔に魔術を教えてもらうほうが勉強になるからね。

 正直、学校に行く意味があまりないんだよな。

 とはいえ、全く行かないわけにもいかない。

 学校ぐらい卒業しとかないと、将来のこと考えたら、色々と不便だし、それに魔術の高みを目指したい僕としては、学校を卒業したら通える学院にぜひとも入学したい。

 そう考えた場合、そろそろ学校に通わないとまずいわけだ。


「そういうわけで、学校に通うから、新しい悪魔の召喚は一旦なしってことで!」


 と、僕は宣言した。





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