剣聖、動く
『だからー』
『あれはいるぜせんようなの』
『いるぜがつかってるかぎりはだいしょうなんかないんだから!』
代償があると聞いてから私が不機嫌になったのがわかったのか精霊さんは慌てて言い訳みたいな事を言ってきます。
「でもヘテルベルは普通に使ってるんだけど?」
ヘテルベルは全てを切るとまでは言わなくても精霊樹剣を使いこなしてるように見えますよ? 私なんかよりもずっと!
『うーん、あれはね』
『おまけてきな?』
『それとまえがり?』
オマケ? 前借り? どういうことでしょう?
『みてればわかるよー』
『そんなにじかんはかからないしー』
首を傾げる私に精霊さんは明確な答えを告げる事なく観戦状態です。
私の頭の上にいるフィズも大きく欠伸をしてますから危険は感じてないんでしょうね。
というか全てを切ることができる剣(仮)の前だというのにこの緊張感の無さはいかがなものかと思いますけど……
「そろそろ儂も本気を出すぞい」
ヘテルベルに吹き飛ばされるようにして私の横に着地したおじいちゃんが笑いながら、いや、眼は笑ってないかな? そんな状態で告げる。
おじいちゃんの体から目に見える程の魔力が吹き出し、それと混ざるように威圧感も放たれ始めた。
「なんか混ぜてる?」
おじいちゃんの炎のような魔力と闘気? らしき物がどう混ざり合っているのかわからないけど、それはおじいちゃんの体を取り巻き、鈍く輝きながら模様を作っていた。
なんか綺麗だなぁ。あれって多分魔力と闘気を凄く繊細に動かしてるからできる事なんだろうけど私には無理だね。
細かいこと苦手だし。闘気とか出せないし。
「参る」
両手に剣を持ったおじいちゃんが小さく告げると姿が消える。
当然、私の眼に映らない。
周りを飛ぶ何人かの精霊さんは見えてたみたいで視線が動いているのでその視線の先を追うようにしてそちらを見るとヘテルベルへと斬りかかるおじいちゃんの姿があった。
ヘテルベルの奴もどうやって感知したのかわからないけどおじいちゃんと対峙し、手にしている精霊樹剣を繰り出す。
精霊樹剣の攻撃を防げないと知っているおじいちゃんだけど臆する事なく進み、手にしている魔剣を閃かす。それを迎え撃つようにヘテルベルも精霊樹剣を振るう。
「あれじゃ魔剣が斬られるんじゃ」
しかし、私の予想を裏切るようにおじいちゃんの魔剣は精霊樹剣に斬られることなく刃を止め、鍔迫り合いのような形へとなった。
『いや、あのおじいちゃんやるー』
『せいれいじゅけんのやいばじゃなくてつかねらったね』
『じゅくれんのしょくにんわざー』
なんか最後は違う気がする。
あ、でもほんとだよく見たらおじいちゃんの魔剣は精霊樹剣の黒い刃にはぶつかってないや。柄の部分にぶつけてるし。
「じじい!」
「ふむ、儂の片手はまだ自由じゃがいいのか?」
ヘテルベルが両手で精霊樹剣を握り、鍔迫り合いをしているのに対しておじいちゃんの方は片手一本。
そして空いた片手に握られている魔剣がヘテルベルの頭へと迫る。
でもヘテルベルは驚きながらも迫る刃へと顔を動かし、大きく口を開け、硬質な音を響かせながら魔剣を歯で噛んで受け止めた。
いや、あんなの失敗したら死ぬじゃん。
でもあんな危険な事は私は絶対できないね!やったら頭が顔が半分になりそう。
そんな危険なことをやってのけたヘテルベルに私は感心し、おじいちゃんも僅かに目を見開いて驚いていたけどまだ戦いは続けれそうだと言わんばかりに笑っていた。
『すきありー』
『せなかがらあきー』
そんな楽しそうにしている空間にヘテルベルが動けないと判断したらしい精霊さんは背後から迫り、その背中に武器を幾つも突き立ていたのだった。
台無しだよ!




