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アルス・ゲーティア~無能と呼ばれた少年は、72の悪魔を使役して無双する~  作者: 北川ニキタ
第一部

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―06― 新しい悪魔

 追い出された僕は、自分のために父さんが用意した家に向かった。


「うわっ、すごいボロ屋だ」


 その家に向かった僕はそう口にする。

 見るからにいつ崩れてもおかしくないような家だ。鍵を使って中を見ると、案の定ホコリだらけでとても住めるような家ではなかった。

 まぁ、家がないよりはマシだと思うしかないだろう。


 15歳まで最低限の面倒を見てやるということで、この家は父さんが用意したものだ。

 それと、15歳までは最低限食いつないでいけるようなわずかなお金ももらった。

 それまでに仕事を探せと言いたいのだろう。


 それと、悪魔を召喚するのに必要な魔導書『ゲーティア』と悪魔召喚に必要な魔法陣がかかれた紙をこっそり持ってきていた。


「よし、それじゃ第55位オロバスを召喚しよう!」


 家に着いて早速、僕はそう宣言した。

 オロバスはさっきフルカスさんがおすすめしていた悪魔だ。


「ふむ、その前にやることがあるじゃろ」


 気合いを入れたところ、フルカスさんにそう言われる。

 やることってなんだろう?


「今のお主では、一度に2体の悪魔を召喚するのは難しいじゃろう。ゆえに、儂を退去の呪文で退去させてからじゃないと、新しい悪魔を召喚することは不可能じゃよ」

「そうか……」


 頷く。

 けれど、せっかくフルカスさんと仲良くなれたのに、もうお別れなのは少し悲しいかも。


「なぁに、また聞きたいことがあったら、儂を召喚しておくれ」


 僕の思いに感づいたのかそう言ってくれる。

 確かに、また会いたくなったら、そのとき召喚すればいいだけだ。


「それじゃあ退去の呪文を唱えるよ」


 そう言って僕は魔導書を開く。


「――汝、第50位フルカスよ。汝は我が要求に熱心に答えたので、我は汝に適切な場所へ退去するのを許可する。汝は我が魔術の神聖な儀式により召喚し呼んだらすぐにまた来るように準備し続けよ。我は平和的に静かに退去するよう命ずる」


 魔導書に書かれていた通りの呪文を言い終えると、フルカスさんは少しずつ消えていく。


「そうじゃ、1つ言い忘れておったが、夜8時から朝4時の間は儂はぐっすり眠っておるから、召喚するならその時間以外で頼むぞ」


 という言葉を残して、フルカスさんは消えていった。

 そういえば昨日召喚したときは、フルカスさんがぐっすり眠っていたのを思い出す。

 確か、夕食後だから夜の9時に召喚したんだった。

 なるほど、もうその時間は寝ている時間だったというわけだ。

 しかし、8時に寝て4時に起きるとか、一般的な年寄りとそう変わらないな。


「よし、次の悪魔を召喚しよう」


 そう言って、僕は切り替える。


「ええっと、序列55位オロバスだよな」


 魔導書をオロバスのページのところまでめくる。

 魔法陣は昨日、フルカスさんを召喚したのと同じのを使っても問題ないだろう。


 よし、召喚の呪文だ。


「――我は汝をノーマンの名において厳重に命ずる。汝は疾風の如く現れ、魔法陣の中に姿を見せよ。世界のいずこからでもここに来て、我が尋ねる事全てに理性的な答えで返せ。そして平和的に見える姿で遅れることなく現れ、我が願いを現実のものとせよ。我は汝を召喚する。万物が従う方、その名を聞けば4大精霊はいずれも転覆し、風は震え、海は走り去り、火は消え去り、大地は揺すぶられ、天空と地上と地獄の霊すべてが震える我の名において、命ずる。来たれ――第55位、オロバス!!」


 呪文の内容は最後の部分だけ変えれば問題ないらしく、ほとんど一緒だ。

 魔法陣は光だす。


「あなたがわたくしのマスターですか?」


 まず男にしては甲高い声だな、と感じた。

 光が消え、目が開けられるようになって、その姿を見て僕は驚かずにはいられなかった。

 そこにいたのは、上半身が馬で下半身が人間の馬男だったからだ。



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