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精霊樹のエルフは働かない  作者: るーるー
帝国激動編
276/429

前皇帝、薙ぎ払われる


「やばい」

「やばいな!」


 ゴーシュが黒い水溜りに覆われた瞬間、今までになかった感触が部屋を覆い尽くし、ボクの体に悪寒が走った。

 それはレオンも同じだったようだ。

 だけどレオンは黒い水溜りにゴーシュが包まれ、守っていた黒い球体が無くなり、飛んでくる魔法が途絶えたと見るや否やボクから無理矢理引き出した魔力を全身に纏うと閃光と見間違えるような速度でゴーシュに向かい剣を振り上げながら斬り込んだ。

 突然、かなりの魔力を一気にレオンに取られた事により目眩がするけど、文句は言うまい。

 レオンはここが勝負所と判断したんだろう。

 両手に持つ聖剣が左右から振われ、黒い球体による防御が無くなったゴーシュへと叩き込まれた。

 そして聖剣を叩き込まれたゴーシュはというと、下半身を残し、黒い雫を撒き散らかすようにして爆散した。


「え?」


 あっさりとゴーシュが爆散した事にボクの口からあまりに間抜けな声が漏れた。

 だってあれだけ色々演出してたのにあんな簡単に吹き飛ぶなんて想像してもいなかったよ。


「ちっ、面倒な!」


 そんなボクの心境とは裏腹にレオンは舌打ちを一つすると更にボクから魔力を吸い上げ、聖剣を神々しく輝かせる。

 あのヤバげな輝き具合からして城くらい軽く吹き飛びそうなんだけど!


「レオン⁉︎」

「ヴィ、下がってろ。こいつ魔獣と融合してやがる」


 レオンが警告し、再び聖剣をゴーシュの残骸へと振るう。

 再び、爆散するゴーシュ。飛び散る黒い雫。

 黒い雫は辺りへと飛び散り、至る所に黒い模様を残していた。いや、よく見たらマーダーベアの死体をを取り込んでる?


「「「ひひひ、むだだよむだ」」」


 至る所に飛び散った黒い雫から声がだぶって聞こえて来る。


「「「このくろいしずくすべてがわれだ。ひとつつぶしたところで」」」


 飛び散り、染みにはずの雫がまるで時間を巻き戻すようにして一箇所に集まり姿を形取っていく。

 そしてそこに姿を見せたのは不敵に笑うゴーシュ(真っ黒バージョン)だった!


「むだだというこぱぁ⁉︎」


 ドヤ顔で宣言してきたゴーシュにレオンは容赦なく聖剣で攻撃を加える。

 喋っている途中に頭が吹き飛んだから何言ってるかわからないなぁ。

 しかし、頭が吹き飛んだにも関わらずゴーシュの吹き飛んだ部分に飛び散った雫がまた集まり頭が再生される。


「だからむだだぱぁ!」


 頭が吹き飛んだ。頭が再生れた。


「だからむぴぃ!」


 頭が吹き飛んだ。頭が再生された。


「だかぺぇ⁉︎」


 頭が吹き飛んだ。頭が再生された。


「いいかげんにしろ! なにもせんかったらちょうしにのりおって! われにもしゃべらせんか!」


 またレオンが聖剣を頭に向かって振り抜いて頭が吹き飛んだけど、ゴーシュの奴は胸元にも顔を作ったのかそっちがちゃんと喋ってた。普通に気持ち悪いんだけど……


「気持ち悪い」


 同意見だったらしいレオンは容赦なく胸に現れたゴーシュの顔を斬りつけた。


「きさまらにはかいわするというのうりょくがないのか!」


 また違うところに顔が現れたゴーシュは怒りの表情を浮かべていた。

 なんで怒ってんのかなぁ?

 今まで散々クーデターやってきて会話なんてする気がなかった人が。

 いい加減に話を続けたいのでレオンに目線で合図を出せばレオンも斬りつけるのをやめた。

 それを好機と見たのかゴーシュの奴は素早く体を再生させると背後へと飛び距離を取った。

 側から見ればレオンにビビってるようにも見える。


「ふ、ふん、まあいい。まじゅうとそしてこのほうじゅといったいかしたしんのこうていたるわれのちからをくらうがぺぇぇぇぇ⁉︎」


 またもゴーシュの奴は話している間にいきなり横に吹き飛んだ。まるで何かに薙ぎ払われたかのように。しかも雫が飛ぶ事なく床ごと削られて。

 吹き飛んだゴーシュは壁へとぶつかり壁ごと爆散。壁にも大きな穴を開け外の青空が見えるくらいだ。


「レオン、話し合おうとしてたのに」

「生憎だが俺じゃない」


 非難を込めた目をレオンへと向けるとレオンは肩をすくめながらある方向を指さした。

 レオンが指差した方へ視線を向けると、


「きゅぁぁぁぁぁ」


 大きく欠伸をしながら、我が物顔で謁見の間の一角を占領しているエンシェントドラゴン、フィズの姿があった。

 しかも残像が残るような速度で尻尾を振っていた。

 ああ、そういえば最近日当たりがいいのかあの辺で昼寝してるのよく見てたなぁ。今日も寝てたみたいだ。


「多分、昼寝の最中でうるさかったのと近づいてきたから尻尾で薙ぎ払ったんだろうな」


 よくよく見るとゴーシュが後ろに下がった所はフィズのすぐ近く、尻尾の間合いだった。


「とりあえずはレオン、トドメ刺しに行ってきて」

「ああ」


 なんとなく締まらない雰囲気になりながらもレオンは頷き、外に飛び出していき、フィズはというと再び昼寝を再開したのであった。

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[一言] フィズが出ちゃいましたか。
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