エルフ、ブッ放す
「さ、お姉ちゃん帰ろう」
至る所が傷だらけでありながら満面の笑みでそんなことを言ってくるファルゼ。
我が妹ながら一体何が彼女をそこまで駆り立てるのか全く理解できない。
まあ、その傷自体も今私が見ている限り徐々に治ってる感じがするんだよね。
となると私の考えるファルゼの能力は当たりな気がする。
多分、周りの魔力を吸って自分に当ててるんだろう。
そうじゃないとあれだけの力が魔力の反応がないファルゼから出るとは考えにくいし。
「いやです。どうしてもいうなら無理矢理やってみたら?」
「言質とったよ!」
その言葉を待っていたと言わんばかりにファルゼがまた私の視界から消える。また見えない。だけどそんな事は関係ない。
座っているヘルムダートへと魔力を注ぎこみ、本格的に性能を発揮させる。
そして私に抱きつこうとしていたからか減速して姿が見えるようになったファルゼは私に抱きつくように手を広げて飛びついてきたわけだけど、その手は宙を空振る羽目になった。
「あれ?」
私を捕まえたと思ったらしいファルゼはキョトンとした様子を見せている訳だけど、特に凄いことをしたわけじゃない。
ただ単純にファルゼが私に飛びついてくるよりも更に速くヘルムダートは起動し、瞬時に宙へと移動しただけなんだから。
「次は私の番だよね?」
眼下のファルゼに向けてそう宣言するとヘルムダートに座ったまま指を鳴らす。パチンという軽やかな音じゃなくへにゃって音がしたけど気にしない!動作が必要なんだからね。
そんな動作と私の魔力によって宙に浮かぶヘルムダートの下に巨大な砲身が生成される。
そしてその砲口はというと当然、地上にいるファルゼへと向けている。
「うて」
私の声に呼応してヘルムダートが砲口から凄まじい勢いで魔力を放出。
フィズの竜魔法に負けないくらいの閃光が放たれ、瞬きをする間もないくらいの速さでファルゼへと直撃したように見えた。それだけで地面が弾け飛んでるわけだけど私の眼にはファルゼが寸前で片手を閃光に向かって振るっているのが見てとれた。
あれに反応するとか本当に化け物じみてる。
「痛い! 右手で弾いたのに痛いし!」
「いや、普通は弾けないから」
閃光が消えた後には右手が赤黒くなっていることに叫くファルゼの姿があった。普通なら消し飛んでもおかしくないんだけどね。
まあ、性能実験には丁度いいよね?
「精霊さん、色々試しときましょうか」
『ぼくたちもきになる』
『じっけんだぁ!』
精霊さん達も乗り気です。
だから色々試しますよ。
「やられっぱなしはい嫌だし!」
ファルゼが地面を砕くくらいの勢いでこちらに向かって飛翔。右手がぶらぶらと揺れてるのは多分動かないからかな。
魔力を吸収するといっても一度に吸収できる量があるのかもしれない。
多分魔力砲を連射したら勝てる。
「そんな事しないけどね。黒騎士!」
『ギョイニ』
ヘルムダートに魔力を注ぎ、黒い指輪をした手を前に突き出しながら黒騎士へと命令を下す。すると指輪が淡く光り輝くとヘルムダートに座る私の後ろの空間が歪み、そこから大量の氷の腕が現れた。
『『『ひぃ!』』』
精霊さん達が悲鳴を上げてる。
いや、私も上げた。気持ち悪いくらいの数がいきなり出てきたんだもの。
でもビビってる場合ではない。
「ラッシュ!」
現れた腕が飛んでくるファルゼに向かって一気に伸びる。そんな大量の腕がファルゼへと向かう。
「負けない!」
対峙するファルゼは右手が使えないにも関わらず迎撃を開始、こちらに向かっていた勢いは氷の拳を迎え撃つ時点で喪失してる。それどころか拳を砕くたびに地面へと押し返されてる。
魔力で作られた拳だからある程度は無効化してるんだろうけど、氷の拳は私が魔力を供給する限りひたすらに出現するから防御が間に合ってない。
「くらえ」
そんな防戦一方のファルゼがついに地面まで押し返されたのを見た私は再び魔力を放つべく砲口をファルゼへと向ける。
動きを止めたファルゼには避ける術はあるまい!
「ふぁるぜーすーぱーそーど!」
氷の拳を喰らい続けているファルゼからなんとなく悪寒を感じだから拳の乱射を止めず、砲身を向けたままヘルムダートの高度を上げる。
それと同時に閃光が疾り、ファルゼへと放たれていた氷の拳全てが砕け散る。
氷の残骸が降り散る中心にはどういう理屈かわからないけど輝いている左手を振り切った姿勢のファルゼがいた。
ああ、理不尽だよ。物量でも押し潰せない。
面倒な事この上ない。
だってファルゼって全身武器なんだもん。
「はぁ、発射」
ため息をつきながらヘルムダートから魔力砲をブッ放す。
「二度目は効かないし!」
それをファルゼは輝く左手を一閃させてきた。さっきは右手を潰せたはずの閃光が光り輝いているファルゼの左手は潰すことができてない。それどころか左手は閃光を切り裂いてるし。
本当に理不尽だよね!




