エルフ、疲れる
「よし、狙い通り!」
土煙が上がる謁見の間を見た私は予想通りの結果に思わず拳を握った。
精霊樹剣ソラカロンの大体の能力はこれでわかった。
それに黒騎士を部分的に纏った場合の戦闘能力も。
『いるぜー』
『やりすぎなんじゃないの?』
「何言ってるんです?」
そもそもの話が精霊さん達が使って使ってと言ってきたわけですし、責任転嫁はよくないですよ?
それにしてもこの精霊樹剣、かなり危ない代物ですよ。
多分ですけどこの剣、ある一定量の魔力を流すことで空間を斬ってるような感じですし。
空間を斬ることによって線のようなものが宙に現れる。そしておそらく空間が元に戻ろうとする時に発生する力が前にいる対象に虹色の魔力として放たれているような感じです。
普通に魔力を流すだけなら丈夫な刃ができる剣といった感じなんだろうな。
そんなよくわからない精霊樹剣から放たれた虹色の魔力を食らったであろうテレサさんはどうなったのか? 謁見の間はボロボロのようだけど血の匂いがしないからヴィが何かしたのかもしれない。
「ん?」
土煙が僅かに動いたのを私の眼が捉えるとほぼ同時にまだ解除していなかった黒騎士の腕が動き、甲高い音が鳴り響いた。
「やってくれたわね!」
「驚いた、生きてた」
全身血塗れのテレサさんが振るってきたであろう鎌を黒騎士の腕が止めてた。
いや、本当によく生きてますよね? あんなの私が食らったら死にます。即死です。
ザッと見たところ血が流れるような軽傷だけで死ぬような傷は負っていない様子。というかよく避けれましたね?
「身代わりの護符がなければ死んでたわ! エルフは近接戦闘できないと思ってたけどそうでもないようね!」
「どうですかね?」
身代わりの護符、そんなのがあるんだ。
テレサさんの言葉に咄嗟に頭に浮かぶのは村にいたエルフ達だけど、あいつらは武器なら普通になんでも使いこなしてた気がする。
それに戦ってるとこは見たことないけどアンとトロワも結構強いんじゃないかなぁ?
足音しないし、たまに精霊さん捕まえてるし。
「ところでヴィは無事なんですか?」
「陛下の心配とは余裕ね!」
いや、普通は部下の方が心配するものじゃないのかなぁ?
帝国では心配しないのが普通なの?
ヴィがいたであろう場所へと視線を巡らせると薄く銀色に光る壁が私とテレサさんを囲むように展開されてた。私達を囲んでいた騎士の皆さんは大半が意識を失ってるようだ。
ついでに言うと部屋の中は原型がわかりにくいくらいに壊れている。
ヴィはというと顔を引きつらせてる。そんなヴィの横にはいつの間に紅いローブを着込んだ人物が立っていた。
多分、あの人がこの壁を作ったんだろうな。
「この壁のお陰で無事みたいだね」
『これすごい』
『ぼくらでもこわせないかも』
精霊さん達が壁を叩きながら驚いてた。
それは確かに凄い。精霊さんでも壊せないとなるとかなりの強度だ。
「テレサさん」
「何よ」
テレサさんへと呼びかけると黒騎士が腕を振り払うようにしてテレサさんを吹き飛ばす。が、テレサさんは宙で体を回転させて危なげなく床へと着地する。
それを確認してから私は言葉を続ける。
「この辺でやめません? 私、疲れましたし」
動かしてるのは黒騎士なんだけどね? 体痛いし。




