精霊、勝手に開戦する
『ぼくたちの』
『かちー』
「ぐぬぬぬぬ」
「きゅー」
『ぬけがけだー!』
空飛ぶ絨毯に陣取る精霊さん達がハイタッチをして喜びを露わにする中、私とフィズ、そして残りの精霊さん達は悔しそうな表情を浮かべていました。
「最後に目的地を決めるなんてズルじゃん!」
もう少しで追いつくというところまでいったんですけど、最後の最後で精霊さんが『あのいちばんおおきなたてものにさきにたっちしたひとのかちねー』とか言い出したし。
『だってー』
『ここがいちばんわかりやすかったしー』
『ていこくのどことはきめてなかったよ?』
「いや、確かにそうでしたけど……」
結果としてこの大きな建物に向かって全員が猛スピードで突っ込んでいく形になりましたしね。
お陰でこの建物、何か分からないけど天井、吹き飛んでるし。
「ところでここどこ?」
『あはははは』
『なにいってるのいるぜ』
私が周りを見渡しながら、と言っても天井と壁が軒並み吹き飛んでなくなってるので左右を見渡しても街並が見えるだけなんだけど、あの言い方なら精霊さんは場所を知ってるみたい?
『『『ぼくたちがしるわけないじゃん』』』
「だよねー」
うん、知ってた。
精霊さん達が知らないだろうなぁってことくらい知ってたよ。
もしかしたら知ってるかもと思ったけどそんなことないよね!
『でもなんかしたさわがしいよね』
『がしゃがしゃいってる』
『あがってきてるよー』
「下?」
精霊さん達に言われて意識してみたら下へと続く階段から確かに物音が聞こえてきてる。具体的に言うとなんか上がってきてる。
ついでに言うならなんか喚いてる?
「王城の一角を潰した賊を必ず捕らえろ!」
「生け捕りが基本だが腕くらいなくても構わん!」
「陛下の前に必ず引きずり出せ!」
「「「おおぉぉ!」」」
なんか殺気立ってるし物騒なこと言ってるぅ⁉︎
というかここ王城だったのか……
つまり遊びにきた家に突撃してきたことになるわけだよね?
『こうげきしてくるきだー』
『うけてたつし』
一部の精霊さん達はなんか拳を作ったり武器を取り出したりしてるんだけど、やたらと好戦的過ぎない?
「とりあえずは戦う意志がないという事を……」
階段へと近づいていき、下を覗き込む。
そして頬の横を何かが通り過ぎて、少ししてから頬が熱を持った事に気付く。
覗き込むのをやめて頬へと手を当てると血がべったりと付いているし、後ろを振り返るとフィズが口に弓矢を咥えて、というか食べてた。
「警告とか一切なしにいきなり攻撃してきたよ⁉︎」
『いるぜのちがながれたぁ』
『かいせんだぁ!』
『つづけぇ!』
『かたきうちだぁ』
「死んでないよ⁉︎」
私の声など無視するように精霊さん達が武器を手に階段へ向かい殺到していった。
私からは見えないけど、エルフの耳は下から聞こえてくる騒がしい音を拾っている。その音が徐々に小さくなり、呻き声だけが聞こえるようになってようやく、私はエルフ印ポーションを頬に掛け、傷を癒してからフィズを抱き抱えて他の精霊さんと一緒に階段を降りようとしたけど、アンとトロワを放ってはいけないから降りるのを止め、周りの風を操り始めたのだった。




