帝国、動く
「陛下、これは下手をすれば手にするだけで皇帝の座を手に入れることが可能かもしれない程の武器ですぞ? それを失敗作? 貰った? ほっほっほ、爺の耳が耄碌しましたかのう」
うん、ジェフ爺はまだ耄碌してないよ。
耄碌してるジジイならドラゴンを剣一本で殺したりしないしね。
あと血走った目で剣を見るのはやめてほしい。かなり怖い。
「ジェフ爺、これは本当の事だよ。あの精霊達はこの二本の剣を失敗作と呼び、普通の土産のように渡していったんだ」
一瞬、会議室を沈黙が支配した。
いや、そうなるよね? 爺が認めるほどの剣、しかも国を割るかもしれないような古代魔導具級の武器をポンと渡してきたわけなんだから。
「……これで失敗作なのであれば成功作とは一体どのようなものなの」
テレサが声を震わせながら呟く。
うん、そう思ってもおかしくないよ。それにテレサ、君は運が良かった。
「テレサ、君とイルゼが戦った時に彼女が手にしていた柄だけの剣、あれが成功作らしいよ」
「え……」
テレサの顔が真っ青になる。
そりゃそうだ。今テーブルに置かれている二振りの剣ですらとんでもない代物なのに失敗作。それを超える成功作の剣を手にしていたエンシェントエルフと戦っていたわけなんだからさ。
下手したらテレサは死んでたかもしれないわけだし。
「すでにわかってると思うけどイルゼの逆鱗に触れると帝国は地図から消える。いや地図上から消えるくらいならまだいい。下手したら新しい地図に書き換えられる」
帝国どころか帝国の存在する大陸ごと消しとばされたとしてもおかしくない。
イルゼ本人を見ているとそれほど危険じゃなさそうに見えても実際にはそれくらいにやばい現状なんだ。まさに綱渡り状態。
「だから証拠を固める。イルゼが銀の滴を叩き潰す前に背後にいる愚か者共を一網打尽にするだけの証拠をね」
そうすればイルゼに銀の滴を潰されても問題ない。
ついでに罪をなすりつけれる対象がいるというのがいい。帝国への攻撃じゃなく目障りな貴族への攻撃を切り替えてもらう。
これには帝国の命運が掛かってる。
失敗すれば帝国がどうなるか想像もつかない。
「だから騎士団には全力で動いてもらう。文官達もしばらく休みがないとおもってね」
『仰せのままに』
どうやら皆に僕が感じている危機がわかってもらえたようだ。特に疑問が挙げられる事もなく話が進んでいく。
こうして帝国始まっての危機に帝国は一丸となって立ち向かっていくのであった。
ちなみに、精霊達から貰った剣二振りは聖剣を持つレオンは辞退、ヤークウッドとテレサはあまりの怖さから顔を青くして拒否したため二振りとも血走った目で見ていたジェフ爺の物となった。
ジェフ爺は欲しかった物が手に入ったからかなりご満悦だったね。




