エルフ、面倒くさがる
「なにこれ?」
目の前に落ちてきた黒い塊を見て頭に幾つもの疑問符が浮かぶ。
それと同時に無意識に重い体が自然と動き後ろへと飛び下がり、黒い塊と距離を取った。
『む』
『ふしぎなけはい』
周りの精霊さん達も僅かに警戒しているのか魔力がほとんど空に近いはずの精霊武器を構えていた。
いや、魔法をぶち込んでいた。
「われにたいしつふけいである!」
精霊さんに魔法を叩き込まれた黒い塊は吹き飛びながらも形を変えると黒い人型、さっき城に飛んでいったはずのゴーシュの姿へと変わった。
あんな黒かったっけ? 日に焼けた?
首を傾げてさっき見たゴーシュの姿を思い出している間にも精霊さんによる攻撃は続く。
『れあものだ!』
『ほかくほかく』
魔法の乱射と精霊武器、中には虫取り網みたいなのを構えた精霊さんが黒いゴーシュへと突撃していく。一体何が精霊さんをそこまで追い立てるんだろう?
「うっとうしいわ!」
精霊さんの魔法を喰らい続けていたゴーシュが怒り、反撃するかのように魔法を放ち返してきた。って精霊さん達の魔法より数が多い!
精霊さんも迎撃してるけど魔力が足りないからかすり抜けもかなり多い。
慌てて私は城の入り口へと飛び込み、壊れかけた扉に張り付くようにして隠れる。それに追従するように精霊さん達も逃げてきた。
少し遅れて幾つもの魔法が私達の隠れた扉へと叩きつけられた。
「精霊さんなんとかして」
『むり』
『むちゃ』
『まりょくたりない』
精霊さんにも無理らしい。
まあ、魔力が原動力である精霊さんに魔力なしでどうにかしろというのは無理な話なのかもしれない。
「こうなればしろごとふきとばしてくれるわぁぁぁぁぁぁ!」
壁に隠れ、黒ゴーシュの様子を見るべく顔を僅かに出して伺い、なんかよくわからないけど怒ってる様子を目にして思わず焦った。
「やば」
黒ゴーシュの体が人型ではなくなっていた。なんというかでっかくなってた。
それこそさっきの言葉、「城ごと吹き飛ばす」を実現できるくらいに。
『でか!』
『しろつぶれちゃう?』
『かたちがどらごんぽい?』
城よりも巨大になった黒ゴーシュはすでに人型ではなく、パッと見た感じはずんぐりとしたドラゴンみたいな形だ。
それでもさっき戦ったスケルトンドラゴンよりも遥かに大きい。
あんなのに踏まれたプチっと潰れちゃうよ。
『しろごとぶっつぶすぅぅぅぅぅ!』
黒ゴーシュドラゴンがその巨腕を大きく振り上げ、そして勢いよく振り下ろす。
そんなの食らってたまるかぁぁぁぁぁ!
悲鳴を上げる体に鞭を入れて私は全力で腕が下ろされる範囲から脱出を図る。
私は必死だけど飛ぶことができる精霊さん達はどこか楽しげだ。
いや、君達は死んでも精霊界とやらで復活するからいいよね!
振り下ろされた腕はヴィの城を軽々と壊し、そして手が地面に叩きつけられた瞬間、立っていられないほどの揺れが私達を襲った。
その揺れで半壊していたヴィの城がさらに壊れる。
「もう面倒だし帰ろうかなぁ」
寝具よりも面倒くさいの上回ってきたよ。
『ゔぃぃぃぃぃぃぃぃ!』
ヴィを呼んでるのか咆哮を上げてるのかよくわからない叫び声を上げている黒ゴーシュドラゴンを見て、私はため息をついたのだった。




