精霊、あおる
「精霊さん、あいつボコしていいですよ」
ヴィが困ってるのにまだ睨みつけてくるヤークウッドと呼ばれた騎士さんを私は指差しながら周りを飛び回る精霊さんに許可を出す。
私をひたすらに睨んできてるし、視線が鬱陶しい事この上ない。あのヤークウッドとかいう騎士以外は特に睨んできたりしていないから余計にうざいです。
『まじでー?』
『ぶっころー』
『うでがなるぅ』
『あのよへのたびだちしえん』
「あ、殺しちゃダメですよ? エルフ印のポーションで治る範囲でボコにしてください。あと外でやってね?」
「中庭が空いてるよー」
精霊さんがヤークウッドをボコにするのは止められないと考えたらしいヴィが中庭の方を指差す。まあ、こんな所で暴れられたら堪らないだろうしね。
「ふん、俺が応じる必要はないな」
「あ?」
あれだけ人を睨んでややこしくした奴が何言ってるんだろう?
なんだろうね、ムカムカする。
そんな苛立ちのせいか私の体から魔力が垂れ流しになったみたいで謁見の間にある壁や調度品に大きな音を立ててヒビが入ったりし始めていた。
『へいへい、きしさまびびってるぅ』
『きしだし、ちいさいのにまけたらかっこわるいもんねー』
『ぷふー』
『まけいぬまけいぬ』
お、おぅ、君達すごく口が悪いね。
『いるぜばかにしたしー』
『ぼくらもばかにしたしー』
『あのいけめんのかおきにいらないしー』
『ぶさいくになるまでなぐるし』
めっちゃ怒ってた。
精霊さんから凄く黒い魔力が見えるよ。
「ヤークウッド、お前がいると話が進まない。それにお前が悪いのは明らかだから相手をしてこい。精霊達も手加減してあげてくれない?」
ヴィが面倒くさそうにヤークウッドへと命令を出すと、今度は精霊さん達へとお願いをしてた。
『やだ』
『ことわる』
『うでにさんぼんはおる』
『うではにほんだよ?』
『じゃあ、おってなおしてからおる』
『『『てんさい!』』』
速攻で断られてた。
「陛下、俺がこんな精霊に負けるとでも⁉︎」
「あー、うっさいうっさい」
大声を出してヴィにヤークウッドが詰め寄っているけどヴィは耳を押さえて聞こえないフリをしてるし。
確かに話が進まないなぁ。
面倒なのはさっさと終わらせたいし。
「黒騎士、あれ、中庭に放り出して」
『ギョイニ』
腰の黒騎士の剣に魔力を流しながら頼むと剣から黒騎士の巨大な氷の腕が突然生えると凄まじいスピードでヤークウッドへと迫り、ヤークウッドが反応する前に身体を掴み身動きを封じた。
「な、なんだ⁉︎」
『アルジヘノブレイハユルサナイ』
困惑したままのヤークウッドを掴んだ腕はそのまま横に凪ぐように動き続けると壁へと激突。壁に巨大な穴を開けるとそこから、激突の衝撃で呻き声を上げるヤークウッドをゴミを捨てるようにして放り投げると黒騎士の腕は姿を消した。
『よし、やるぞー』
『ぜったいようしゃしない』
『なかせてやるんだから』
黒騎士が壁に開けた穴へと精霊さんが我先にと殺到してる。
余程、ヤークウッドがお気に召さなかったらしい。
こうなったら彼が死なない事を願うしかない。
死んだら運がなかったって事で。
フィズは関心がないからついていかなかったし。それだけでも運が良かったのかな?
「で、ヴィ。話って何ですか」
ようやく話ができるような状況になったので私はヴィに話かけることにしたのだった。




