皇帝、決断する
「本当に城だ」
ボクが現在いる場所は帝国と災害の森との境である壁のある砦だ。
そんな砦の上から魔法使いに遠くがよく見えるようになる遠視の魔法をかけてもらい災害の森の中心部分を見ていた。
まず眼に入るのは巨大な世界樹だろう。あの世界樹はまだ成長を続けているのか以前見た時よりも大きくなっている。
そしてその世界樹から僅かに視線を下に下げれば確かに忍の報告にあったように城のような物が見えた。
「あれさ、遠視の魔法の効果でよく見えることを差し引いても帝国より大きい城じゃない」
「ああ、世界樹が馬鹿でかいからわかりにくいがかなりのデカさだ」
一応はボクの護衛という事でついてきたレオンが隣で頷く。
災害の森は世界樹が現れてからそっちの大きさに気を取られがちだけど、実際は他の樹も馬鹿みたいにデカい。
なにせ魔獣がうろつく森なわけだしね。安全に木々を切り出せないし、しかも学者からの報告ではなかなか切れないらしいから他人の手が入らない樹々は伸びる伸びる。
そんなわけで樹を手に入れるのも命がけなわけで、災害の森の木は高値で取引されている。
「それでどうするんだ? あんな所にできた城に対してよ」
「うーん」
正直判断に困る。
災害の森は危険地帯ではあるものの別にどこかの国の土地なわけではない。危険地帯であるがゆえにどの国も手を出せない空白地帯なんだよね。
そんな場所で城が立ったという事はそこの場所の所有権を主張していると取られる可能性もあるわけか。
「国でも作る気だと思う?」
一緒に連れてきた文官達に意見を求めてみたけど文官達の顔もまた難しい。
「災害の森で国ですか?」
「明らかにリスクが大きいだけと思うのですが」
「そうなんだよねー」
どう考えてもメリットよりもデメリットの方が大きい。
いや、ボクならどんな好条件でも嫌だ。
下手をしたら朝を迎えれない可能性もありそうだし。
「あっちには精霊がいるからな。あいつら下手な騎士や魔獣なら笑いながら潰すぞ」
レオンの何気ない言葉にああ、なるほどと納得する。
精霊達があの世界樹の周りにいる限りそこにいるエルフはデメリットは一切発生しないわけか。よく思い返せば魔王軍幹部を退ける力がある大精霊にエンシェントドラゴンがいるんだから身の危険などないに等しい。
さて、そうなると帝国が取る手段も限られてくる。
つまりは友好的に接するか、敵対するかなわけだ。
幸いなことにレオンから見たエルフはそんなに好戦的ではないらしいし、ここは友好的に同盟という形に纏めたい。
まだ残っている馬鹿貴族共や頭の固い老害貴族からは「映えある帝国が高々エルフと同盟など」とか言ってくる未来が見えるけど、そこは好きにさせてきたるべき時にきっちりと搾り取るとしよう。
「よし、同盟を結ぼう。レオン、ボク自ら行くから護衛団を作って。人選は君に任せる」
「あの森を突っ切ってく気か?」
「エンシェントドラゴンが作った道を行く。そのつもりで護衛を考えといて」
「俺も仕事が多いんだが?」
「ボクが死んだらどうなるかなぁ。内乱?」
仮にもボクは皇帝、帝国のトップなわけだし。
死んだら後継者もいないんだから内乱が起こるよね。今の仕事なんかと比べ物にならないくらい忙しくなること間違いなしさ。
「ち、わかったよ」
「頼りにしてるよ悪友。あ、あと魔法部署のエルフは必ず入れといて」
エルフじゃないとわからない挨拶とかあったら困るし。
「あのお高いエルフがくるか? まだ災害の森にいるエルフのほうが話がわかるぞ」
「来なかったら予算減らして部署潰すって言っといてね」
ボクがにこやかに告げるとレオンはわかりやすいため息を吐いた。
「お前みたいな悪女は絶対結婚できないね」
何気に気にしてることをレオンに言われて心なしか胸が痛いよ……




