高位精霊、お茶する
『今日は静かね』
「そうですね」
「そうだねー」
珍しく静かな精霊樹の城、そのわたし、イーリンスの私室である場所でわたしと帝国からやってきたエルフの二人のアンとトロワはお茶を飲んでくつろいでいた。
ソラウ様が居なくなってから精霊達はタガが外れたかのように暴れていたから静かなのは珍しい。
わたしも帝国から書類などがないからまったりしているし、精霊達が暴れることがないからアンとトロワが動き回る必要もない。
珍しく平和なわけよね。
『アンとトロワはここでの生活に慣れたかしら?』
「ええ、問題ありません。それどころか帝国にいる時よりも調子がいいです」
「精霊樹が側にあるから快適だよー」
この二人は精霊樹を世界樹と勘違いしてたのよね。
精霊樹は世界樹とは比べ物にならないくらいに魔力を放っているから魔力と馴染みのある種族ならば調子が良くなったりするしね。
精霊樹は守護者に莫大な魔力を与える。
イルゼの奴は気付いてないでしょうけど精霊樹はイルゼの事を守護者として見ているみたいだし、イルゼと契約しているからかソラウ様やフィズ、わたしなんかも多少の加護みたいものがあるのよね。
本人に自覚が無いだけでイルゼの魔力は恐ろしいくらいに膨れあがってるし。
魔力の総量だけでみるならば恐らくは大精霊クラス。高位精霊であるわたしでは手も足も出ないくらいの魔力量なのに当の本人は全くと言っていいほどにその事に気付いてないし。もしも大魔法なんて使いでもしたら世界が半壊してもおかしく無い。大精霊クラスの魔力量というのはそれくらいにヤバイんだから。
『幸いなのは彼女が穏やかな性格であるということよね』
過去の精霊樹の守護者と見られている人物の大半がイルゼと同様に穏やかな性格をしていたと言うし。
「確かにイルゼ様は穏やかではあります。ですがイルゼ様の場合は怒る場所が普通の方々と少し違うのでは?」
「私達なら怒らないところで怒りそうだしね〜」
『まあ、それは確かに』
お菓子を幸せそうに食べながら自分の意見を言うアンとトロワの言葉に私も同意する。
イルゼの怒りのポイントがよくわからないからにはあまり油断もできない。そういう意味ではソラウ様はイルゼを本当の意味で怒らせることなく付き合っていたんでしょうね。
一度怒らせたらしいけどソラウ様も当時の事は顔を青くするだけで詳しく話してくれないし。
『まあ、精霊達の動向をしばらくは見張るしかないわね。イルゼを怒らせるとしたら確実にあの子達よ』
「警戒はしていますが……」
「手が回らないよ?」
『そうなのよね』
精霊達の暴れ具合は最近は特に目に余る。
ソラウ様というストッパーがいなくなったからよね。トラブルメーカーではあったけどソラウ様には精霊達も従ってたし。
『何も起こらなければいいんだけど……』
ログハウスとセットで喚び出されるというイレギュラーな召喚だったとはいえ、今ではそれなりにイルゼにもこの城にも愛着はあるわけだし、あとは平和に過ごしたいものだわ。
『いーりんす!』
『たいへーん!』
わたしが静かに過ごしたいと願った次の瞬間、精霊達が慌てた様子で扉をぶち壊して部屋の中に入ってきた。
壊した木の扉の破片が宙を舞い、わたしの手にしているティーカップの中にも入り込んだし。
あとで扉の修理をさせてやる。
『なにがあったの?』
『いるぜおこった』
『げきおこ』
『しろのなかかぜがすごいことになってる!』
よくわからないけどもう平穏じゃなくなったみたいね。




