エルフ、気付く
「とりあえず、精霊さんやソラウ、イーリンス、フィズとの契約はどうにもする気はないよ。だから魔獣が危ないと言うんだったらまずは結界をぶっ壊すことにしよう」
ふふん、いい案だよ。これは。
『結界ってあれかのう、森を覆うように出来ておるあの薄いやつか?』
「そう、それ」
ソラウの言い分を私は肯定する。
これはダンジョンコアを使うようになって災害の森が私のダンジョンと認識されたからわかった事なんだけど、災害の森って壁に覆われて魔獣が外に出れないようにされてるんだよね。
多分、災害の森の周辺の国が力を合わせて作ったんだと思う。
でも以前のレオンさんの様子から見てこの森にいる魔獣は国が滅びてもおかしくないレベルの魔獣もいるらしい。
そんな国を滅ぼすような魔獣をかなりの高さがあるとはいえ壁だけで防げるわけがないんだよね。
それに私のダンジョンとして認識しているのがきっちり全部壁までだった。これはわざわざ精霊さん達に確認してもらったから間違いない。私も直接見に行きたかったけど精霊さん達が口々に、
『いるぜいくとまようしー』
『むしろいないほうがはやい?』
『じゃーま?』
心に突き刺さるような言葉を言ってきたんだよ!
泣くよ! いや、実際に泣いたけど! 最後のセリフを言った精霊さんに至っては凄い笑顔だったし! 悪意のない笑顔だったよ!
「あの結界はエナハルト、ローランド、今はないロイゼントが共同で張った最上位の結界なんだけど……」
「あ、やっぱり国で協力して張ってるんだね」
『あれでかのぅ? 多分精霊達でも割れるぞ』
ヴィが眉を潜めながらソラウの方を見ていた。対してソラウは笑いながら気にもせずに事実を告げる。
まあ、私が脳内マップで見た感じも精霊さん達なら簡単に割りそうだなぁと思えるくらいの薄さだったしね。
『そもそもの話がじゃな、あんな結界を張っとるからこの森が異常に拍車が掛かっとることに気付かんのじゃろ』
「異常とはどういう事だ?」
今まで黙って皇帝のやり取りを見ていたレオンさんが何を思ったのか口を挟んできた。
そんなレオンさんに向けてソラウとイーリンスは呆れたような眼を向けている。
と言っても私もこの森の異常なんてわかってないんだけどさ。
『ちょっと前にイルゼには言ったじゃろ? この森が異界と化しとると』
「ああ、そういえば言ってたねえ」
そんな事言われた気がする。
「でもあれってこの森がダンジョンに設定されたからでしょ?」
「だ、ダンジョン?」
『それも要因ではあるが根本的な原因ではないのう』
ヴィがダンジョンという単語に興味を持ったみたいだけど無視してソラウは続ける。
『この森は囲むように壁と結界が張られておった。あの結界の効果ははっきりとはわからんが、おそらくはある程度の強さを持つ魔獣が外に溢れんようにする効果じゃったんじゃろ。それによって中の魔獣達は閉じ込められたという形になる。そこはわかるな?』
「うん」
『そもそもじゃ。強い魔獣ばかりを結界の中に閉じ込めるというのはいわば世界の縮小じゃ。弱い魔獣が淘汰され強い魔獣だけが生き残る世界が出来上がる。それを意図的に起こして強い魔獣を作り出す魔法もあるわけじゃがな』
『古い魔法ですが蠱毒と呼ばれる魔法です』
『うむ、要は自然に発生した蠱毒の魔法のせいで災害の森の魔獣は異常に強い個体が発生しやすい状態じゃったわけじゃ。まあ、この森はもともと強い魔獣が発生しやすい条件が揃っておったんじゃろうな。そこに更に劇薬の役割としてこのエルフのイルゼと共に魔力を作り出す精霊樹が現れたわけじゃ。どうなると思う?』
ソラウの言ってることが全く理解できない。自然に魔法が発生するなんてことが起こるの?
あと魔力が増えて何か悪いことが起こるの?
「な、何が起こるのかなぁ?」
ヴィは顔を蒼くしながら尋ねてる。
でもあの顔は答えがなんとなく分かってるけど聞きたくないみたいな顔だよ?
『そりゃ単純に生き残る魔獣が強化されていく。いまやこの森で長年生きておる魔獣は人間並の知恵を持ち、外に出れば国くらい鼻歌混じりで消し飛ばせるような力を持つ魔獣ばかりじゃ。我ら精霊には大した事はないがあのクラスになれば人間や他の種族にとっては災害いや、むしろ天災じゃな』
なるほど、そんなことが起きていたのか。
ソラウ達は軽々と吹き飛ばしてるからいまいち魔獣達の強さをわかってなかったけどそんなのだったのかぁ。
あれ、そんな森に住んでる私ってやっぱりいつも命の危険に晒されてるわけじゃないの?




