エルフ、疑う
『元は氷ひよこと呼ばれる種族じゃったんじゃよ。じゃが氷ひよこは数が少なくてのぅ』
「どうしてよ?」
私は真ん丸お腹を撫でながら聞き返した。フィズの方は謎の竜パワーを使ったのか膨れ上がっていたお腹は元に戻り、すでに昼寝をしていた。
フェルコーネの方はまだ消化できずにぐったり状態である。
『簡単じゃ、氷ひよこの毛皮はとても希少価値があった。それゆえに人間が乱獲したのじゃよ』
「なるほど」
こんなに可愛らしいのに乱獲とは……
人間ってひどいね。
『ゆえに氷ひよこの一族に我は加護を与えたのじゃ。精霊の加護はその生き物の力を増大さす。加護を授けた精霊と受けた生き物の相性が良ければその効果は何倍にも膨れ上がる。その中でもごく稀に力をかなり持つ氷ひよこがおる』
「それがフェルコーネってわけね。でもなんで聖獣なんて呼ばれるの?」
氷ひよこがフェルコーネになった理由はわかった。
名前に氷と付いているのだから氷の精霊であるソラウとの相性はとても良かったんだろう。だからこそ新たな種へと変わったんだろうし。
それでも聖獣と呼ばれる理由がわからないよね。
『そもそも聖獣というのは最上位の精霊によって加護を授けられた生き物の事をさすんじゃ。そして最上位の精霊と言われるそれはいわゆる大精霊と呼ばれる類の存在じゃ』
「え、ソラウって偉い精霊だったの⁉︎」
「きゅい⁉︎」
私と足元でウトウトしかけていたフィズが同時に驚いたような声を上げた。
ソラウが高位の精霊だという事は契約した時に聞いてたけど大精霊というのが何かは知らなかったよ。そうか偉かったのか。
『ふふん! 我は七大精霊の一角である氷の大精霊じゃぞ!』
ソラウが胸を張るようにして誇らしげに言ってきた。
まあ、七大精霊なんて言われても実際に会う機会なんてそうそうないからピンとこないんだけどね。
「つまりその聖獣はソラウの加護を受けてるって事だよね?」
ソラウに尻尾を持たれて宙で揺れるフェルコーネを指差すとソラウは頷いた。
『そういう事じゃな。じゃが疑問なんじゃよ』
「なにが?」
『氷ひよこやフェルコーネというのは先に言ったとおり我の加護が付いておる。つまり寒さに対しての耐性があるわけじゃ。さらには元々寒さに耐性がある種族じゃからな。人間共に復讐した後に住んでる場所も寒い場所なわけじゃ』
あ、確かにそうだ。
寒いところでもなにも問題なく過ごせるのにこんな森にいる理由がないよね。
あとさらっと怖いこと言ったよね? 復讐って。
『それでチビよ。なんでお主はこんなとこにおるんじゃ? お主らフェルコーネの住処はもっと南の氷の大地じゃろうて』
へーフェルコーネって氷の上に住んでるんだ。なんか私が行ったら凍りつきそうな場所みたいだ。
絶対に行きたくない。
エルフ、寒いのむり。
「ぴよぴよ!」
『母親と一緒に散歩してたらはぐれた?チビよ。どうやったらはぐれたくらいで大陸から出るんじゃ?』
「ぴよ」
『途中で変な臭いのするのに追いかけられて川にハマってそのまま流されてここにきたじゃと?何に追いかけられたんじゃ?』
「ぴよ」
『わからんのか』
迷子で飛び出してきたの⁉︎
南の大陸がどこにあるのかわからないけど子供が出歩くような距離じゃないよね!
それになに! 変な臭いのって!
「きみ、ちっちゃいんだから無理したらダメなんだよ?」
ソラウに尻尾を掴まれてゆらゆら揺れているフェルコーネの顔に自分の顔を近づける。
いくら加護を受けていると言ってもまだ子供なわけだし。
「ぴよ!」
『エルフの子供よりボクは大人だ! らしいぞ』
なんかすごく馬鹿にされてない⁉︎
あとなんで一言喋るだけであんな長文になるの⁉︎
ソラウが何か言ってるんじゃなくて⁉︎
「ぴよ」
『しばらくはここで休んでく。居心地いいし、らしいぞ』
「本当に⁉︎ ぴよとしか言ってないよ⁉︎」
こうして精霊樹の麓のログハウスに迷子の聖獣、巨大ひよこが住み着いた。




