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子竜、放つ


「ま、まあ、あんな魔法の応酬の中に飛び込むなんて俺なら嫌だね」


 まるで他人事のように魔法が飛び交う方を見ているレオンさんだけど、あなたの部下も結構悲鳴上げながら逃げまわってるけどいいんですかね?

 あの、友達断られた私の心境はどうすれば……


「まあ、死ななければ訓練にはなるだろ」


 嫌な訓練だなぁ。死ぬような訓練なんて私はしたくない。

 でもいい加減に話を進めたい。面倒なことはさっさと終わらせて私は寝たい。


「フィズ」

「きゅ……」


 私が呼ぶとフィズがすぐに上空から翼をはためかせながら姿を現し、肩に止まる。

 つぶらな瞳が私の方をビクビクと伺うような色で見てくるのは私を落とした事を気にしてるからかな。

 そんなフィズの頭を優しく撫でる。


「気にしてませんよ。だからそんな顔しないでください」

「きゅう」


 頭を撫でられて気持ちよさそうにするフィズに思わず頬が緩みますね。

 本当、面倒な事が立て続けに起こらなければフィズを撫でたりして過ごすだけの日々だというのに。


「ではフィズ。あれ、止めてきてください。ついでにフィズの力も見せてね」


 フィズはオリハルコン像を潰せると言ってたけど多分無理でしょ。でも精霊さん達くらいなら軽く蹴散らせると思うし、無理な要望ではないはず。


 フィズの満足度も上がるし、この場は収まる。まさに誰にとっても幸せな結末にしかなりませんよ。


「きゅう!」


 私の意図を読み取ってくれたらしいフィズは嬉しそうに一声鳴くと翼を広げて悠々と魔法が飛び交う戦場みたいな場所に向かい飛んでいく。


「じゃ、私は少し離れようかな」

『きんきゅうりだつ』

『あんぜんかくほー』


 私と付いてきた精霊さん達は安全を確保するように後ろに下がり、精霊さん達の魔法と私の風による防壁を前面に張る。

 何かを感じたのかレオンと皇帝さん、それと聖女さんは私の後ろへと回っていた。


『きゅうぅぅぅぅぅぅ!』


 フィズの咆哮が周囲へと響いた。

 宙を飛ぶフィズの体全体が雷を纏い、青白い光が周りで弾ける。

 その光が徐々にフィズの口へと集まっていき、照準が暴れるオリハルコン像とリリィへと定められると遂にそれが放たれた。


 恐ろしいまでに圧縮された雷の魔力が薄暗い森を照らしながらゆっくりと落下していく。


『やばい』

『これはあかんよー』


 争っていた精霊さん達は我先にと着弾地点から逃げ出していた。

 様子を伺っていた騎士団の皆さんも必死の形相で逃げ出している。


「退避しろ! 防御壁を張れ! 魔力を惜しむな!」


 レオンさんが指示を出してるけど、安全な防御壁の後ろから指示を出すって卑怯な気がするだけどなぁ。


 そんなことを考えている間に魔力の塊は地面へとぶつかり、破裂するようにして光を撒き散らした。


『ギィヤァァァァァァァァァァ⁉︎』


 今まで聞いた事がないくらいの悲鳴の大合唱と今まで感じた事がないくらいの揺れが地面に足をつけた者たちを襲ってた。

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