エルフ、振り回す
「なんだエルフのくせにやる気か? そんな刃のない柄だけの武器で?」
「……」
私が抜いた精霊樹剣を馬鹿にしたように、そして不快気に笑うヘテルベルを私は笑顔で眺める。
寝具いや、神具を破るとか言った奴に慈悲はない。死すべし。
抜いた刀身のない武器、精霊樹剣でただ目の前の空間をただ凪ぐ。
もちろん、イラついた分の魔力を込めて。
振るった軌跡をなぞるように精霊樹剣から放たれた不可視の斬撃が飛ぶ。
それはどうやって感知したのかわからないけどヘテルベルが手にした金棒で受け止めようとしたみたいだけど、奴の馬鹿にしたような笑みが一瞬にして消え、焦ったようにして金棒で受けることなく身を屈ませることで見えないはずの斬撃を躱した。
次の瞬間にはヘテルベルの頭上の空間に一筋の線が閃いて空間が、いや、アジト全体が揺れた。
「あっぶねぇ!」
「ちっ、首刎ねて終わろうとしたのに」
意外と鬼の勘が良かったみたい。
本能的に受け止めたらやばいとわかったのかも。
受け止めたら金棒ごとヘテルベルの首も両断できるくらいの魔力は込めておいたのに残念だ。
風の刃でも首を刎ねれるかもしれないけど、なぜかヘテルベルの首を切るイメージができなかったから精霊樹剣を使ったわけだけで。
『こ、こわい』
『いるぜもいーりんすさまとおなじでおこらしたらだめなたいぷだぁ』
「きゅいきゅい……」
「精霊さん達は下がってください」
巻き込みますよと言葉を続けようとしたところで精霊樹剣を盾のように構える。続いて腕が痺れるような衝撃と浮遊感。
吹き飛ばされながら目の前を見ると金棒を振り切った姿勢のヘテルベルが目についた。
「やるじゃねえかエルフ!」
壁に背中からぶつかる寸前に魔力を大量に放出、体に急制動が掛かり地面へと着地。それと同時に精霊樹剣を振り上げ、降ろす。
魔力による斬撃が床と天井を切り裂き、抉りながら突き進んだけどヘテルベルの奴は軽やかに躱してる。
避けられて腹が立ったので手にしている精霊樹剣を適当に振り回す。
結果、なんでも斬る見えない魔力の斬撃がそこいら中に飛びまくります。
『いるぜー!』
『いくうかんがもたないよー!』
精霊さん達が避けながら叫んでます。
そんな簡単に異空間とやらは壊れないでしょう?
なんか揺れてますけど……
「出鱈目な魔力だな!」
「じゃ、さっさと斬られてよ!」
結構狙って飛ばしているはずの魔力の斬撃なんだけど何故かヘテルベルの奴は躱してる。見えないはずなのに躱してる。
結果、私の腹が立つ。
「はぁ」
これ以上やっても成果が得れそうにないので精霊樹剣を適当に振り回すのを辞めて深いため息をつく。
「なんだ魔力切れか? だったら今度は俺の番か?」
私が諦めたように見えたのかヘテルベルが今度は自分の番と言わんばかりに手にしている金棒を構えてきます。
「いや、めんどくさくなったんでさっさと終わらします」
「さっきの攻撃じゃ俺にはあたらないぜ?」
そんなことはわかってます。
なぜか見えないはずなの魔力の刃をまるで見えてるかのように躱してますし。
私では当てれるという確信が得れませんし。
「だから当てるんじゃなくて当たるようにします。フィズ」
「きゅー」
私の声に反応してフィズが肩へと止まります。そんなフィズの前に手を差し出し、フィズを手のひらに乗せ、今度はヘテルベルの方へとフィズを向ける。
そんなフィズを見てヘテルベルは笑みを浮かべていた。
「そのチビの攻撃も俺には効かなかっただろ」
「きゅうぅ!」
「フィズ」
馬鹿にされたとわかったらしいフィズがヘテルベルに飛びかかろうとしたのか翼をはためかせましたが私はフィズの尻尾を掴んで飛び立とうとするのを阻止。
飛べなかったフィズが不満げにこちらを見てきますが頭をなでる。
「フィズの一撃を止めた気になってますね」
『でもきかなかったよ?』
『ばしばしやってたのにね』
『ほぼむきずー』
私が精霊樹剣を振り回すのを辞めたので危険がなくなったと判断したらしい精霊さん達が私の周りを飛び回りながら囁きます。
まあ、確かにフィズの尻尾による攻撃は確かに効果はなかったですよね。
そう、あくまでも攻撃したのは尻尾なんですよね。




