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アルス・ゲーティア~無能と呼ばれた少年は、72の悪魔を使役して無双する~  作者: 北川ニキタ
第二部

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32/89

―32― ギルド

「それで、人助けとは具体的になにをするんですか?」


 フォカロルを召喚した次の日。

 もう遅い時間だったこともあり一度退去させてから、翌朝再び召喚することになった。


「んー、まず、下町に行こうか」


 というわけで、僕、フォカロル、オロバスの三人で馬車に乗って下町へと行くことにした。

 ちなみに今日は学校が休みなので、朝から自由に行動できる。


「わたくし、下町へ行くのは初めてでございます」


 ふと、馬車の中でオロバスがそう口にする。


「そうだね、普段は貴族街からでないからね」


 ここ――ディテル魔術都市国家は、魔術師とそうじゃないもので住む場所がわかれている。

 魔術師が住む一角は貴族街。

 それ以外の者が住む場所を下町と呼んだりする。

 僕の家は一応、貴族街の外れにある。

 魔術学校は貴族街にあるため、基本特別な用事がない限り僕は貴族街からでることは滅多にない。


「それで、その下町とやらに行ってなにをするのですか?」

「まぁ、それは着いてからのお楽しみという感じかな」


 そんなわけで馬車は下町へと向かっていった。


「ここが今回の目的地です」


 といって見せたのはまぁ、どこからどう見ても普通の建物。


「ここがなにか?」

「まぁ、中に入ればわかると思うけど」


 説明するより実際に見せたほうが早い。


「と、そうだ。2人とも馬車から降りる前に実体化してくれないかな?」


 と、そんなわけで2人とも実体化する。

 オロバスは馬人間から、ダンディーな見た目の人間に。

 フォカロルは実体化すると、ガーゴイルの翼がなくなっていた。


 そして、建物の中にはいる。


「うっ、酒臭いですね」


 入った瞬間、フォカロルがそう言う。

 確かに、入った瞬間、酒の充満した臭いが鼻をついた。

 見ると、ガタイのいい男たちが酒の入ったジョッキを手にして騒いでいた。

 まだ昼だというのに、この騒ぎようだ。

 僕も中にはいったのは初めてなので、思わずこの様子に驚いてしまう。


「おい、坊主! ここはてめぇみたいな青臭いガキが来るとこじゃねぇぞ! ささっと帰りな!」

「僕、魔術師なので」

「ああん? 魔術師ってことは貴族か。俺は貴族は嫌いだね」

「そこのあなたぁああああ! 今のはマスターへの侮辱と受け取りました! 心優しいマスターが許しても、わたくしは許しません!」

「ああん? てめぇ、やる気かぁ?」


 オロバスと男がお互いにらみ合い。

 すると、他の席にいた男たちが「喧嘩が始まったぞぉ!」と叫んで、集まってきた。


「オロバス、あまりやりすぎるなよ」


 僕はそうとだけ指示を出し、カウンターへと向かった。カウンターには受付らしき人が佇んでいた。


「初めてきたのですが、冒険者の登録をお願いしたいのですが」

「さきほど会話を聞いていたが、魔術師でよろしいでしょうか?」

「はい、そうです」

「そちらの彼女は?」

「そ、そうですね……」

「彼女も魔術師です」


 言葉が詰まったフォカロルに変わって僕が答える。

 おそらく魔術が使えるんだし、魔術師ってことにとしといたほうがいいだろう。


「そこの奥で喧嘩している男は?」

「彼はえっと、格闘家です」


 オロバスは武器とかを持っていたら、剣士や槍使いなんだろうが、持っていないので格闘家ってことにした。


「それで、ここは一体なんなのですか?」

「見て、わからない?」

「わからないです」

「ここ、冒険者ギルドだよ」

「冒険者ギルド……?」

「んー、つまり、人助けするところ」


「はい、登録終わりました」


 会話しているうちにカウンターにいた受付の人がそう言った。


「こちらがギルドカードになります。三人分あります」

「ありがとうごさいます」


 そう言って、三人分のギルドカードを受け取る。


「最初はみなさんEランクですが、功績をあげるたびにランクがあがる仕組みになっています」

「はい、わかりました」


 まぁ、冒険者として活動するのは今回限りなので、ランクが上がることはないだろう。


 ディテル魔術都市国家の貴族、つまり魔術師はあまり冒険者ギルドに興味がない。

 むしろ野蛮だ、と考えている節もある。 

 相当貧乏な魔術師が、金稼ぎの一貫として冒険者として活動することがあるぐらいだ。


 ギルドの掲示板に行くと、様々な依頼があった。

 魔物狩りから犬探しまで、内容は千差万別だ。

 そう、冒険者ギルドに来たのは依頼を受けることで、人助けをしようという魂胆なわけだ。

 その目的に合致した依頼とはなると、


「あった」


 と言って、僕は一枚の依頼書をとる。

 そこにはこう書いてあった。

 『荷台の護衛』と。


 ふと、見ると、オロバスと喧嘩していた男たちは仲良くお酒を飲んでいた。

 見てない間に、なにをやっているんだ、こいつは。


「おい、行くぞ。オロバス」

「はっ、マイマスター! わたくし、準備万端でこざいます!」


 とか言っているオロバスは酒臭い。

 ホントに大丈夫か、こいつ。

 と内心思うのが、まぁ、連れて行くことにする。


下より評価いただけると幸いです。

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