エルフ、吸い込まれる
「よ、よし。おじいちゃんは倒れたけど魔力は均衡しているから後は私が吹き飛ばせばいいだけだよね!」
隣で悲しさから吐血し涙を流して倒れ込んでいるおじいちゃんを横目に私は現場の打開案を提案する。
ようはこの異空間を私の力でぶち抜いて穴を開けて逃げればいいわけだしね。
細かい魔力操作なんて必要なく魔力を盛大にこめればいいだけなら簡単だ。
『ふぃずのまほうがきっこうしてるあいだに〜』
『はやめにねー』
『ぜんりょくでねー』
「はいはい」
私の魔力なんてたかが知れてるだろうけど精霊さんが作ってくれた精霊樹剣があれば多少は増幅されるから問題ないはす。
「あ、精霊さん、まだこの空間にいる生きてる人確保して連れてきて。一緒に逃げるなり捕まえるなりしないといけないから」
『がってん』
『しょうちー』
新しい遊びだと思っているのか精霊さん達の何人かが楽しそうに飛んでいった。
まあ、無理しない程度で問題ないよね。
出来ればでいいわけだし。
おじいちゃんはヘテルベルを捕まえたかったみたいだけど死んじゃったしね。代わりがいるだろうし。
「さて、やりますか」
手にしている精霊樹剣に意識して魔力を流し込む。
今まで使っていた身体強化の魔法も切ったから存分に流し込める。
『うーん』
『かいりょうがいるかんじ』
私が精霊樹剣に魔力を込め始めてしばらくして私を見ていた精霊さん達がそんな事を言ってるのが聞こえた。
あれ? あんまり魔力が増幅されてない感じなのかな? そうなるともっと勢いよく魔力を込めた方がいいのかな?
とりあえずは精霊樹剣に流す魔力を倍にしてみる。
すると今までは柄から透明な魔力の刃が伸びてなんとなくそこにあるというくらいにしかわからなかったのが私の眼でも見えるようにドス黒い刃へと変わった。
ついでにその黒い刃はなんか細かく振動してるし、精霊樹剣からなんか壊れそうな感じの嫌な音が響き出した。
これはやばいやつだ。
『いるぜ! はやくけんつかって!』
『ぜんりょくでふるだけでいいから』
『おーばーふろー』
『まりょくがばくはつしちゃう』
音が響き始めたのが精霊さん達にも聞こえたのか焦ったように精霊樹剣を使わせようとしてくる。いや、私も危険なのは嫌だからね?
手にしていた精霊樹剣を大きく振り上げ、何もない天井に向かって黒い刃を力一杯振り抜いた。
精霊樹剣を振り抜いた軌跡に黒い線が弧を描くように疾った。
ん? なんか斬ったような感じがする。
でも剣を振ったのは何もない天井のはずなんだけど……
いや、宙に描かれた黒い線が消えてない。
というかこれなんだろ?
空間に引かれた一筋の黒い線が気になって見ていると、やがて黒い線を中心にするように体が引っ張られ始めた。
よく見たら黒い線が黒い穴に変わってるよ!
周りの物を手当たり次第に吸い込んでるし、あれって今空間を壊そうとしてるのと一緒のやつじゃないの?
吸い込まれないように魔力を込めて足を地面に突き刺して耐えてみるけど引っ張られる力の方が明らかに強いし!
「な、なに⁉︎」
『くうかんをきったの』
『そとにでれるよー』
『たぶん』
私が驚きながら吸い込まれないようにしている中、精霊さん達がなす術もないと言わんばかりに楽しそうに吸い込まれていく。泣き崩れていたおじいちゃんも抵抗することなくあっさりと吸い込まれた。
『きゅうぅぅぅぅぅ⁉︎』
それはどうも竜であるフィズも同じだったようで悲鳴を上げながら吸い込まれていった。
「にょわぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
そんな竜であるフィズが耐えれない吸引力に私が耐えれる訳なく、地面に突き刺していた足は黒い穴の吸引力にあっさりと敗北。
引っ掛かりがなくなった私は精霊さんやフィズ同様に黒い穴へと吸い込まれていくのだった。




