精霊、てんかする
異変、というのは唐突にくる。
いや、唐突ではなかったのかもしれない。きっと前兆みたいなのがあったんだと思う。ただ、それに気づく人がいなかっただけで。
例えばそれはいつも精霊樹の側にいて管理しているイーリンスであったり、暇つぶしに森の魔獣を管理しているソラウだったりが気付いたりする。
そんないつもなんとなく異変に気づく存在がいないがために気づいた時には遅かった。
「んー?」
今日も今日とて寝て過ごしていたわけだけど、私の感知できる範囲になんか嫌な気配を感じ取った私は眼を開けた。
この感覚は多分、ダンジョンマスターになってるからわかる感覚かな? 自分の領域がなんか塗りつぶされてるような感じというのか表現に困る。
「精霊さん」
『んー』
『はーい』
『なーに?』
私の周りにいるであろう精霊さん達に声を掛ける。
精霊さん達はまだ私が感知した嫌な感じに気づいていないみたいだ
「森の外側に多分なんかいる。嫌な感じのがね」
『いやなかんじ?』
『ちゅうしょうてきだなぁ』
『もっとぐたいてきに!』
具体的に? 難しいなぁ。こればかりは感覚でしかわからないし。
「なんかドス黒いのが塊が六つでいる感じかな? あとそれとは別に一つだけ凄いのを感じる」
意識を集中したら漠然とはわかる。気持ちが悪いと感じるのは気配は全部で六つ。それ以外にも小さな気配がいっぱいあって一つだけよくわからない大きいような小さいような塊がある。
あれはなんとなくやばい。力がよくわからないからなんかやばい気配がする。
『ならせいれいへいきでやっちゃう』
『そとがわならもんだいないしね』
「じゃ、それで」
精霊さん達の迎撃案に許可を出して二度寝を決めようと考えていたわけだけど、エルフの直感が何かを告げてる。
「アンとトロワを呼んでくれる?」
『あいさー』
用事を頼むと快諾してくれた精霊さんはかなりの速さで部屋の外へと飛んでいった。
やばい感じがするからアンとトロワに精霊樹の城の真ん中にいてもらった方がいい気がするし。ついでにフィズを近くに転がしておけば最悪の事態は避けれる気がする。
「んー、ファルゼが来るみたいな感じじゃないなぁ。あの子は良くも悪くも考えなしだし」
もしファルゼがやってくるなら一直線にここにくると思う。それこそ私の感知範囲に入った時にはすでにかなり近くまでやってきてるくらいの速さで。いや、下手したら気づいた時には横にいるとかもあり得るし。
だからこの感覚はファルゼじゃない。というか以前ファルゼが来た時はなぜか感知できなかったし。
「んー気持ち悪いなぁ」
何かがいるのはわかるけどそれが何かわからないのはなんか気持ち悪い。
精霊さん達の迎撃で吹き飛んでくれたら問題ないんだけど。
不安に思いながら寝るのを諦めた私は窓の側へと行き、庭を眺める。庭の一部の地面が音を立てながらなんか開いてた。
そして出来上がったぽっかり空いた空間に下から何かが上がってきた
上がってきたのは金属の輝きをした巨大な筒みたいなものらしく、見るからに異様なものが静かに鎮座していた。
なにあれ?
見たことがないものだったから凝視していたら精霊さん達がその金属製らしき筒の周りに集まっていた。
『これつくったけとまだためしてないもんね』
『そうとうせんにしかつかえないからしかたない』
『ちょうどよかったよね』
不穏な発言をエルフの耳が聞いてしまった。いや、それで不安の元が消し飛ぶなら今は聞き逃すよ。
『せいれいだいばくさつへいきはっしゃ!』
精霊さんが声高々に宣言すると金属製の筒、精霊さん命名、精霊大爆殺みさいるとやらが地面が揺れるような爆音と煙を巻き上げながら空へと飛び立った。
あれって飛ぶんだ……
『つづいてにばん、さんばんもてんか!』
続けてと言った通り、再び地面の下から精霊爆殺兵器が姿を現しは飛んでいく。
合計で十発も煙を引きながら空を飛んでいった。
あれ、大丈夫なんだろうか……
いや、面倒が減るならそれでいっか。
若干の現実逃避をしながら私は飛んでいく精霊爆殺兵器とやらを眺めるのだった。




