エルフは働きたくない
空にぽっかりと穴が空いてしばらく経ったけど、私の城は無事だったし、地上にも大して被害は出なかった。まあ、そこらが吹き飛んだり、穴が空いたりしたけれど大丈夫だったわけだから、つまりは問題なしということだ。
世界の危機を私が防いだと言っても過言ではないはずだ。天にぽっかりと開いた穴を無視すれば。
『イルゼ、あーそーぼ!』
「いやだ。私は寝るのに忙しい」
私がベッドで寝ているとアイリスが部屋に飛び込んできて私の上に乗っかってきた。
この大精霊、退屈とか言って精霊界からあの穴を通ってわざわざやってくるんだ。
精霊さん達は大精霊に逆らう事はできないし、アンとトロワにソラウよりも強いという最強の大精霊が止められるわけなく、アイリスがやってくるとノンストップで私の所までやってくるんだ。
本当にいい迷惑だよね。
天に開いた穴は精霊界と繋がったままなんだよね。
ソラウとアイリス曰く、極稀に精霊界と繋がるゲートのようなものが自然に発生したりするらしいんだけどそういったものは普通は時間が経つと共に閉じたりするものらしい。
そんな物を私は魔力で無理やり作りあげ、そしてそのゲートをアイリスが楽しそうだからという理由で自分の魔力で維持しているんだそうだ。ソラウがなんか顔を蒼くしながら言ってた。
『あんなもん維持しようとしたら我なら一瞬で魔力切れになるわ』
とか言ってたからソラウと同じ大精霊であるはずのアイリスの魔力は尋常じゃないってことだよね。
そしてそんなゲートに飲み込まれたフィオニキス作の浮遊城はといえば精霊界に落下して代打撃、を与えるわけでもなく精霊界にいた精霊さん達のおもちゃと化していた。
というかめちゃくちゃ改造されてた。
『しゅつりょくはいぜんのはちばいくらいでる』
『むだなのがいっぱいついてたしね』
『あたらしくつくってためせなかったせいれいもーたーをよっつくらいつけてみた』
『暴走したら人界くらいな軽く滅びるのう』
ぜひ精霊界でお蔵入りになる事を願おう!
そんなものが地上で暴走なんかしたらどうなるかわかったものじゃないし。
『ねえイルゼ遊びましょうよ! そんな寝てばかりだと腐るわよ?』
「寝てて腐るわけないじゃない。私は寝るのが好きなんだから好きに遊んでたらいいじゃない」
好きなことを邪魔するなら許さないよ?
そんな意味を込めて欠伸を噛み締めながら体から魔力を発して威嚇しておく。
結構魔力を込めたからか私から放たれた魔力のせいで私の寝室が音を立てて軋む。なんか前より私の魔力がさらに増えてる気がするよ。
ちょっと魔力を放っただけの気でいたんだけどこのままだとちょっとしたことで部屋が壊れちゃいそうだし。面倒だけど魔力を制御できるように練習しないといけないかな。
そんな部屋くらいなら壊しちゃいそうなレベルの魔力は込めたはずなんだけどアイリスはただ楽しそうに笑うだけだ。さすがは最強の大精霊。
『あ、遊ぶ気になった?』
「ならない、遊び相手なら他にもいるじゃない。ファルゼとかシャオとか」
『あの二人に言ったら戦いばっかじゃん。あと全然倒れないし』
そりゃあの二人は戦闘狂だから仕方ないよね。それに同じ生き物かどうか疑うくらいの超再生までもってるし。
浮遊城が落ちた時に首チョンパして心臓が止まっているの確認したはずのファルゼな訳だけど、私が城に戻って寝ている間に普通に姿を現したらしい。
いや、実際に私もファルゼを見た時はかなり驚いたよ。確かに首を切ったはずなのに何事も無かったかのように笑顔で私に抱きついてきたし。しっかりと首がつながった状態で。とりあえず蹴り飛ばしておいたけど。
どうやって元に戻ったのかは全くわからないけど、やっぱりあれくらいじゃ死ななかったよね。やるなら欠片一つ残らないように消し飛ばさないと再生しそうだし。
『だからイルゼについてくんだよー精霊も物作りとか戦闘とかにしか興味がないのが多いからさ』
「そりゃね」
好奇心の塊みたいな精霊さん達は楽しいのが大好きなわけだしね。
『その点、イルゼは争いとか面倒事を望まないくせに向こうからやってくるから見ていて楽…… 娯楽として満点なんだよ!』
「言い直してるけど明らかに失礼な事言ってるからね⁉︎」
この大精霊、欲望に忠実すぎる。いや、精霊はみんなそうか。
「とにかく、私は何もしないの。魔力とかは好きに使っていいけど人に迷惑をかけない範囲で遊んで。私は寝るから」
私は再びベッドへと寝転がり、アイリスと遊ぶのを拒否する姿勢を見せる。私は動きたくないし働きたくないからね!
『えー仕方ないなぁ。ま、すぐに何か起こるよね』
アイリスはしばらくウダウダと言ってたくさどなんか嫌な台詞を残して何処かに消えていった。
「やっと静かになったよ」
静かな自分の時間が戻ってきたことに私は大変満足している。
精霊さん達も好きにしていいから私も好きにさせて欲しいよ。
そう、ごろごろさせてほしい。
「これで惰眠がむさぼ……」
『いるぜ!』
『たいへんだ!』
『でっかいあなあいた』
『ちていじんてきな?』
私が寝ようとしたら精霊さん達が慌しく中に入ってきた。そしてなんとなく匂うトラブルの匂い。
精霊さん達がわーわーと騒いでいる後ろにはニヤニヤと音が鳴りそうな笑みを浮かべたさっき消えたはずのアイリスがいた。
その表情は明らかに楽しんでいるようだ。
そんな慌ただしい様子を見た私は頭を抱えるようにして嘆いた。
「ああ、働きたくないなぁ」
私が惰眠を貪る生活ができるようになるにはまだまだ時間が必要なようだった。
精霊樹のエルフは働かない 完
これにて完結。
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