幹部、悲鳴を上げる
「なんなのあれ!」
こちらに向かい飛ぶようにして迫る黒騎士を見て私、サロメディスは悲鳴に近い声を上げる。
フルフェイスで顔が見えないようになっている黒騎士だが目の部分には小さなスリットが入っていてその隙間から見える赤い光はまるで何かを憎んでいるかのような憎悪の炎が燃えているように見える。
「Vaaaaaaaaaaaaaa!」
「この!」
咆哮と共に迫り、振るわれた巨大な剣を後ろの木へと飛び移る事で身を翻して躱し、飛んだ瞬間に瞬時に作り上げた骨の短剣を黒騎士へと投じる。
黒騎士の剛腕から繰り出された斬撃は巨大な木をなんの障害も感じないかのように容易く断ち、さらにはそこから生じた風圧のみで私の骨の短剣は軽々と吹き飛ばされてしまった。
「なんなのこの森! 化物しかいないの!」
「Vaaaaaaaaaaaaaa!」
私の叫びに答えるのは目の前の騎士の格好をした化物だ。
この森に入るまでは順調だった。
世界樹を手に入れて魔王様に献上するための戦力は人間達の国を襲ってゾンビにした事によって手に入れた。
だけど、この森に入ってから全てが狂い出した!
森に入ってからは魔獣が襲いかかってくる。
普通の魔獣ならば私たち魔人の魔力を感知すれば近寄ってすら来ない。実際魔国では魔人が魔獣に襲われたという報告は少なかった。
だというのに何でこの森の魔獣は私が魔人である事など関係ないかのように襲ってくるの⁉︎
私、幹部! 魔王軍でも上から数えた方が早いくらいに強いのに!
しかも襲ってくる魔獣がまたおかしい。
なにあのネオコカトリス。
普通のネオコカトリスの三倍くらいデカイんだけど…… 更に目から出してる光でゾンビとか石化させてたし!
そんなヤバげな魔獣達に襲われながらも進んでいく。魔獣に襲われたけどそこは数の暴力、ゾンビ共に対応させた。数は力だ暴力だ。
数の暴力、なんて素敵な言葉だろう。
このまま進めば世界樹を手に入れるのも時間の問題ね!
そんな私達に暗雲が立ち込めたのはこの森に入ってから七日目の事だった。
目の前のゾンビ達が薙ぎ払われ、姿を現したのは絶滅したと言われていた精霊とさらに高位の大精霊に竜の子供、そしてエルフだった。
私の用意した軍勢など歯牙にも掛けずに精霊や竜によって吹き飛ばされ、さらにはエルフには魔王様から与えられた武器を奪われた。
なんて悪どい奴! 人の物に手をかけるなんて!親の顔が見てみたいわ!
しかもその剣を使って今、私に迫る悪魔のような化け物を作り私へとけしかけている。なんて性格の悪い!
「Vaaaaaaaaaaaaaa!」
黒騎士が咆哮を上げながら巨大な剣を繰り出してくる。普通に当たれば即死だ。
しかし、私には死霊魔法がある!
死霊魔法で作り上げた骨の剣を両手に構え、繰り出される大剣を受け止めようとして、
「ギャァァァァァァァァ!」
あっさり骨の剣は砕けて大剣は私の頭へと直撃した。
でも死んでない。死ぬほど頭が痛いけど死んでない。
「な、なんで……」
頭をさすりながらも後ろに飛んで距離を取る。
そして黒騎士の剣を見ると黒騎士が私へと振り下ろした剣は刃がなかった。刃が潰してある、つまりあいつが手にしているのは柄がある鈍器、あれなら確かに斬る事はできないわよね。
殴り殺す事は出来ると思うけど。
さっきの一撃も私が魔人じゃなかったら死んでもおかしくないような一撃だったわけだし。
エルフの言った「殺しちゃダメ」という命令もどこまで効果があるのか怪しいものよ。
「骨密度強化」
新たに生み出した骨の剣へと強化魔法を掛ける。
これで一撃では折れないわ! なにせ同じ魔王軍幹部一の力自慢、豪王ターナトスの剛力でも曲がることさえなかった剣なんだから!
私は彼以上の力を持った人物を見たことがないわ!
「Vaaaaaaaaaaaaaa!」
三度咆哮を上げた黒騎士が手にしていた剣を私の構える双剣に繰り出してきた。
「来なさい!」
骨の双剣を交差させるようにして構える。大剣が止まった瞬間にカウンターを繰り出してくれるわ!
そして唸りを上げる大剣が私へと迫り、乾いた何かが砕けるような音が響き、
「うごぉぉぇぇぇぇぇ!」
私の胸元に大剣という名の鈍器が突き刺さり、私は宙を舞った。




