妹、飛ぶ
「はぁ、はぁ」
「よし、これだけ弱れば!」
『いや、本当に鬼じゃな?』
魔力弾の雨をひたすらに撃ち続ける事一日。ファルゼは地面に倒れて荒い息を吐いていた。
まさか一日掛かるとは思わなかったよね。さすがに飲まず食わずだからファルゼもふらついてる。
エルフは飲まず食わずでも動けるけどそれは魔力を使わなかったらの話。
ファルゼも魔力がないとはいえ魔力を動かすことでかなり疲労している。
私もヘルムダートに一日座ってたからお尻が痛い。
でも、ここで手を抜いたらダメなんだよね。
「じゃ、仕上げね」
私が指を鳴らすとヘルムダートの背後から巨大な氷の手が二本現れ、その巨大な腕で巨大な氷の棒を握りしめている。
『なんとなく予想はつくんじゃがな。何をする気じゃ?』
「これでどっかにぶっとばす」
ファルゼがここにいる限り、魔力なしの空間を作らないといけない。そうするとソラウやイーリンスのような魔力にある程度貯蓄がある精霊なら問題ないんだろうけど、魔力を大して溜め込めない精霊さん達は地面でぐったりしてるわけだしね。
さっさとファルゼをどっかにやって周りを元の魔力の満ちた空間に戻さないと。
精霊さん達がぐったり状態で過ごす羽目になるし。
「ぐぅ……」
「いや、本当に我が妹ながら呆れた耐久力だね」
『なんか生き物としての限界超えとるよな』
仮にファルゼにした事をヴィ辺りにしたら多分即死する。いや十回くらい死んでもおまけが付きそうなくらい死ぬと思う。
「うう、お姉ちゃんに帰ってきて欲しいだけなのに……」
「……」
この言葉だけ聞いたら姉思いの妹の発言なんだけどなぁ。
「お姉ちゃんを家に監禁して構い倒そうとしただけなのに」
『怖⁉︎』
ほらきたよ。この子やばいんだよなぁ。
私にべったりなのは基本なわけだし。いや、それだけなら問題なかったわけなんだよね。私を閉じ込めたりしようとしなければ。
言うまでもなく、私はだらけるのが大好きだ。でもそれは自由にダラダラするのが好きなのであって自由なくダラダラするというのとはまた違う物だ。
「だからお姉ちゃん! 帰ってきて!」
「いや、今の発言で誰が帰りたがるの?」
監禁だよ? 監禁。
「三食昼寝鍵付きだよ⁉︎」
「それ自分で開けれないやつだよね⁉︎ あと人の話を聞きなよ!」
人の話を聞かないのは昔から変わらない。あとしつこいのも。
「で、諦めて帰らない?」
帰らないって言ったら実力行使で帰って貰うわけなんだけどね。ええ、物理的に!
「ぐう、今の私ではお姉ちゃんを連れて帰る事ができないというの!」
なんか悔しそうに言ってるけど本人の意向を無視するのはどうかと思うんだけどね?
そんな話をしている間に多少は体力が回復したらしいファルゼはいつの間にか立ち上がり、私を指差してきた。
「今回のところは諦めて帰るけどお姉ちゃん、絶対連れて帰え、かぴぃ⁉︎」
なんかその姿がイラッとしたから氷の腕に指示を出し、手にしていた棒をフルスイングさせる。とんでもない速度で掬い上げるように繰り出された氷の棒は上から目線で宣言をしていたファルゼへと直撃し、色々と砕いたような音を響かせながら空高くへと吹き飛ばした。
「おねぇぇぇちゃぉぁぁぁぁん! またくるかぁぁぁぁらぁぁぁぁぁぁ!」
「いや、こなくていいから」
『元気すぎるじゃろ』
空に体の骨をへし折られたとは思えないほどの元気な声を反響させながらファルゼは飛んでいき、やがて姿が見えなくなったのだった。
こうしてファルゼの襲撃は幕を下ろしたのだった。




