鬼、吹き飛ぶ
竜の攻撃というのは非常に強力な物だ。
普通の人ならちょこっとかすめるだけでも死んでもおかしくない。というか死ぬ。
それが尻尾で、もし放ったのが成体の竜なんかが使ったのが直撃なんてしたら人間の体なんかは原型が判らないくらいに潰れてしまうのが必須。
昔話では竜の何気ないくしゃみで国が吹き飛んで地図から消えたという話もあるくらい。
つまりは竜のちょっとした動作でもただの生き物ならば死んでしまうくらいの威力を持つという事だ。それ程までに竜の体から繰り出される攻撃というのは強力な物のだ。
その割にフィズは結構私に体当たりをしてきたりしてる。手加減はしてくれてると思う。多分……
たまに直前に食べたりした物を吐き出しかねないくらいの勢いで体当たりしてくるけど。愛情表現だと信じたい。
それはさておき、そんな子供とはいえ竜であるフィズの攻撃を受けてまるで効いてないのか耐えたのかわからないけど見た目が無傷でいるヘテルベルは確かに凄い。
でもね?
「フィズの尻尾による攻撃だしねぇ」
『どういうことー?』
『しっぽつよいよー?』
まあ、強いよ。尻尾は。
でも竜の本来の武器じゃない。
竜の本来の武器というのは巨大な身体に聖剣にも劣らない切れ味を誇る爪と牙、そして魔力に物を言わせて放つ魔法、ブレスなんだから。
「フィズ!」
「きゅう!」
日頃、フィズには狭い場所でのブレスは禁止と言ってある。これはブレスの威力もえげつないこともあるけど私が逃げきれないこともあるからだ。
ただし、それは準備をきっちりとしてなかった場合。
「精霊さん、防御を」
『はーい』
『はりまくりー』
『ぜったいぼうぎょてきなぁ』
気安い返事と共に精霊さん達と私の周りに幾つもの魔法で防御が張られていく。ついでに私も自分の魔力を使って風による防御壁を目の前に展開しておく。まあ、私の風の防御はほんの気休めにしかならないだろうけどね。
『かじょー』
「死ななければいいんです」
軽く見積もって痛い思いや死ぬリスクを上げるなんて馬鹿な事はしたくありませんしね。余力があるうちは全力を出しておくべきです。
「フィズ、やっちゃって。ブレス解禁!」
「きゅう!」
私がヘテルベルを指さした瞬間、フィズが大きく息を吸い込み、さらに魔力を口に集めていくのがわかりました。
「やらせるか!」
ヘテルベルもそれに気付いたのか金棒を振り上げ、床を砕くほどの勢いで距離を詰めてきます。
瞬く間に距離を詰めたヘテルベルは振り上げた金棒を容赦なく振り下ろしてきた。
明らかに今までとは威力の桁が違いそう。だって金棒唸ってるし。なんか振り下ろしてくる時の音が今までとは別物だし。
こんなの当たったら私、絶対に死ぬよね? 即死だよね?
そんな緊張感もないような事を考えながら私は迫る金棒を眺めていた。
そして金棒は寸分違わずに私の頭へと迫り、ヘテルベルの勝利を確信したような笑みを私は目にしたわけだけど。
『むだー』
気の抜けるような精霊さんの声が耳に入ったときには、ヘテルベルは精霊さんの張った防御壁と私の風に弾き飛ばされてた。




