エルフ、張る
とは言っても相手をしとるのは我ではないからのう。気楽なものじゃ。
アレの相手をしろと言われたとなると我は泣くな。それくらい嫌じゃし。
『さーて相手はどこに……』
おるのかと我が続けようとした言葉を遮るように爆音が森から鳴り響いた。
というかしつこいのう。イルゼのあの状態ならば敵対者はあっさり消し飛ばされてもおかしくないんじゃが。爆発音が継続しておることからまだ相手は生きてるみたいじゃな。
『あー、あれは魔王軍とやらの一人じゃな』
爆発地点へと近づいていくと恐ろしいくらいの魔力を纏ったイルゼとそれから逃げる魔人らしい姿、さらには周りに大量のスケルトンの姿があった。
魔人が魔獣のスケルトンをイルゼにけしかけとるが生半可なスケルトンではイルゼに近づくことすら出来んじゃろうな。
高密度の魔力の守りはもはや一種の攻撃手段じゃ。ただのスケルトンなんぞでは近づいただけで消し飛ばされる。
戦闘人形の怖いとこはこれじゃ。起きてるイルゼならあんな高密度の魔力を纏って維持するなんて出来ないじゃろうし。いや、纏うだけならできるんじゃろうが維持できんじゃろうな。
自分が出来ないことを魔法で出来るようにするなんて普通はできんのじゃがな。あのエンシェントエルフにはわからんのだろうが。
「このエルフがぁぁぁぁぁぁぁ!」
イルゼから逃げとる魔人が悲鳴にも似た咆哮を上げとる。うむ、あやつも弱くはないんじゃがイルゼと比べたらかなり劣る。
起きとるイルゼとなら条件次第ではいい勝負をしそうじゃな。ま、相手をしとるのは寝てるイルゼじゃから意味はないんじゃがな。
悲鳴を上げながらもひたすらにスケルトンをけしかけておるが、イルゼが駆けるだけでスケルトンは消し飛ぶ。
ならばと魔人が骨の剣を伸ばして刺突を放つがそれすらも刃を削るように消し飛ばす。
「り、理不尽!」
『まあ、そう思うじゃろな』
高密度の魔力の守りを突破する方法は二つ。
魔力切れを待つか、もしくは高密度の魔力を上回る魔力でぶち抜くかじゃ。
前者はほぼあり得んじゃろうな。なにせ精霊樹から無限に等しい魔力が供給されておる。それを寝ていない万能のイルゼが使用しておるわけなんじゃから万に一つも破られることはない、
そうなると後者なんじゃが、これも不可能に近いじゃろうな。
つまるところ、完全に詰んでおるんじゃよな。どっちの策を使うにしても魔人の魔力が足りん。
「スケルトンが足止めにもならないじゃない!」
『当たり前じゃ。そんな唯のスケルトンがあの魔力の圧に耐えれるわけないじゃろうが』
「だ、大精霊まできた」
頭上からの我に呟きに気づいたらしい魔人が我を見上げながら絶望的な表情を浮かべとる。我は何もしとらんのだがな。というかする気もない。
『我に気を取られておっていいのか? なにかしとるぞ?』
魔人が我に気を取られている間にイルゼはというと纏う魔力を放出して魔人を囲むように魔力を地面へと走らせて線を作り出していた。
嫌な予感がするので我は素早く方向転換し、魔力の線の外側へと退避。
我は精霊としての力で即座に逃れたが、魔人の方はそうはいかんかったようで、魔人を中心に魔力で描かれた線が円を作り出す。作られた魔力の線が更に輝き、そこから魔力の壁が天へと伸びる。
ああ、なんかやばい予感がするんじゃ。
どう考えても起きてる時のめんどくさがりなイルゼではしないような大規模な魔法。しかも込められてる魔力の量は精霊樹から供給されている無限に等しい量。絶対に碌でもない魔法に違いない。
『結界を構築。対象の隔離を確認。結界内の魔力圧力上昇させます。完了。魔力爆破を開始します』
不気味で淡々とした声が報告を告げた次の瞬間、結界内で爆発が始まったのじゃった。




