妹、駆ける
「お姉ちゃん! 私、死ぬんじゃないかな!」
爆炎と爆音が鳴り響く中、駆けているファルゼは初めて見るような必死の形相で宙に浮かぶヘルムダートに腰掛ける私に向かって叫んできた。
ファルゼがあんなに必死に叫んでるのは初めて見たね。
「ファルゼ、エルフはこんなのでは死にません」
そんなファルゼの物言いにに私は鼻を鳴らし答える。
エルフなら秘薬があるんだから死ななければ元に戻るんわけだし大丈夫なはずだし。
いや、村の連中なら頭が吹き飛んでも生き返りそうで怖い。
『『『いやいやいや、ふつうはしぬよ? これ』』』
精霊さん達が地面に横たわりながら突っ込んできた。
ほぼ、死なないような存在である精霊さんに言われても説得力がないよね?
いや、魔力を絶対に取れないような環境で閉じ込めたら……
『なんかこわいことかんがえてるきがする!』
『せいれいぎゃくたいだ!』
『ほうていであおう!』
不穏な気配を感じ取ったのか地面で倒れていた精霊さん達が手足をばたつかせながら城の中に逃げ込んでいく。気持ち悪いなぁ。冗談なのに。
「すきありぃぃ!」
私が精霊さん達に意識を向けたせいで砲撃が甘くなったのを隙と思ったらしいファルゼが跳躍してヘルムダートに座る私に迫る。
でもさっきみたいに私の目に映らないほどの速さじゃない。
まあ、速い。ただそれだけだね。
「隙じゃないし」
私が念じるとヘルムダートの横に巨大な氷の腕が現れ、迫るファルゼに向かって横凪に振るわれる。
「てやぁぁぁぁぁ!」
気迫の篭った声を上げてファルゼが迫る氷の平手打ちを蹴りで粉砕。さっきまでなら勢いが落ちることなく突き進んできただろうけど氷の腕を砕いた事で目に見てわかるほどに速度は落ちた。そう、こういうのこそが目に見えてわかるような隙と言う。
「甘い」
「ふぎゃぁぁぁぁぁ!」
そして氷の腕が一本なんて誰も言ってない。
作り出した二本目の腕を速度が落ちたファルゼへと上から振り下ろす。虫を叩き落とすような動作で氷の掌がファルゼを捉え、無様な悲鳴を上げさせ、飛んできた勢い以上の勢いで大地へと逆戻りさせる。
また出来上がったクレーターに向かってヘルムダートが砲口を向け、息の根を止めるよう逃げ場のない広範囲への魔力弾の掃射。
ただでさえクレーターが出来ていた大地が更に抉れていってる。魔力弾を撃ち込みすぎて土煙が凄い。おかげでどうなってるか全く見えないや。
「あ、これは死んだかな?」
『鬼じゃな。実の妹にもマジで容赦ないんじゃな。我が契約者ながら怖すぎる』
なんかソラウがビビってる。
うーん、確かに普通なら死ぬような攻撃なんだけどファルゼだからなぁ。なんか体が切断されても生きてそうなんだよね。
ほら、切れたところから生えてきそうだし。
『それはエルフなのか?』
「薬で腕生えるんだし、体くらい生えそうじゃない?」
試したことはないけどさ。
自分で試したくないし。
「ぬがぁぁぁぁぁ!」
大音量の咆哮が土煙を吹き飛ばすように響き渡る。いや、実際に土煙を吹き飛ばしてるし。なんか空気も震えてるよ。
下を見ると血まみれのファルゼがよろよろとした様子でまだ立っていた。
いやぁ、だいぶ弱ってるね。
「お姉ちゃん! 帰ろよ!」
「……まだ言うのかこの子」
あまりの聞き分けの悪い我が妹によって生じた頭痛に私は頭を抱えるのだった。




