エルフ、要求する
「がぼぉ⁉︎」
いきなりポーションを口に入れられたヴィはかなり驚いている様子。
不用心ですよヴィ。私がもしヴィを殺す暗殺者とかだったらもう死んでるわけですし。
「い、イルゼ様⁉︎」
「ついに陛下を殺す気⁉︎」
なんか後ろでアンとトロワが騒いでます。
なんですかついにって。別に殺す気はないんですけど?
まぁ、今口の中に入れてるのは回復のポーションであって毒薬でもなんでもない物ですから死んだりはしないんですが、確かに絵面だけ見ると私がヴィを殺そうとしているように見えなくもないです?
私の村で作られてた毒薬なら一滴皮膚に触れるだけで死ぬようなヤバイやつもありましたけど私には作れませんし。
「いや、なんかお腹が痛そうだったから回復ポーションを飲まそうかと……」
「死ぬ! 死にますから!」
「窒息死しちゃうよ!」
窒息死……
なるほど。ポーションをいきなり口の中に入れられたから呼吸ができないと? いや、よく考えたらさっき私も死にかけたね。ポーションで!
「二時間くらいなら呼吸しなくてもエルフなら生きていられますよね?」
「「いや、陛下は人間だから! あとエルフは三十分くらいしか止めれないから!」」
えぇ…… そんな短い時間しか息止めれないんですか?
重りつけて湖に放り込まれたら死んじゃいますよ?
私、村にいた時に沈められたことあったんですけど。あれって私を殺そうとしてたんですかね。
次会ったら締めましょう。覚悟してなさいあいつら。
「ぜぇぜぇ…… ポーションで殺されるそうになるなんて思わなかったよ」
息を乱したヴィの奴が私を睨んできてます。
仮にこれで死んだら肉体的には健康なまま溺死となるわけだからなかなか奇怪な死に方になるわけだしね。
いや、ヴィに死なれたらまた面倒な事になりそうだしな。少なくとも私がいる間は死なないように努力してもらいたい。
「で、何の用?」
「は? 殺しますよ?」
「なんで喧嘩腰⁉︎」
あっけらかんと言い放ったヴィを睨みつける。
「ちゃんと邪魔者から守ったんだから報酬をもらいに来たの。踏み倒す気ならちょっと街の一部を吹き飛ばす」
回復しつつある魔力を手へと集め、翡翠色の風を発生させる。そんな私の魔力の高ぶりに気づいたらしい精霊さん達があちこちから姿を見せ始める。
『いるぜやっちゃう? やっちゃう?』
『ふういんされたちからをつかうときがきたようだ』
『ていこくふきとばすてきな?』
『あたらしいまほうためしていい?』
『あたらしいまどうぐも!』
わらわらと集まり始めた精霊さんの数にヴィの奴が目を見開いてギョッとしてるのがわかる。
私の背後にいるであろうアンとトロワには驚いたような気配がしないけどきっと精霊さん達の物騒な物言いに顔色を悪くしているだろうなぁ。それほどにテンションが高めの精霊さん達の魔力が荒ぶってる。
「じょ、冗談だよ! 報酬の件だろ!」
私が発した魔力というより、集まってきた精霊さん達が嬉々として準備し始めている様々な物に怯えたらしいヴィが声を震わせる。
なんだわかってるんじゃないですか。
「そうです。わかってるじゃないですか」
あんまりにもふざけてるなら精霊さんに暴れてもいいよって許可を出すところだったよ。精霊さん達は不満げだけど。
「じゃ、さっさと報酬の寝具をよこしてください」
それが目的なんだから。
手に入れたらそのまま森に帰るし。貰った寝具を堪能しながら疲れを取るために三年くらいは寝ときたいね。
あ、でもイーリンスに叩き起こされそうだなぁ。
「そ、それなんだけどね」
私が手をヴィに差し出して報酬を要求するとヴィの奴は何故かバツの悪そうな表情を浮かべて私を見ていた。なんです?




